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100 分岐点 里美2

蜘貴王サビアンのところで呑気に過ごす長道。

魔王と魔族の秘密で、うはうはになる。

― 100 分岐点 里美2 ―


もう寝ようかという頃になってサビアンさんが戻ってきた。

その後ろには、メイド風魔族、文官風魔族、軍人風魔族が沢山ついてきている。

あれ?

僕の目が乱視になったのでなければ凄い数がいるぞ。


「サビアンさん、さっき100体ほど魔族化させるっていいましたよね。。。」


サビアンさんは、目をそらしながら少し動揺している。

「そ、そうですわね。うっかり数を数え忘れてしまいまたので、予定よりも少し多くなったかもしれませんわ。」


<鑑定探査>で魔族の数を数えた。

400体。


「数えていなかった割には、数字がぴったり過ぎる気がしますよ。400体?いえ、悪いと言っているんでは無いんですよ。ただ魔族を沢山持つ弊害が無いか心配してるだけで。」


めずらしく、ちょっと拗ねたような表情で僕を見つめ返してくる。

「はじめは100体でやめようと思ったのです。ですがすでにわたくしの魔族として仕えてくれている、ボリーヌとダレージュ、それにタリューシャとサチューシャに100体づつ配下を与えようと考え直したのです。」


25体づつでも良いのではないだろうか?

ま、これは文句を言う話ではないんだけど。


「ところで、その魔族たちは元の魔物姿にもなれるんですか?」


「元からいる4人は、全力を出そうとすると魔物姿になりましたので、この魔族たちも出来るとは思いますが。…それは大事なことでして?」


「はい、とっても大事な事です。試しに新しく作った魔族達も魔物姿になれるか試してもらっていいですか?」


「わかりましたわ。確かにいろいろ試した方がよろしいですわね。」


サビアンさんが400人の魔族に指示を出すと、全員が魔物の姿に変化した。

なるほど、ちゃんと変化できるんだな。


「じゃあ、魔法を与えたいと思いますので、魔族たちに抵抗しないように命じてもらえますか。なんとなくこれで勝てる自信が出ましたので。」


「まあ、それは素晴らしいですわ。では、よろしくお願いいたします。」


僕は人工精霊の高麗こまを呼び出す。

「高麗、この魔族たちに<ステータス偽造>の魔法と<スマホ念話>を与えて。ついでに適当に簡単な攻撃魔法や支援魔法魔法も与えてあげて。」


半透明なメイドの高麗が現れる。

切れ長な目をした、黒髪メイド。

『魔法のインストールにつきましては承りました。<ステータス偽造>に関しましては、どのような偽造をいたしますか?』


「魔物と人間に偽造できるようにしておいて。長い目で見てこの二つに偽造できればきっと役に立つから。」


『承知いたしました。では作業にかからせていただきます。』


一礼すると高麗は魔族に向かって飛び去る。

きっと1時間もしないで作業を完了してくれるだろう。


カマキリメイドのボリーヌとダレージュ、それにサソリ軍人のタリューシャとサチューシャがやってきた。


魔族の軍団を見て、最初にボリーヌがサビアンさんに走り寄る。

「サビアン様!魔族がいっぱいです。これはいったいどうしたんですか?私達が調査に出ている間に何が?」


「丁度いいところに帰ってきましたね。じつは長道さんのご協力で魔族を400人ほど増やせましたの。古参であるあなた達4人にはそれぞれ100人の部下を与えます。気に入ったのがいれば部下にしてかまいませんよ。」


「わ、私に部下100人!凄い!凄いですよサビアン様!」


そこから先は騒がしかった。

4人は我先にと部下を選び出したのだから。


なんか騒がしいけど、僕は先に寝ることにした。

「里美、僕らは先に寝ようか。」

「はーいお兄ちゃん。」


里美と僕はテントに入る。

小さく変化した天狼のフェンリルも一緒だ。


テントに犬が一緒に入ってきて寝るのって、なんか新鮮。

しかし、悪くない。


もしかして僕は犬が好きかも。

よーし、こんど犬型の魔物を捕まえて魔族化させよっと。


そう思いながら、瞼を閉じた。








なんか、妙な臭さで目が覚める。

半分寝ぼけながら目を開くと、目の前にお尻の穴が見えた。

臭い!


