2話 猫はたま
R7年9月に物語を初投稿をさせていただき、勢いのみで投稿しておりましたが、文章が上手だとはお世辞にも言えず、一度戦略的撤退を致しました。
ただ、楽しく投稿はできていたので、自分なりに構成を考え直し、再投稿した物語です。
まだまだ文章は稚拙ですが、最後まで物語を描けるように、精進致します。
もし覗いてくださる方がいれば、前向きなアドバイスを頂けますと幸いです。
木漏れ日が倒れた男の上で、静かに揺れている。
雲一つない秋晴れの空から、体長30cmほどの猫が、ふわっと音も立てずに地面へ着地した。
猫の毛並は、陽光を反射し銀色に輝いた。
猫は、ゆっくりと男の元へ歩を進めた。
木陰に入ると、猫には白黒の細い模様や、斑点模様が入っている事が見てとれた。
小さいがらも、気品が感じられた。
猫は青みがかった銀色の目で、男を見つめ、ホッと息を吐いた。
「よかった。生きてる」
◆◆◆
「うぇ」
瞬平は口の中の青臭い臭いにえずき、目を覚ました。
口の中には草の線維が残り、雑草をすり潰した様な苦味が広がっている。
大人になってからはお酒を飲み過ぎて、えずくことが大半であったが、口の中に入った異物に対して、えずく事は久しぶりだ。
かなりの量を飲み込んでしまった様で、胃もひっくり返りそうだ。
「にいやん、口の中の物しっかりと飲まないとダメだよ。それは、毒消し草だよ。ゴブリンの刃物には毒があるから、斬らて放っておくと、死んじゃうかもしれないよ?」と猫は言った。
猫は緑色に染まった口から、毒を負ったのだから然もありなんとの雰囲気を醸し出し、言葉を発していた。
猫は、瞬平が倒れている間に近くの森から、毒消し草を摘んできて、自身の口ですり潰し瞬平に与えたのである。
瞬平は、驚きのあまりえずきが止まった。
さらに、青みがかった猫の目と目が合い、猫が話している事を認識した。
瞬平は目を見開いた。
そして半身を起こし、猫の話に耳を傾けた。
「ゴブリンに追われていて驚いたよ。けど、殺される前に気がついてよかったよ。僕が助けに入るのが、後少し遅かったら、本当に危なかったよ」と猫は続けた。
瞬平は、ゴブリンから逃げている時に、ふと感じた光は、きっとこの猫だろうと思いながら、腕の傷に目を落とした。
腕には血が流れた形跡は残っているが、ゴブリンに斬られたはずの傷は、もう塞がっていた。
さらに、斬られた腕と逆の手で斬られた腕を揉んでみたが、痛みがない。
たしか、ゴブリンの攻撃を受けた際、腕が折れたはずだが完治している。
瞬平は、ゴブリンに斬られた実感が合っただけに、大きく首を傾げた。
先程感じたリアルさは、なんだったのだろうか?
また、目の前で猫が話している事も相まって、夢の様に感じるが……。
「助けてくれてありがとう。けど猫さん、ここはどこなの?」と困惑顔で瞬平は猫に聞いた。
猫は、ここは遺跡群だよと答えてくれた。
ちなみに、ここにゴブリン達がいないのは、そこの木のおかげだよと、木に目線を送った。
木は枝葉が大きく広がり、CMで有名になったハワイの木にそっくりであった。
この木には、魔物が近づけない不思議な力があるらしい。
「そうなんだ。まぁ、そうなるよね。けど、その事じゃないよ」と瞬平は呟いた。
たしかに、今いる場所のことも気になるが、この世界のことが知りたい。
内心では、夢であればどんなによかったかと感じているが、視覚情報のリアルさ、聴覚が伝える自然の音、触覚で感じる日の暖かさ、嗅覚で匂う草木の香り。
何よりも、ゴブリンに襲われた時の恐怖心。
これが架空の訳がない。
それゆえに、空を突き抜ける様な途轍もなく大きな木が鎮座し、白と黒の太陽が空に輝く、この世界が現実だと認識せざるを得ない。
そうなると、生きていくためには知らなければならない。
猫は不思議そうに、首を傾げている。
「猫さんは何者?神様の使いかなにか?俺は、地球で死んで転生でもした?」と瞬平は聞いた。
猫は木漏れ日の下、草の上に腰を落とし、青みがかった銀色の中の眼を瞬平から離さないまま、数度瞬きをした。
猫は何かを思考したのか、三拍ほど置き口を開いた。
「僕は、たま、かな?神様の使いではないよ。ただ、にいやんを待っていたよ。そしてにいやんは、死んでもないし転生もしてない。ただ、光に攫われてここに到着したんだよ」と猫は言った。
瞬平は、複雑な表情を浮かべ腕を前に組んだ。
まず、猫の名前は、たまと言うらしい。
とても懐かしい響きだが、それは横に置いて問題ない。
だが、初対面の筈の瞬平を待っていた事と、光に攫われたことが大問題だ。
瞬平は空を見上げ、太陽が高い位置にある事を確認し、たまの方へ胡坐を組み、その事について聞いた。
「たまちゃんが、なぜ俺を待っていたの?あと、光に攫われたとは?」
「うん僕は、にいやんが光に攫われたから、命樹達の意志によって選ばれ、生まれた存在。だから、にいやんの事を待ってた。あと、にいやんが光に攫われた理由は、僕だと分からない。ただこの世界、テルミヌスでは、にいやんんみたいな存在を『光の迷い人』と呼んでいるよ。数百年に一人現れるみたい。あと、名前は、たまね」と最後だけやけに強調して、たまは言った。
