レディーになったとはいいながら . . .
今度という今度はいかなる料簡でダーサがああいった挙にいでたのか、僕にも分かりかねる。
さすがに奈々ちゃんもギョッとしたらしい。けれども奈々ちゃんだ。たちまち平静を取り戻すなり「サンキュー」とひとこと、色鉛筆とおぼしき絵をめしあげた。
ところで、是非ともと言えたスポットではないのだが、すでに訪れたかこれから訪れようとしている人は、シギリヤ・レディーのポーズする洞に入ったら警備員が立っていて、チップをはずむなら通常では見られない絵を見せてくれることを知っているか知ることになるに違いない。旅行本等に写真が載っていてここの第6回『シギリヤの淑女でござい』でも載せた世界的に著名な壁画は、入り口付近にあるから誰でもみな初めに目に入る。
しかし、本当に興味深い幾つかは、足場が悪くて危険を伴うために賄賂を渡さないと見られない。
最初の入り口に近い方だけからすれば、昔の島女をモデルに制作したものだろうと考えるかもしれない。
そうではない。
「シギリヤ・レディー」の名にしもおわず、シギリヤの女に相対している保証はない。これは、余計な数千ルピーを払い且つ数十メートル転落するリスクを冒してまで禁断の裸体を目のあたりにした好事家連の知るところだ。
何しろアフリカ人や東洋人 ─ つまり日本人と同種族の女をも題材にしているので。
「それ旦那、あっちの厚ぼったい唇の、真っ黒けなやつがアフリカ女で。それから手前の、小さな目をした平べったい顔つきはモンゴルの女でさ」
僕にはそういう説明だった。
だから、シギリヤ・レディーに似せたといって、必ずしも奈々ちゃんに島女の容貌体つき肌あいを与えた意味ではなかろう、もっとも僕自身ブツを見せてもらったわけではないから推量の域に留めるのだが。シギリヤ観光したおり、穴蔵で出会った被写体どもが等しく豊満な肉体を持て余すふうだったのに心をうばわれたことだったが、これを言うと二の腕あたりをピシャリと打たれる。
恐らく奈々ちゃんは大理石のように目映く神々しくなりつつ、あの格好のみ同様にさせられていた . . . のだろう。