一気に目が覚めて体を起こすと、里美に頭を乗せて眠るフェンリル。

そのお尻だった。

このやろう、里美に甘えるのは良いけどなんで僕の顔の前にお尻を向けるんだよ。


ムカついたのでお尻の穴に指突っ込んだろうかと思ったけど、僕の指にもバイキン的なダメージがありそうなのでやめておいた。


ちょっとだけ犬を好きだと思ったけど、あれは気のせいだな。

スケルトン達の方がよっぽど愛嬌があって良いやつらだ。お尻も臭くないし。


とはいえ、結果的に良い目覚ましではあった。

折角起きたので、もうテントから出て様子でも見るか。

外に出る。


周りがほんのり騒がしい。

400人の魔族が思い思いにくつろいでいた。

騒いでいるわけではないのでウルサイわけではない。

でも400人もいれば生活音はそれなりにする。


人間の街で暮らしている僕にとっては、森の静かさよりも馴染める状況だった。


テントから出た僕を見つけて、カマキリメイドのダレージュがおかっぱ頭を揺らして走り寄って来る。

中学生くらいの小柄なロリメイドにしか見えないが、今では100人の魔族を部下に持つ100人隊長だ。

「長道殿、起きたのか?朝ごはんあるよ。あっちだよ。」


近寄るなり、僕によじ登ろうとしながらダレージュが朝食の方を指さしてくれた。

振り落とすのも面倒なので、よじ登られるのを放置しつつそのまま食卓に向かう。


頭が重い。

ダレージュ、とうとう僕の頂点まで上り詰めたな。

ご褒美に地面とキスするチャンスをあげよう。


ふん!

一気にお辞儀するように頭を振り下げて、ダレージュを地面に振り落とす。


「ぎゃふん!あははは、面白い」


かなり手荒に振り落としてやったが、なんか面白がられた。

魔族の感覚がわからない・・・

まあいや。やっと落ち着いたので席に座った。

すぐに高麗がコーヒーを出してくれる。


『本日は酸味の強いものにしてみました』

「ありがとう高麗。里美も起こしてきてあげて。」


『それには及ばないかと。すでにテントの中でスマ子お姉さまが里美様の身支度を行っております。すぐにこちらに現れるかと思います。』


「そうなんだ。じゃあ後は適当によろしく。」

『承知いたしました。』


スーッと姿を消す高麗。

いつ見ても、この姿を消す瞬間がカッコイイんだよな。


それから数分で、里美だけでなくサビアンさんも現れて席に着く。

カマキリメイドの2人が、高麗にしたがって朝食の準備をしてくれる。


新しくできた魔族にメイド型はたくさんいるけど、サビアンさんに直接お世話をするのはボレーヌとダレージュの二人のようだな。

メイド長ってことか。


準備ができるとサビアンさんが両手を組む。

「では黙とうを」


僕らも黙とうをする。

「では頂ましょう」


そして食事を始める。

さて、戦争前の最後の食事なるはずだからしっかり食べないとな。


サラダにベーコンエッグにトースト。さらにコーンスープ。

実に美味しい。

なんていうか、質素なはずなのに素材のおいしさが素晴らしい。

ちょっとした塩やコショウも日本よりも美味しいのがわかる。

人工精霊たちの腕がいいのもあるだろうけど、こっちの世界はなんでも美味しい。


お腹いっぱい食べると、コーヒーが出てきたので一息つく。

コーヒーも香り深くて実に美味しい。美味しいコーヒーは朝のやる気を大いに盛り上げてくれるな。

サビアンさんはゆったりとコーヒーの香りを楽しみながら口を開いた。


「そういえば、異世界から来た勇者の皆さんは最初、何故かこちらの世界の食事が元居た世界の食事よりも劣っていると思いこんでいるのです。ですので皆さんこちらの食事が美味しくてショックを受けられるんですよ。よほど日本とか言う異世界の食事に自信がおありなのですね。」


