5話 館の暮らし
R7年9月に物語を初投稿をさせていただき、勢いのみで投稿しておりましたが、文章が上手だとはお世辞にも言えず、一度戦略的撤退を致しました。
ただ、楽しく投稿はできていたので、自分なりに構成を考え直し、再投稿した物語です。
まだまだ文章は稚拙ですが、最後まで物語を描けるように、精進致します。
もし覗いてくださる方がいれば、前向きなアドバイスを頂けますと幸いです。
「あー疲れた」と瞬平は、3階自室から外を見て呟いた。
現在は、9月17日20時前だ。
窓外の星は、地球と同じように輝いて見えるが、現在いる場所は人里離れた山奥だ。
都会の夜空と違い、満天の星空が降ってきそうだ。
地球にいた時も、星が降ってきそうな星空を見上げたことが一度ある。
そうあれは、修学旅行で訪れたオーストラリアの牧場で、見上げた星空以来だ。
南十字星がとても綺麗で、十数年経った今でも印象に残っている。
あの頃は、部活や友人関係で上手く事が運んでいなくて、修学旅行なんて行きたくなかった。
だが休んだら負けだと、心中かなり無理をしながら、修学旅行に参加したのを覚えている。
そんな中、見上げたその星空が、余りにも綺麗で、その時抱えていた憂いを全て吹き飛ばしてくれ気がした。
大人になった今振り返っても、その星空のおかげで、修学旅行に参加してよかったと思える。
だが……
「星座がないから、心が晴れないのかな」
傍に寄ってきた、たまの背中を撫でながら、心中の憂いを祓えないまま、瞬平はただただ夜空を見上げた。
そんな時ブランシュが、ドアをノックして部屋に入ってきた。
「瞬平様、お食事の準備ができました」
今は考えても答えは出ない。
考えて見れば朝食べてから、口に何も入れていない。
瞬平の身に起こったことが、衝撃的過ぎて食事の存在を失念していた。
何はともあれ、食べないことには始まらない。
食事をいただこう。
昼間に自身の身で起こっていた事を思い返し、ため息を一つ、ブランシュの後に続いて、部屋を出た。
◆◆◆
時間は、数時間戻り
「えっ!どうなってるの?」と瞬平は叫んだ。
現在、鏡の前に素っ裸で立っている。
1日以上、シャワーを浴びていなかったから、浴室にいるのだ。
自身の姿を見て、思考が停止した。
「瞬平様いかがいたしました?きゃっ!」
ブランシュが、瞬平の叫び声に反応して勢いよく、浴室に入ってきた。
ブランシュは、手で目を覆っているが、指の隙間からガン見しているのがわかる。
ちなみに、ブランシュはメイド服を着ている。
服を脱ぎ捨てて突入してこないで、よかった。
「あら?お可愛いこと。あ、違います。緊急事態ですか?」と指の隙間から瞬平の目を見てブランシュは言う。
「いや、まぁ可愛くなってしまったのかもしれないけど……こんな筈では……ってそんなのは、どうでもいいだけど、俺ってどうみえる?」と仁王立ちでブランシュに質問した。
「猛々しく見えてまいりました」とブランシュは顔を赤らめた。
一拍置いて瞬平は、口を開いた。
「違うからね!興奮したんじゃないよ!体が若いから元気なだけだよ!って質問を間違えたか!俺の見た目いくつぐらいに見える?」と瞬平は大事な部分を隠しながら聞いた。
「んーなぜ質問されているか、疑問ではありますが、16、17ぐらいですかね?20歳を超えている様には見えないですよ」とブランシュは下をチラチラ見ながら言った。
「俺、38歳なんだけど」と鏡を見ながら瞬平は言った。
「えっ?その歳で……」
ブランシュは目を瞬きながら下を見た。
……。
まず一番気になたのが、あのぜい肉たっぷりだった、大きなお腹が綺麗さっぱりなくなっていることだ。
それどころか久々の腹筋とのご対面。
当時自慢だった6パックだ。
見た目は高校生ぐらいの若い男。
黒髪、奥二重で、三白眼の目、顔は若干大きめ。
これは、正しく若い時の瞬平だ。
生まれ変わったのか?
タイムリープしたのか?
体だけ若返ったのか?
全く検討がつかない。
正直に、ここまで訳がわからないことが続くと、若返ったことはさほど問題ではないが、もの凄く驚いた。
だが、地球じゃない違う世界に来ているのだ。
この事象が、瞬平の身にだけ起こっていることならば、問題が少し大きくなっただけだろう。
家族にまで影響をおよぼしているなら、話は変わってくる。
妻は、瞬平と同じ年だ。
同じ状況であっても何とかなるだろう。
だが、8歳と4歳の子供達はどうなる?