この星は、テルミヌスという星で地球ではないらしい。
また、事実として数百年に一回という、凡そ人の身に起こりえないことを引き当ててしまったようだ。
瞬平は、割とこういったものを引き当てることに対し身に覚えがある。
変に納得してしまった。
内心、あぁまたかって心境である。
もちろんここまで、現実離れしたものを引き当てたことは初めてだが、入社した会社が倒産したり、買った車がリコール車で、デート中に道の真ん中で車が動かなくなり、後ろから来た車にクラクションを鳴らされながら車を路肩まで押したことなど、考えるとそこそこ思い当たった。
だが、自分自身に不幸が降りかかるだけなら百歩譲って納得するしかないが、一緒に暮らしていた家族は、どうなったのか?不安しかない。
原状の理解は全く追いつかなないが、たまが言うことは、全て事実なんだと思う。
そうでなければ、今、目の前にある現実に説明がつかない。
だからこそ、恐いが確かめなくてはならい。
「たま、分かれば教えて欲しい。妻と子供達は、どこにいるのかな?俺は、命を落とした訳でなく、光に攫われて、家族はどうなったの?」と瞬平は聞いた。
家族に会いたいが、それ以上に家族の身の安全が心配だ。
瞬平だけ光に攫われ、家族は家で安全に過ごしていることを願いたい。
でも、家族にもう会えないかもしれないことが脳裏をよぎり、心が締め付けられる気がした。
そんな瞬平をみてたまは、口を開いた。
「にいやんの家族は、安全に暮らしているよ。命樹達の意思に選ばれた時、見えたから安心していいと思う。あと、あの『大命樹』に到達すればきっと、どんな形かは分からないけど、家族と再会できると思うよ」
一拍置き、たまは続ける。
「実は僕も、目を覚ましたのは最近なんだ。だから、分からないことが多い。けど僕は、にいやんをサポートする為に生まれてきた存在だから、にいやんの力になりたいと、起きた時から思っていたんだ」と途轍もなく大きな木を見据え、言った。
瞬平は、そんな一生懸命話すたまを見て、薄く笑い頭を撫でた。
正直に撫でたことは、こんな訳がわからない世界で、理由はともあれ、自分を思ってくれる存在がある事に、安堵感を覚え、さらに自分を安心させる為、存在確認も含んでいた。
たまは、目を瞑って撫でる事を受け入れてくれた。
たまの毛はきめ細かく、ふわふわだった。
「たま、あの木が大命樹なの?」と瞬平は聞いた。
たまが頷き教えてくれた。
あの途轍もなく大きな木が、大命樹(白命樹)と言う。
なんでも、大命樹はこの世界の創世期から存在し、世界の中心で世界を支えている神的存在だそうだ。
「あそこまで行けばいいんだね?」と大命樹を見ながら瞬平は言う。
この世界に来て直ぐにゴブリンに殺されかけた事が、脳裏を過ぎる。
恐怖心が拭えない。
さらに、思考を進めるとゴブリンより危険な生物の存在が、容易に想像ができる。
それ以外にも、食事、寝床、装備、全てが足りない。
きっと、大命樹に辿り着くには、命が何個あっても足りないであろう。
だが、目的もないままに放浪し、訳が分からず野垂れ死ぬより100倍マシだ。
家族に会える可能性があるなら、進む以外に、選択肢はない。
決意を固めたまを見たら、たまは大きく頷き返してくれた。
「目的地は大命樹だとしても、にいやんはゴブリンの毒を受けたから、安静にしたほうがいいよ。今日の所は、寝れるところを探そう?」とたまが心配そうに瞬平を見上げ、言った。
「わかった。ありがとう。たしかに、まだ気持ちが悪い。そうなるとやっぱり、これの中だよね」と石造の建物を見ながら、瞬平は答えた。
「行ってみよう?」とたまが言った。
瞬平は頷き、たまと一緒に建物へ向かい歩を進めた。
石造の建物は、瞬平達の位置から見渡せる限りで、唯一倒壊せずに残っている建物だ。
作りとしては、ヨーロッパの古城の様な雰囲気だ。
古びた石材だが、石材がふんだんに使われているので、とても堅固に見える。
城というよりかは、館なのかもしれない。
窓が沢山見受けられる。
だが瞬平は、その窓に違和感を覚えた。
窓にまだ、曇りガラスの様な物体が、残っているのだ。
周りは全て倒壊しているのに、この建物だけ異質な雰囲気を醸し出していた。
ゴブリンに追われている時は、気付かなかったが、この建物は異常であると分かった。
「たま、この建物は安全なの?」
「たぶん。中に生き物の気配はないよ」
瞬平の心配そうな問いにたまが、答えた。
堅牢そうな、大きな二枚扉の玄関にたどり着き、ドアに手をかけた。
瞬平はドアを恐る恐る押し開け、中を除き込んだ。
そこには、ホールの様な空間が広がり、二つの螺旋階段が見て取れた。
二つの螺旋階段の上を見ると中二階と言うべきか、踊り場と言うべきか分からないが、そこから下を見て演説でもできそうな作りとなっている。
「たま、入るよ」
瞬平とたまは、建物の中に足を踏み入れた。




