001 プロローグ
― 001 プロローグ ―
気が付くと、メチャクチャ広くて真っ白い部屋に座っていた。
目の前には、水色の髪の毛の女性。
その女性の後ろには、個性的な4人の女性が立っている。
みんな美人だな…
目の前の水色髪さんがぴょこりとした動きで僕に歩み寄ってきた。
「目が覚めましたか?自分の名前がわかりますかー?っていうか記憶はありますか?」
いわれて思い出そうとした。
でも思い出せなかった。
「あの…思い出せません。僕のことを知っているんですか?」
すると無邪気な笑顔で僕の手を取る。
「はい、長道の事はよく知っていますよ。異世界の日本という国から来て、この世界で沢山すごいことをした人なんです。私の一番のお気に入りなんですよ。」
お気に入りなのか。ちょっと照れる。
「では僕はなんで記憶が無いんでしょうか?」
すると悪びれずに、ニコニコ教えてくれた。
「お気に入りのゲームとかだと、エンディングの後にレベル1からやり直したいとか思うじゃないですか。偉大な人だった長道のレベル1からの人生を鑑賞したくなったので、記憶を奪いました。」
なぜか本能がこの人の言っていることを理解した。
そして怒りも沸いてこない。
「まるで神様みたいな事をするんですね。」
水色髪さんは楽しそうに僕の肩を組む。
ちょっと水色髪さんのおっぱいが肩に当たって緊張したのは内緒だ。
「何言ってるんですか?私は神様ですよー。長道は時々私が神だって忘れますよねー、忘れちゃだめですよ。ぷんぷんです。」
後ろに立っている、金髪縦ロールの女性が「マリユカ様が記憶を奪ったのですよ」とフォローしてくれている。
どうやら、この女神はバカらしい。
まあいいや。
僕は、自分が何者でどんな人生を送ったかは覚えていないが、不思議と雑学は覚えているっぽい。
その雑学が、異世界もののスタートなら、ここは当然チートをもらうべく交渉するところだと叫んでいた。
「話をまとめますと、僕は記憶を奪われて異世界に放り出されるんですよね。でしたら当然チートをもらえると思っていいですか?」
マリユカ様といわれた女神は、僕の肩を抱いたままピョンピョン跳ねて頷く。
「もちろんですよー。長道にはチート能力を与えます。その力を駆使して自分の正体にたどり着き、記憶を取り戻してくれるだけで良いのですよ。そしたらご褒美にどんな願いでも一つだけ叶えてあげますよ。」
「魔王を倒したり、世界を救ったりしなくていいんですね。楽しい旅になりそうだな。」
「いえ、魔王を倒したり、世界を救うようなプチイベントは当然ありますよ。すこし刺激が無いとつまらないですからね。」
え?
「それはプチイベントレベルではないですよね。」
「その程度プチイベントですよー。」
おいおい、スケールが大きすぎるだろ。
怖いけど、一応聞かなくちゃな。
「…じゃあメインイベントは?」
マリユカ様の口元がニューと吊り上がった。
「妹達とのドタバタコメディーです」
「普通そっちがプチイベントでしょ!」
すると鼻で笑われた。
「ふっ、魔王を一撃で殺せる妹…だとしても?」
「怖いですよ!妹が怖くて家出しますよ!」
「しかもヤンデレ属性で、どんなに逃げても追いかけてくるとしたら。」
「毎日が命がけじゃないですか!」
「ね、魔王や世界救済なんてプチイベントでしょ。」
「それはもうコメディいじゃなくて、サバイバルドラマですよ!」
くそ、なんだその妹設定。
ツッコミが追い付かないよ。
そこでマリユカ様の後ろに控えていた、長い銀髪ツインテールの女性が小声でマリユカ様の耳元で囁く。
「マリユカ様、長道君にチートの説明もしてあげてください。」
ぽんと手を打つ女神。
「そうでした、長道のせいで忘れるところでしたよー。」
僕のせいにするなと言いたかったけど、言ったらまた脱線するだろうからグっと我慢した。
こんにゃろう。
マリユカさまは急に姿勢を正して、女神っぽいポーズをとった。
「では長道よ、あなたにチート能力を与えましょう。どんなチートかと言いますと…。」
どんなチート?
「えーっとどんなチートだったっけな。…まいっか。とにかくチートを与えます。では頑張ってください!」
マリユカ様は誤魔化すように、すっごい良い笑顔をすると僕に手をかざした。
僕の体が光り出す。
「ちょ、おま、どんなチートか教えて!そこ大事ですから!」
光となって消える僕にたいして、マリユカ様の後ろに立ていた四人の女性は、申し訳なさそうに手を振ってくれていた。
消える瞬間僕は思った。
『あの従者の四人、絶対苦労してるよな』
そして僕の冒険が始まった。
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