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112 出発はいつものメンバー

― 112 出発はいつものメンバー ―


グルニエール王国へ遠征すると決まれば、出来るだけ早く出発する方が有利だ。

僕らは急いで準備を始めた。


マリアお母様は、さっそく聖教国の教皇に謁見するために連絡を入れている。

おそらく、今日中に転移魔法でお迎えが来るだろう。


問題は魔族たちだ。

行くなら魔族たちも軍勢として来てほしいけど、2千以上の魔族が大移動したら途中の街でパニックが起きることは想像に難くない。

さてさてどうしよう。


うん、一旦置いていこう。

向こうで召還すればいいや。


いろいろ考えながらも、ぱっぱと旅の準備をしていると、ヘルリユ皇女がひょっこりやってきた。

彼女は、教会の住居部分に遠慮なく入ってきて、僕の部屋もノック無しでドアを開ける。


ガチャ

「長道、いるか?魔王会議の結果が知りたいのだが・・・。おい!荷物をまとめて何をしているんだ!グロガゾウを出て行くつもりか!」

「あ、ヘルリユ。しばらくグルニエール王国に行こうと思ってさ。」


「しばらく行くって事は、グロガゾウに帰ってくるのか?」

「もちろん帰ってくる予定だよ。僕の縄張りはココにあるんだから。」

「縄張り?まあ、帰ってくるなら良いのだが急にどうしてなんだ?」

「魔王会議で、北の4人の魔王の内3人が討たれたことが分かったんだ。」


ヘルリユは意外にも、驚くことなく静かにうなずいた。

「なるほど、先週からグルニエール王国からフレンツ公国に逃げる領民や商人が増えていると昨日報告があったが、それが原因かもしれないな。」

「タイミング的に見てそうかもね。で、僕らは北の魔王の『淫女王』『大空王』『疾風王』を倒した連中と戦うために、生き残っている『水竜王』に合流しようと思っているんだ。」


そこでヘルリユはいつもの混乱した表情になった。

「え?魔王の『水竜王』を倒しに行くのではなくてか?」

「うん、『水竜王』の援軍に行くんだよ。」

「・・・理由を聞いても良いか?」

「ヘルリユ、君も皇女なんだから今の言葉で察しなよ。」

「え?皇女なら察しないとダメな内容なのか?」

「そうだよ。食楽王マリーさんですら一発で察したんだよ。」

「う、それは・・・本当か?」


で、軽く説明してあげた。

魔王を軽々倒す戦力がグルニエール王国にある意味を。

グルニエール王国の王族は、マリユカ教のなかでも過激派である真理由華原理主義の一派と一体化している。

その真理由華原理主義は、人族しか認めておらず、追々必ずエルフや獣人が自由に生活するデスシール騎馬帝国を狙って来る事。

せめて召喚された異世界人勇者だけでもどうにかしないと、マリユカ教の総本山であるマリア聖教国も危険な可能性がある。

だからマリア聖教国の戦力も利用して、今のうちに手を打つのが一番被害が少ないことなど。


説明が終わると、

ヘルリユはいま両手を床に手をついてorzな姿勢になっている。

「た、たしかに皇女であるなら一発で気づかなくてはいけない内容だ。最近は長道に甘えすぎて自分で考えることが少なくなっていたせいかもしれない。反省しなくては・・・。」


