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夏生詩集2

生まれてきてください

作者: 夏生

実際のエピソードまじえたので長くなってしまいました。

駅のホームで息子と二人

ベンチに座って電車待ち

開いたスマホからニュースを読んだ


また、幼い子が死んでしまった

誰にも助けてもらえず

ひとりで


息子は特急がくるよ、とはしゃぐ

水筒に口をつけてごくりごくり

おでこから汗を流しながら


死んでしまった子は

どんな気持ちで生きていたのか

どんな気持ちで死んでいったのか

息子のおでこを拭いてやりながら

思う


人はこの世に必要だから産まれてきたはず

生きるために産まれてきたはず

死んでしまうと知りながら、幼い子の親は

何もしなかった

何もしなかった


息子が私に寄り添ってくると

ビニールを手にもったおじいさんが

ベンチの隅に腰かけた


「なぁ、ボク、お昼食べたか?飴食べるか?」

お昼はまだだった

メロン味の飴をおじいさんはにっこりくれた

ついでにヨモギ餅も。昼まだなら丁度よかった、

食べな、を三回、にっこりいってくれた


「ありがたいね」といった息子の顔は

深く染み入るものを感じとった顔で


幼い子が生きていたら、中学生

死後七年間もひとりぼっちだった

魂は何を思ったろう

再び人として産まれたくはないだろう

もう世に出たくはないだろう


おじいさんからもらったメロン味の飴を

舐めながら息子と私はあっさり通過していく

特急を眺めた


生まれるに値する世界がある

楽しくて素晴らしい世界がある

やさしいおじいさんがいる世界がある

この世界を知るには何度も生まれでなくては

今度はきっと素晴らしい人と巡り逢える

と思うから、願っているから

またこの世界に生まれてきてください


駅の階段をかけ上る息子の背中を

追いながら、そっと祈った



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