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セレンディップな  作者: 島の住人
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レディーになった奈々ちゃん



週末を挟んで数日のあいだ、女主人と召使いは、例のハプニングに触れないで暮らした。事件なんぞ起こらなかったかのように。


水曜日の朝だった。オフィスへ向かう角川君を、奈々ちゃんは送り出す。運転手ヌアンは、しかるべき場所にボスを届ける。とんぼ返りして奈々ちゃんが提供してくれる朝食を奉公人部屋で ─ すなわちダーサが寝起きする部屋で ─ 食べる。奈々ちゃんは外出の支度をする。こたびのキャンディーは貴子さんの代役が目的ゆえ、買い物をはじめ公共料金の支払いまで、それからオフィスをも覗いたりと、日に何遍と用ができる。してみれば、ヌアンは奈々ちゃんのドライバーをも兼ねるのだと云ってよかろう。


今朝は、父親が好物にするカンクンと呼ぶ野菜だの、スープカリーのダシをとるモルジブ・フィッシュというセイロン風鰹節だの、スーパーでは手に入らないか入っても二流品にしかありつかない食材を調達しに、キャンディー中央市場へ行こうと、二階の部屋で身なりをととのえているところへ、ダーサがノックした。(事件以来どのドアでもきっとノックしないでは開けなくなった。)


シンハラ語でわからないことを口にしたと思ったら、つかつか歩みよった。手に提げた黒いポリ袋の中から一枚の厚紙。画用紙だ。ニタニタ笑いながら鼻先へ突きつけるのは、わが肖像画。シギリヤ・レディーに似せてある。中でもとびきり有名な一人だ。


「ユーライキ、ピクチャ。ダーサ、ピクチャ」


絵をかきましたから御覧に入れます、と申すらしい。



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