考えただけでも怖い。
今出来ることは、たまの言葉を信じ妻と子供達が安全に暮らしていると願うしかない。
喚き散らしても、瞬平に出来ることは何もないのだから。
瞬平はシャワーから上がった。
そして、たまとブランシュに自身が若返ってしまった心当たりを聞いたが、全く検討がつかないとの事だ。
「申し訳ございません。ですが、調べれば何か分かる可能性がございます。少し情報収集するお時間頂いても?世の中のことも調べたいので」
ブランシュは、瞬平が若返った件と、時世について情報収集をすると言った。
さらに、瞬平が身につけていたプライベート用の青いスマホと、ビジネス用の黒いスマホとスマートウォッチを持って、大きなクリスタル(ベースクリスタル)が設置してあった制御室に向かって行った。
瞬平はブランシュから、自室、寝室、執務室を与えられた。
場所は3階中央に位置し、前主が使用していたどれも大きな部屋だ。
扉を開けると、大きなソファーとテーブルが置いてある。
さらにその部屋から、寝室と執務室へ繋がる扉が確認できた。
ちなみに執務室は、廊下側からも直接入ることが可能な作りとなっていた。
各部屋には、それぞれ必要な机や椅子、ベッドやソファーといった家具を準備したと、ブランシュから聞いた。
たまと調べた時は、何も無かった筈だ。
この短時間で家具をどう準備したのか、かなり驚かされた。
短時間で家具を配置した仕組みも気になるが、テルミヌスで初の自室だ。
瞬平は、テンションが内心かなり上がっている。
だが、たまに舞い上がっていることが、バレるのが少々恥ずかしい。
けれど、部屋の中を見て回りたい気持ちがある。
たまには、家具を配置する仕組みを調べようと伝え、自室、寝室、執務室の順に隅から隅まで確認をすることにした。
自室は、まだまだ家具が少なくシンプルだ。
だが、部屋の広さが30畳程あり、かなりスペースが余っている。
寝室もシンプルだが、1人で寝るには寂しいキングサイズのベット。
執務室には、机や椅子にローテーブルにソファーが準備がされている。
変わったものといえば、執務机とローテブルにクリスタルが浮いている機器が設置されていた。
確認作業に満足した瞬平は、ソファーに腰をかけた。
家具を配置した仕組みは、恐らくカーペットの下に描かれている、文字と模様が関係していそうだ。
そしてやはり部屋の中を見て回り、1番気になったのが、イメージビジョンクリスタル(IVC)への、アクセスデバイスだ。
ブランシュの話を聞いている時から、物凄く気になっていた。
デバイスは、クリスタルを通し映像を出力する仕組みのようだ。
手のひらに収まる大きさで、部屋の壁にかかっていた。
IVCはデバイスを使いアクセスし、撮影ギルドや映像ギルドのコンテンツを観覧出来る。
単純にどんな作品があるか気になるし、沢山のコンテンツがあれば、ニュース的な報道コンテンツもあると思うので、そのコンテンツを見ることで、少しでもこの世界の事を知る機会になればと考えている。
ちなみに、瞬平のスマホをIVCデバイスのリモコンになるように、ブランシュに設定してもらっている。
「瞬平様、失礼致します」
ブランシュが制御室から戻って来た。
「もう情報収集と設定は終わったの?」
「はい。瞬平様、申し訳ございません。案の定、瞬平様が若返った事に関して有用な情報は、見つけることができませんでした。ただ最低限の時世は、把握いたしましたので、こちらをお返ししようと考え、戻って参りました」とブランシュは瞬平に、2台のスマホとスマートウォッチを手渡し言った。
「この館のメインデバイスとして、2台のスマホを登録いたしました。さらに、スマートウォッチは青いデバイスに連動いたしました。その為、どのデバイスからでも、ベースクリスタルと情報のやり取りが可能となりました。また、まだ稼働率が低い為、使える機能と範囲は限られますが、手のひらサイズの物なら、当館から離れていても転移転送庫から物の出し入れが可能となりました。また、瞬平様が心配していた、充電の件も、エネルギー源を変換し解決致しました」
「おーすごい機能だね」
瞬平のデバイス類を、この世界で使える様に設定をする為に預けたが、予想以上のどえらい進化を遂げた。
さらに安心したのは、動画と写真のデータが全て残ったことだ。
最悪、他のデータは消える事は許容できたが、動画と写真だけは消えないように、ブランシュに頼んでいたのだ。
妻と子供の写真が消えてしまうと、全てが最初から無かったことになりそうで、耐えられないから。
さらに、スマホの機能は、今まで通り使えるらしい。
そもそも肝心のインターネットと電波がないので、ネット検索に電話はできないが。
だが、オフライン下で使用できるアプリは今まで通り使用できる。
写真とメモのアプリを使い、日記でもつけようかなと、地球にいたら考えもしない事に、思いを巡らした。