ヘルリユは真面目だからマジ凹みしちゃったか。

ま、たまにはいい薬だよ。いつも僕に決断させる悪い癖がこれで治ればいいんだけど。


などと雑談している間に出発の準備が整った。

正確には僕の人工精霊・高麗こまが手早く済ませてくれたんだけど。


さて出かけるか・・・

と思ったけど、まだヘルリユはorz中。

自分の部屋に女の子を残して出発するとか、ちょっと微妙だから外までは連れて行くか。

「ヘルリユ、立ち上がって。まずは外に出ようよ。ヘルリユだってやる事あるでしょ?。」

「え?私に何ができるんだ?」


おいおい、さっき僕に頼り過ぎ事を反省したんじゃないのかい。

ジト目で見ていたら、ヘルリユも自分の言葉に気づいたようでハッとした表情になる。


「す、すまん、そうだな私がやるべき事か。。。皇帝陛下にこの事態を急ぎ報告しなければダナ。」

「そうそう、まずは自分の職務を果たさないとね。」


よし、これで出発できる。

立ち上がったヘルリユの手を引いて外に出た。


歩きながらヘルリユは不安そうに僕を見る。

「長道、魔王3人を一日で倒すような連中に勝てるのか?かなりの強敵なんじゃないのか?」

「かもね。でもまあ、やるしかなさそうだから頑張るさ。」

「無理はするなよ。」

「もちろんさ。死ぬのが一番嫌だから、死なない程度に頑張るよ。」


不安そうなヘルリユに、気軽な微笑みを返しておいた。

言葉には出さないけど、この戦いは結果的にヘルリユを守る事にもなる。

ヘルリユは僕の親友だ。

だから、ここで街を守っていてほしい。僕が連中がここに来れないようにするから。


そんな気持ちが伝わっているのか分からないが、ヘルリユも力なく微笑んできた。

「今までも、長道のお陰で私は生き残っているようなものだ。いつも無理をさせてしまってすまないな。」

「気にするなよマイフレンド。」

「そうか。ありがとうマイフレンド。この戦いから無事に帰ってきたら精一杯のお礼をしよう。楽しみに帰って来いよ。」

「あはは、それは楽しみだね。帰ってきたらよろしくね。」


そして握手をして別れた。

別れ際に手を振るヘルリユを見ながら、ふと予感が走った。

これがヘルリユとの最後の時間になるのではと。


不安そうに微笑みながら手を振るヘルリユは、今までで一番可愛く見えた。


そして僕は冒険者ギルドに向かう。

そこで待ち合わせをしたから。

ダークエルフのヒーリアさんとタケシ君。

それにダグラス団の4人がすでに待っていた。


僕を見つけるなり、ダグラスさんが凄い形相で詰め寄ってくる。


「長道坊っちゃん!『グルニエール王国の魔王の所にいくから1時間で準備してギルド集合』って、ちょっと無茶過ぎるだろう。」

「でも一時間で準備出来たんでしょ。」

「そりゃあ冒険者だからそれくらいは出来るけどよ・・・明日から依頼が入ってるんだぞ。」

「そっか、じゃあギルドマスターのユカエルさんに権限を発動してもらって、ペナルティーが無いようにしてもらおう。それでいいでしょ。」

「そんな無茶苦茶な。。。」


空を見上げるダグラスさんを無視して、ギルドカウンターの中に居るユカエルさんを見る。


「ユカエルさん、お願いできます?」

「もちろんさ。長道坊っちゃんの頼みなら、どんな不正でもやってみせるよ。」

さすがユカエルさん、なまじ優秀だから不正も楽々こなすね。


「よし、じゃあ出発だ。敵はグルニエール王国!ぶっつぶすよ!」


「「「「そんな恐ろしい仕事だなんて聞いてねーぞ!」」」」

ダグラス団の4人のシンクロツッコミは、すでにベテランお笑い芸人の域だな。


その弱音に対してユカエルさんがカウンターから飛び出してきて、ダグラス団を瞬時に殴る。

「長道坊っちゃんが、やれと言ったらやれば良いんだよ。国の一つや二つ、長道坊っちゃんの為に滅ぼしておいで!あたしは行きたいのに行けないってのに、贅沢を言うんじゃないよ。ほんとついて行けるアンタ達が羨ましいよ。」


ユカエルさんの僕に対する謎の信頼が怖い。

そして、ついて来たがる謎の忠誠心がヤバイ。


「まあ、ユカエルさんにはプランB(グルニエール王国がデスシール騎馬帝国に進軍してきた場合)に備えてここに残ってもらうんだから仲間はずれなわけじゃないからね。むしろ僕の帰る場所を守ってもらうために残ってもらうんだから。信頼の証だからね。」


「長道簿っちゃーん。信頼の証とか嬉しいじゃないかい。」

めっちゃ嬉しそうに抱き着かれた。

いつもなら押し返すけど。。。今日何故かそのまま受け入れた。

ここでも予感がした。もうユカエルさんには会えない予感が。


しばらく無抵抗に抱き着かれていたら、さすがにヒーリアさんが助けてくれた。

「長道坊っちゃん、そろそろ出発しないと。」

「そうだね。じゃあユカエルさん、あとはよろしくね。」

「おう、任せておくれ。」


手を振りギルドを後にする。

たまたまその場にいた冒険者たちも、僕の肩を叩いて見送ってくれた。

気づかないうちに、ここは僕にとって暖かい場所になっていたのかもしれない。

冒険者のみんなにも手を振って出発した。


彼らの気さくな笑顔が妙に心に残った。


ヒーリアさんとタケシ君、さらにダグラス団と街の門に向かって歩く。

慣れ親しんだ街の風景。

それを心に焼き付ける。


僕はどうしてしまったんだろう。

もう、ここに帰ってこれない予感がしてる。


嫌な予感だ。


門を出ると、残りの旅のメンバーが揃っていた。


妹の里美。

康子。

デルリカ。

従者のビレーヌ。

蜘貴王のサビアンさん。

食楽王のマリーさん。


そして見送りのマリアお母様。


合流すると、マリアお母様がそっと僕に近づいてきた。

「長道、私は必ず聖教国の戦力を使いグルニエール王国の真理由華原理主義を討伐し、あなた達の援軍として駆け付けます。ですので無理をしてはいけませんよ。」

「はい、全員が生き残れるようにしますので大丈夫です。」


マリアお母様が優しく僕を抱きしめた。

「敵を倒すよりも生き残ることが優先です。いいですね。」

「はい、そのつもりです。マリアお母様にもっと孝行しなくちゃいけませんし。」


そのあと、マリアお母様は妹達も1人ずつ抱きしめて声をかける。

マリアお母様もなにか予感があるのかもしれない。

いつもよりも抱きしめ方が強かった。

でも、どんな悪い予感でもこのメンバーなら覆せるはずだ。


4人の勇者に5人の魔王。

それとその他4人。


このメンバーならきっと未来を掴みとれる。

そう信じられる仲間たちだ。


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