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102 幽玄王を倒しちゃおう1

― 102 幽玄王を倒しちゃおう1 ―


しばらく進むと、いったん行進を止めて僕はみんなを集めた。


「じゃあ、この後は手分けするよ。まずヒーリアさんとタケシ君は先行して20万の魔物の足を止めてもらう。康子と里美はココで待機。魔物を連れた僕と一緒に、デルリカとビーレヌで行こう。淑女子(デルリカの影武者)と旋風剣(ビレーヌの影武者)も呼び出してもらえるかな。魔王を迎え撃ってほしいから。」


僕のこの指示に従い、みんなそれぞれの持ち場に向かう。

すでに皆には作戦の詳細は伝えてある。あとは敵の魔王が上手く乗ってくれるかどうかだ。


まず、この場に1000体ほど魔物を残し、康子と里美に預ける。


残りの1000体を率いて、僕とデルリカとビレーヌで前進した。


さて、敵がこちらの誘いに乗ってくれるといいのだけど。

僕たちは前進することで例の場所につく。


そう、「幽玄王の縄張り」となっていた場所だ。

僕は気づかないふりをして、魔物を連れてその土地に入る。


1000体という魔物は大軍だ。

全ての魔物が「幽玄王の縄張り」に入りきるまで数分かかった。


そして丁度すべて入りきったあたりで…


「ぐりゃあああああ」


僕のすぐ後ろに居た魔物が雄たけびをあげて僕の襲い掛かってくる。

同時に魔物たちは一斉に足を止めた。


「お兄ちゃん!」「長道様!」


デルリカとビレーヌは同時に魔法を放ち、僕に襲い掛かった魔物を吹き飛ばす。

ブシャアアアア


ひ、挽肉になった。たったの一撃だったのに。

この二人怖えええ。


浮遊バイクを止めて今まで引き連れてきた魔物の方を向いた。

その僕たちを囲むように魔物たちは動く。


この動きを見て僕は確信できたよ。

幽玄王はこの近くに居る。

魔物の動きが的確すぎるもの。


デルリカは愛用のスコップを取り出し構える。

ビレーヌは僕があげたライフルを取り出す。


2人は僕を守るように移動してきた。


自分達が連れてきた魔物に完全に囲まれてしまったので何とも心細い陣形だが。


「まあ、こうなるよね。」


僕は自嘲気味に笑うと<純化魔法>でこの「幽玄王の縄張り」と繋がっている存在を探す。

これだけジャストタイミングで攻撃に出てくるんだから、相当近くに居るはずだと思うのだけど…

エネルギーの流れを感じて、そのつながりを探す。


上か。

見上げると、50メートルほど上空に少し違和感のある揺らぎが見える。

光学迷彩だな。


そこを指さす。

「ビレーヌ、あの揺らぎを撃って。」

「はい、長道様!」


ボヒュン


一瞬で僕が指さした場所を撃ち抜く。

「ぐあああ、わしの場所を見ぬくとは生意気な人間め!」


揺らいでいた場所から、3メートルほどの老人が現れた。

禿げて縦長な頭に、白くて長いひげ。仙人のような姿だが、顔色は悪くゾンビのようだ。


あれが幽玄王だな。

「お前が幽玄王だな。臭いからすぐにわかったよ。」


「おのれ人間の小僧め!」


ボシュン

 ボシュン


ビレーヌはさらにライフルを撃つ。

しかし、こんどはライフルの弾は幽玄王の前で停止した。


<純化魔法>のある僕にはよくわかる。

幽玄王が、濃厚な魔力を体の周りに展開しているのを。

防御力があるが魔法じゃない。ただ魔力を纏っただけでバリアのように使っているのだ。

そうとうな魔力持ちなのは間違いないだろう。


なるほど、魔王と呼ばれるだけある。


幽玄王はよほど自信があるのだろう。

ゆっくり地に降りてくる。


ふっ、僕らが人間の使う武器や魔法しか見せていないから油断したな。

幽玄王が地に降りると同時に僕は声を張り上げた。


「今だ!一斉に掛かれ!」


同時に魔物たちが使っていた<幻覚>の魔法が切れる。

それにより、僕のアンデットの軍団が姿を現した。


大量のアンデットが幽玄をに群がる。


「バカな!ここはワシの縄張りだぞ!なぜ魔物が我に逆らう!」


1000体の魔物の内800体は僕の魔族たちだ。

そして100体はデルリカの魔族。

残り100体が本当に普通の魔物たちだ。


なんで普通の魔物を入れたかというと、全部魔族にしてしまうと、敵魔王がどんな命令を出してくるか判断出来ないないから。敵魔王を騙すためにもほんとうに敵魔王に支配される存在が欲しかったからだね。


僕の配下の魔族たちには、普通の魔物の動きに合わせて動くように言っておいた。

そのおかげで、幽玄王を騙すことに成功したようだ。


幽玄王を囲むように僕の魔族たちが包囲を作る。

形勢逆転だな。


「油断したな幽玄王。僕の名は黒竜王。ここのアンデット達は全部僕の魔族だ。この『幽玄王の縄張り』は意味を持たないぞ!」


アンデットに囲まれて幽玄王はかなり動揺しているのだろう。

肩を揺らしている。

ビビったか?

泣き言でも言って来るか?