里美が嬉しそうに笑う。

「あはは、それ分かるなー。私もその一人だもん。異世界で食事チートするのはロマンの1つなのに。でも考えたら失礼な話だよね。自分たちの世界の方がずっと優れていると思い込んでるとかさ。」


大人の微笑を浮かべるサビアンさんは、思い出したようにクスリとする。

「ふふふ、勇者召喚ではそういう『定番』の出来事はいくつかありますのよ。有名なのは<自動翻訳>スキルの誤訳ですわね。」


誤訳?それは初耳。

「誤訳の実例ってあるんですか?」


「はい。今では修正されているのですが、初めの頃は『押すなよ、絶対押すなよ』と言うと、『油断している俺の背中を強く押せ』と訳されておりましたの。その誤訳で勇者様が1人死んでから誤訳の存在が明らかになりましたのよ。」


うわー、死んだのか。

ご愁傷様。


「今わかっている<自動翻訳>の誤訳ってありますか?」


少し考えてサビアンさんはポンと手を打つ。

「わたくしがまだお城に居た頃の話ですが、勇者ヒロ様が発見した誤訳がありましたわね。『勇者のブレス』という誤訳なのですが。」


それは少し興味あるかも。

勇者とかブレスのことなら、僕らにも関係ありそうだし。

「詳しく!」


「はい。ブレスというと勇者様には『息を吐く』という意味の言葉で聞こえるそうです。ブレスは『理不尽』と『一撃』の連結語ですと説明しますとすごく驚かれていました。」


思わず僕と里美は「ガタッ」と半立ちになってしまった。

「マジっすか!僕にもブレスは『息を吐く』って言葉で聞こえていました。ですから実は僕はブレスを持っていないと思っていたんですが、その説明ですと僕もブレスを持っているかもしれませんね。」


サビアンさんは驚いていた。

「まあ、長道さんも<自動翻訳>側のお人でしたか。ですが長道さんは存在自体がブレスのようなお人ですので、わたくしは長道さんのブレスに関しては考えたこともございませんでしたわ。・・・そうですわね、あえて言えば四大究極魔法はブレスと言えますわね。大天使様といつでも交信できるのもブレスと言えますし、マリユカ様の特大なご加護もブレスですわね。」


「そうだったんですか…。デルリカやビレーヌがブレスを手から撃っていたときは不思議でしたが、そういう事なら納得です。」


うーむ。

新しい発見をしてしまった。

魔王や勇者はブレスを持つ。

そしてブレスは、世の理を超えた『理不尽な一撃』なんだな。

納得納得。

最終決戦前に聞けて良かった。


タブンこの勘違いが無くなったことは、この戦いではありがたい。

なんせ敵魔王の「ブレス」を勘違して喰らってしまう危険が減ったのだから。


そしてくつろいでいると、分身の僕の目に青い空が見えた。


「里美、サビアンさん。分身の僕と康子がダンジョンから外に出ました。魔族は結局1200体です。では戦争をはじめましょう。僕の指示に従ってもらっていいですか?」


2人の顔が真剣になる。

「わかりましたわ。長道さんのご指示従いましょう。」

「おっけーお兄ちゃん。私とフェンリルも頑張っちゃうね。」


よっしゃ。


20万の魔物の距離も丁度いい感じだ。


あの20万の魔物を囮にするつもりだろうから、そろそろ敵魔王も動き出すだろう。


僕らも作戦開始だ。


お読みくださりありがとうございます。

次回、サビアンのカリスマが人間を襲う。

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