「ちなみに、転移転送庫から物の出し入れをするには、転移転送庫に何が入っているか把握しなくてはなりません。これから、ご案内いたしますか?」とブランシュは笑顔で言った。
ドア付近で背中をピンと伸ばし、お腹の前に両手を置き、瞬平の返答を待つブランシュ。
彼女の笑顔は、少しも変わらない。
何かとてつもない圧を感じる。
「午前中に入れなかった場所だね」と瞬平とたまは顔を見合わせ、ブランシュに案内をお願いすることにした。
瞬平達は、部屋を出て大理石のような光沢のある廊下を歩いた。
館内はとても広い。
一度や二度通ったぐらいだと、迷ってしまいそうだ。
3階から1階まで、移動する道中に瞬平はブランシュに疑問を投げかけた。
「この館の動力ってどうなってるの?」
「疑問に思いますよね。館の外壁や屋根に、光力を収束する機構がございます。その収束した光力を変換し、蓄光地に貯めて必要な時に繰り返し使えるようになっております。ただ、稼働率を上げる為には、蓄光地のエネルギーだけだとエネルギー量が足りません。また、必要な魔法石が破損している状況ですので、瞬平様のお力添え頂きたい訳です」とブランシュは答えてくれた。
その他にも水とお湯が出る仕組みや、シャンデリアやランプに光が灯る仕組みについて話が広がった。
これらについても、光力が主な動力となり、魔法石にて物質を発現させていると、ブランシュとたまが説明してくれた。
螺旋階段を降り、一階の開かなかった扉前に立った。
「こちらのドアを入りますと、まず地下への階段があり、地下に転移転送庫(一時保管庫)、宝物庫、書庫、資材庫、動力庫、素材庫、備蓄庫、衣装庫、最後にマスター管理室への入り口がどこかにございます。瞬平様申し訳ございませんが、ドアを開けていただけますか?」とブランシュはにこやかに言った。
午前中は、開かなかった扉だ。
恐る恐るドアをノブを握った。
そうすると、瞬平は体に電気が走った感覚を覚えた。
ドアを押すと、多少の重みは感じるものの、簡単に開いた。
「この先は館に登録され、尚且つ通行権を持った者のみ入る事ができます。瞬平様はもちろん、たま様にも付与させていただきました」
「たまでいいよ」とたまはブランシュにすかさず言った。
ドアを入り地下へ降りると、バスケットコートが3面分入りそうな、空間が広がっていた。
天井の高さは、日本で通っていた学校の体育館より少し高そうだ。
床には、魔法陣のような模様と文字が彫られている。
部屋は、片付いていて壁際に棚が置いてあるが、そのほとんどに書物がびっしりと並べられていた。
「あれ?ここが書庫?」とブランシュを見て瞬平は言った。
「いいえ、ここは転移転送庫です。書物が多いのは、私どもが管理していた他の施設から運び出し、臨時にこちらで保管しております。当館の書庫自体も、満杯ですので」とブランシュは答えた。
あまり口を開かなかったたまが、目を見開いて言った。
「もしかして、魔法書?」
「はい。びっくりしました?一般的な書物が多いですが、魔法書や術書といった覚醒書も多いです。瞬平様も後ほどご覧ください。瞬平様なら色々な魔法や術に覚醒すると思います。実に楽しみです」
ブランシュは、自慢げにフンスと鼻をならした。
「魔法石の話を聞いてたから、あるとは思っていたけど、魔法は書物から覚えるものなの?」
「はい、基本的には書物からです」
たまが、ブランシュの話に付け加えた。
「種族特有の魔法や術は、例外だね」
瞬平は、頷いた。
「瞬平様、話が逸れてしまいましたが、この転移転送庫に置いてある物は基本出し入れ自由ですが、覚醒書は、出し入れしない事をお勧めいたします」
「にいやん、覚醒書はダンジョンから発見されるんだ。かなり、貴重な物になるよ。あと、全員が全員覚醒できる訳じゃないから、みんな力を手に入れる為に必死になる。もしかしたら、自分に合った書物かもと。争いの種になるよ」とブランシュとたまが話した。
瞬平は、大きく頷いた。
「では、瞬平様お楽しみはこれからです」とブランシュは、不穏な雰囲気で瞬平の手を引いた。
広い転移転送庫を抜け、次の扉を開けると、そこには部屋いっぱいに服が掛けられていた。
カジュアルな服からフォーマルな服、男性用女性用問わず、数千着とありそうだ。
なんなら、生地だけも置いてある。
「私オシャレが趣味でして。ちなみに、主を着飾るのも大好きでして♡特に、男性はやはりスーツですよね!私スーツフェチなんです。仕事終わりにネクタイを緩める姿なんて、もう最高じゃないですか?」とブランシュはきゃっきゃっしはじめた。
まだ、ブランシュとは半日ぐらいしか一緒にいないがこの娘は、この状態になると止められない。
瞬平は半ば諦め、ため息をついた。
その後、瞬平はブランシュの着せ替え人形と化したのは、言わずもがなだ。
そして、あっという間に夜になり疲れ切った瞬平は、星空を見上げ感傷に浸ったのだった。




