夢の話
夢の話をします。
ある夜私が、何やら道の街灯が照らすちょうど真下におりましたところ、いえ場所はわかりません。
しかし、とにかく私がそこにいることはなんの違和感も無く、それはそれで正しい。
ただ、場所がどこだかわからないだけなんです。
それで、そんな場所に立っておりますと、目の前にはぼんやりと人影のようなものが見えて参りました。
だから恐らく誰か立っているのだなと思ったのですが、はい、ちょうど街灯の明かりが届かぬところにおりましたものでよくはわかりませんでした。
ただ、常識的に考えて誰か立っているのだろうと。
それで私はその誰かに話しかけてみたのです。
「そこのあなた、道でも迷われましたか?」と。
いえ、誰かと言うことは聞きませんでした。
何か、不自然な気もしましたもので。
それでその目の前にはおられる誰かは、数秒ほどしてから、「いえ、おかまい無く、どうも」とだけ言いました。
月明かりも無く、そう曇り空だったのでしょう、黒い影がそう言ったようでした。
私は一応それでホッとして、「それなら良かったです」とその誰かに言いました。
いやはや、時間にしてはほんの一分程だったと思います。
私はそこにいることも、目の前の誰かがいることも全く不思議で無く、それが当たり前のように、ただその世界の流れのまま、そのままに生きていたように思います。
しかし、ふとしたとき、不意に不思議に思う時があるのです。
何故私は夜に外で誰かに声をかけているのだろう。
何故、この世界は月も無く曇り空がただ広がってそれで街灯の明かりが白黒のように浮かんでくるのだろう。
時々、そんな風に思ってしまうのです。
これは夢なのかなと、思ってしまいます。
私は先程、夢の話すると申し上げましたが、それは私の記憶の中で、その記憶だけが断面も無く、時の流れの中で異物として存在しているからそう思っているだけなのです。
不思議な感覚ですが、そうなのです。
しかし、それはやはり後からおかしく思うものなのですね。
記憶の中で異端なそれは、恐らく夢であろうと。
私はどう来たかもわからないこの真っ白な部屋の中で、誰かわからないあなたに申し上げているのです。




