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未来予知

エレナは勢い良く走り出した。

唐突に。人の行く歩道の中を、彼女は上手い具合に走り抜けて走る。人の間を縫うように、それは初めから人がどの方向に移動するのがわかっているようであった。当たり前である。彼女は数十秒先の未来を予知することが出来るのだ。

エレナは制服のスカートが翻る事も臆せずに走った。中が見えることが無いのはわかっている。

何故彼女は走り出したのか?

それは目の前の横断歩道へ向けてである。

その信号がもうほんの数秒で点滅を始め、赤に変わってしまうのだ。この信号は一度変わったが最後、五分間信号が変わらないなどざらにある開かずの信号であった。彼女はそれを予知して走り出したのだ。

スクールバックを肩に持ち、彼女はローファーで軽快に走る。

信号はやはり点滅を始めた。

間に合う!

彼女は勢い良く横断歩道へと飛び出した。

その瞬間、真っ黒の塊が彼女の視界の外から飛び込んで来る。黒のスポーツカーがブレーキもかけずに曲がってきた。

彼女はすぐさまそちらを見たがもう既に遅い。彼女の細い身体は鈍い音を立て、ひしゃげたままの姿で飛ばされた。

アキラは身体から血を吹き出して宙を舞う彼女の姿を予知した。彼は数分後の未来を予知することが出来た。

そして、その未来通りに目の前で歩いていたエレナは急に走り出す。

アキラは彼女を止めようとした。もちろん、助けるためである。

その瞬間、彼は誰かに手を掴まれた。振り返るとそこにいたのは警察官である。

「どうも未来警察です。私は数年後の未来を予知することが出来るのですが、貴方は今からあの女子高生を助け、そこから親しくなり不純異性交友を働くのです。だから貴方を逮捕しなくてはなりません。犯罪を未然に防ぐため、仕方がありませんが」

彼はそこまでの未来が見えた。

これはまずい。

アキラは目の前で走り去って行く彼女の背中から目を逸らした。

それからしばらくして鈍い音が道路に鳴り響くかと思ったが、エレナをはねることを予知した運転手は電車で家へと帰っていた。

この世界では他愛の無い、皆が未来予知が出来る世界の話である。

しかしその電車の中で、十分先の未来を予知できる男だけがこの車両の行く末を知って震えていたが、一秒先の未来しか予知出来ない運転手は予定通り何食わぬ顔で運行を続けていた。

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