だが、予想は外れた。


「くくく、なんと素晴らしいのだ。本当にみな魔族ではないか。これは素晴らしい。くくくく。」


幽玄王は笑っていた。

デルリカが不審そうに僕に近づてくる。

「お兄ちゃん、なにか様子がおかしいですわね。警戒してくださいませ。」


僕の方が圧倒的に有利なはずなのに、なんでこいつは笑っているんだ。

「何がおかしいんだ幽玄王。お前を囲むのは全て僕の魔族だ。これで終わりだよ。」


しかし幽玄を嬉しそうに両手を上げる。


「バカはお前だ黒竜王。ワシは死に特化した魔王ぞ。アンデットであれば魔族であっても我が支配下におけるのだ!ワシが土竜王のダンジョンに貸し与えたアンデットを魔族化してくれて礼を言うぞ!」


なんだって!

ビレーヌが厳しい表情で僕の前に立つ。

「長道様、わたくしがお守りいたします。危険そうでしたらお一人ででもお逃げください。」


幽玄王は、自分を囲む僕の魔族たちに向けて叫んだ。

「我が称号、冥府男爵の名において命じる。不浄なる死の化身達よ。我が配下となりて我が敵を討て!」


その言葉に、僕の魔族たちは動きを止めた。

うわ、まじか。


もしかして、僕の軍団って幽玄王と相性最悪な相手?


すると、巨大な骸骨がユラリと揺れるように動いた。

5メートルはありそうな骸骨は死霊大神官。


僕の配下でもトップ3に入る強さを持つ魔族だ。

うそだろ、短い間だったけど仲良くなったと思ってたのに。


デルリカとビレーヌが腰を少し沈めて、戦闘態勢で構えた。

僕はわてて二人を止める。

「まって、あいつとは友達なんだ。」


あの、無駄に知的で優しさのあるイケメンボイスを思い出す。

死霊大神官はさらに一歩僕に向かって歩を進める。


僕の魔族が奪われたのか?

いや、そもそもダンジョンでの出来事を考えれば、僕が幽玄王から奪ったのだけれど。

それでも僕は奪われたという気持ちになる。


くそ、僕たちの友情はそんな薄っぺらいのか!


「お兄ちゃん、あの骨はワタクシが粉々にいたしますので下がってください。」

そう言って前に出ようとするデルリカの肩を強く近む。


「だめだ!あいつは骨のくせに少しスケベだけど、骨とは思えないくらい表情豊かで、イケメンボイスで、無駄に僕の事を称えるけど、肘で僕を突ついてくるような愛嬌のあるやつなんだ。」


僕はデルリカとビレーヌを無理やり下がらせる。


「死霊大神官、僕は君にフレディーと名付けたのを覚えているかい?君は自分の意思を持たない魔物から、物を考えられる魔族になったんだろ。僕がわかるよね!」


叫んでいる間に、死霊大神官はすぐ目の前まで来た。

デルリカとビレーヌはブレスを撃つ直前だ。


青臭いかもしれないけど、僕は死霊大神官なら友情を忘れないでいてくれる。そんなような気がしているんだ。

死霊大神官フレディ。

僕が手に入れた初めての魔族。


そこで死霊大神官は僕の目の前に膝をついて、手を胸に当てて頭を下げた。


「我が神よ、我に対する厚い信頼に感動で胸がいっぱいにございます。我は我が神以外への忠誠心など持ち合わせておりません。」


おおお、死霊大神官!君なら奇跡を起こすと信じていたよ!

友情の奇跡がおきた!


同時にアンデット達が全て僕に膝をついた。

お、みんなも僕の配下のままか!

み、みんな…

あかん、感動で目から汗がでそうだ。


幽玄王は目を見開いた。

「バカな!なぜ冥府男爵であるワシに逆らえるのだ!ありえん、ありえんぞ!」


ん?冥府男爵…?冥府の貴族だから平民のアンデットは従えることができるのだろうか?

そこまで考えて自分の職業を思い出した。

ネクロマンサーだったけど、なぜかクラスアップして名前が変わっていたっけ。


冥府王に。


・・・、あ、これ奇跡とかじゃないや。

向こうは冥府男爵で、僕は冥府王。


つまり、僕の方が地位が高いから奴の支配をレジストできただけか。

く、友情かと思ってちょっと感動したのに!

なんだよ、奇跡でも友情でも何でもないじゃん!


僕の感動を返せ!

もう八つ当たりだ。


「みんな、幽玄王を押さえつけて!ボロクソにしてやるぞ!」


スケルトン達が一斉に幽玄王にしがみつく。

幽玄王は群がるスケルトンを殴り砕きながら、怒りの表情をこちらに向けた。


「バカな!かくなる上は貴様を直に殺してくれる!生ある者には防御不能なワシの一撃を食らうがいい!」


いうなり僕に向けて凄い速度で黒い煙のようなものが飛んできた。


ブレスか!

直観的にそう思う。

防御しようとしたとき、僕の前にぐちゃりと肉塊が落ちてきた。

ぐちょげろの死体の塊。


七人岬!


七人岬は僕の盾になって幽玄王のブレスの直撃を受けた。


ブレスが着弾した轟音と共に僕の目の前の七人岬の声届く。


「我が神…私たちが…約立てて…よかった。」


毛が逆立つほど、言葉に出来ない感情が突き抜ける。


「七人岬ぃぃぃぃぃぃ!」


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