熱い日には
夏の暑い日、橋香は教室で涼んでいた。
「この部屋が一番涼しいわ」
「そりゃあ、陰のクラスだもんねぇ。来る睦月先輩の喜びようったら」
友人がからかうように言う。
夏。四季の中で最も熱い時期。陰属性の者は自動冷却機のごとく重宝されていた。このクラスにくる先生の顔も心なしか明るい。
「でも、抱きついてくるのはどうかしらね」
「夏だからじゃない」
深く、また深くため息をつく橋香。興味が無いのか、橋香を見ようともしない友人。
「えっと…、抱きついたらいけないのか?」
「出たぁー!!」
後ろから声がして、跳ね上がる橋香。そんな橋香の驚きっぷりに胸を痛める睦月。
「い、いつからいたのよ!?」
「『でも、抱きついて~』からだ。抱きつかなくて良かった」
「それは懸命ね。甘えん坊のお坊ちゃま。貴方の権力に私は屈しません」
私より身長の低い彼をよーしよーしと撫でる。彼がむっとしたように下から睨みつける。それも私にとっては可愛いくて仕方がない。だって彼は……。
「くっそーー! 年下だからってなめんなよ!!俺はお前より上のクラスで先輩なんだ!!」
「はいはい。身長150cmの先輩」
「俺は将来有望なんだぞ!」
「何年後よ、まったく……」
睦月先輩は年下の先輩。弟と同い年の先輩は、私から見たら可愛い男の子でしかないのだ。