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セレンディップな  作者: 島の住人
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ことの起こり



角川くんがバスに揺られてゆだっていた時分、キャンディーではけしからない状況が生まれつつあった。


奉公人ジナダーサについて説明したおり、日本人家族に使われていると書いた。これは角川君のところなので。構成員は二名。


角川伸一50歳が父親。角川奈々21歳が娘だ。(本当は「奈奈」。僕はいいと思う。気障っぽくて好かないと言うんで、本人は「奈々」とする。)


六年前に恋女房の貴子さんに死なれた角川君は、ダンディーな男やもめになった。


周囲の者が心配して、縁談を持っていったのも一再ではない。みな断っている憎い男だ。まだ時でないと。


スリランカへは今年(2009年)六月に着任した。キャンディー市でエンジニアをやっている。


奈々さんは難しい年頃に片親を亡くしたもので、原因こそ知らね引きこもりの兆しが現れたのが大学に入って間もなくだった。授業をさぼるばかりかアルバイトも休みがち、外出を避ける風が見えた。


父親も見かねて、転地療養ではないが赴任先へ連れてゆくことを考え、勉強を休ませ同伴したのはベトナムのハノイが最初だったが、アオザイを着る日々が生来の快活さを取り戻させたので、以後、数次の帰国を挟んでタイのチェンマイ、インドのバンガロール、と、任地へおもむくたびに連れ歩いた。そうして、今度やってきたのがスリランカの古都キャンディーだったわけだ。


角川君は単身海外で仕事をした。日本よりも外国の方が長い。そのぶん、奈々さんは母親に育てられたのだと言っていい。


父と娘がキャンディーにいる理由は、ここはこのぐらいにして、それでは土曜日、シギリヤ見物のために家をあけたあの午後のハプニングに移ろう。


二人が暮らすアーナンダー屋敷には、二匹の犬が飼われている。オスとメスのシェパードは、奈々さんの友達だ。暇さえあれば散歩させる。キャンディーは海抜五百メートルと涼しく、赤道が近いながら夜は一枚羽織りたい。さすがに日中の太陽光は烈しい。犬と散歩なんかしたら、水を浴びないではいられぬ。





日本に帰ってキャンディーのことを言うと、女の子は「かわいい!」てんで喜ぶ。けれども、Kandy あるいは Candi だ。通常、Candy とは書かない。ちなみに、しゃれ男をさすダンディーは、Dandy でよい。(作者 島の住人)



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