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セレンディップな  作者: 島の住人
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奈奈とダーサ



僕にとっちゃ痛手。


電話したのは、角川君をゴルフに誘うつもりだった。話の通じないダーサだ、ただ「ミスター・カドカワ、ミスター・カドカワ」と告げた。


やつが仲介した「サー。テレフォン。カミン、カミン」を、アルファベットで書くと、


Sir. Telephone. Coming, coming.


サー あてです。来てください、来てください。


come でいいものを ing を付けて coming という。


つまらないテレフォンをした。以前、ふさぎの虫に悩む奈々ちゃんを海外へ連れだしてはと助言したのも我輩なので、口惜しいことはひとしおだ。


僕は這い這いの頃を知っている。「さん」と呼ぶなかでなく、“ちゃん”だ。美しかった貴子さんに似て(そりゃあもう)可愛かった。ダーサ風情に先を越されたか。


従来僕は少々惚れているため、そうした姿なら一遍見ておくのだった。「馬鹿。」とぶたれるに決まっているが。奈々ちゃんにすればアクシデントだ。


アクシデントでこそあれ、部屋に闖入されながら冷静でいられた奈々ちゃんは、奈々ちゃん流に状況把握した。「冷静」より、「平気」に近かったろう。


闖入者は「男」でなく、見られたとて恥ずかしくない。ロッキーに向かうのと同じだ。オス犬を前に羞恥心をおぼえるか。


セイロン島は背の低い人間が多い。160センチでも「チビ」とされない。ダーサは150センチに届くか届かないかだ。頭は禿げあがり、腹は出、三十三才とは驚く。奈々ちゃんは169センチと高く、用を授けるのに小児に対するような格好をとる。


「目があっちゃった。おじちゃんのせい!」


電話で笑っていた。


「平気」にも掛け値があって、見せたのがダーサでは見せたうちに入らない、としたい、本当は悔しいあらわれか。泣いたり怒ったりしたらあっちの思う壺、却って癪だ。ちょっぴり驕慢なところを奈々ちゃんは持つ。


反面、事件を冗談めかすアッケラカンさ。もともとよく笑うほうだし、人を笑わすのだって得意な子だ。おととしだったっけ、こもりがちになった。しかし、ネクラだから引きこもる、と、それが間違っている。すべて環境次第なわけで。




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