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逃げ勝ち〜戦略的撤退をしましたが?なにか問題でも?〜  作者: 中尾 トウヒ


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1話 不条理は異世界でも

R7年9月に物語を初投稿をさせていただき、勢いのみで投稿しておりましたが、文章が上手だとはお世辞にも言えず、一度戦略的撤退を致しました。

ただ、楽しく投稿はできていたので、自分なりに構成を考え直し、再投稿した物語です。

まだまだ文章は稚拙ですが、最後まで物語を描けるように、精進致します。

もし覗いてくださる方がいれば、前向きなアドバイスを頂けますと幸いです。

 そろそろ起きなければならない。

 体感的には、目覚ましが鳴る頃だ。

 でも、今日はまだ布団に横になっていたい。

 なぜなら、昨日は少し夜更かしをしてしまったのだ。

 娘の誕生日だったから。

 「パパ、ママ、にいにありがとう」

 パンダのデコレーションケーキに灯った、蝋燭の火を吹き消した娘は、満面の笑顔を浮かべた。

 家族みんなで、とても充実した時を過ごせた。

 私が布団へ入る前に、妻とお酒を飲みながら、余韻を楽しめるぐらい。

 そして起きられない理由は、もう1つ挙げられる。

 理由は分からないのだが、体がポカポカ暖かいのだ。

 陽光と一体化してる様に感じる。

 こんなに心地がいいのは希だ。

 心地がいいと起きるのが億劫になってしまうのは、人間の性だと私は思う。

 

 ◆◆◆

 

 「ここは、どこだ?」

 瞬平が目を覚ますと周りの風景に絶句し、立ち尽くした。

 草木が擦れる音に、優しい風が耳を通り過ぎる、が、それどころではない。

 瞬平の目に飛び込んだのは、途轍もなく大きな木。

 幾多の幹が絡み合い、空の果てに届きそうなほど高い木が、形成されていた。

 世界が、その木を中心に広がっているようだ。

 加えて、太陽が二つ。

 白の太陽と黒の太陽が上下に分かれ、中心から少しズレた位置で、寄り添って陽光を世界に放っている。

 「壮大すぎるだろ」

 まるで、イギリスの有名な児童文学に出て来る、主人公にでもなった気分だ。

 目に映る全てが、大きく見えた。

 瞬平は驚きが隠せず、目が見開かれた。

 だが壮大華麗とは、この景色を指すのだろう。

 緑と青のコントラストに、ガジュマルの木に似た、見たことがない超巨大木。

 我を忘れて、瞬平は呆然としていた。

 「えっ!?」と瞬平の口から言葉が溢れた。

 風景の余韻に浸る間もなく、時が走り出した。

 瞬平は、何かの気配を感じ、背中に悪寒を感じた。

 そうこれは自宅で、黒いアイツに出会った時の感覚である。

 瞬平は、恐る恐る後方を振り向いた。

 そこには、蝶々がヒラヒラと、花畑を優雅に散歩している風景があった。

 「なんだ蝶々か、怖がらせるなよ……。あれ?けど、サイズがおかしい?」

 瞬平は、首を傾げた。

 よくよく観察すると、人間と大差ない大きさだ。

 寧ろ羽ねがある分、蝶々の方が大きく感じる。

 瞬平の心臓が、ドキンと悲鳴を上げた。

 「蝶々がこっちに向かってくる!?」

 息を殺して、その場にうつ伏せに倒れ込む瞬平。

 肌に草の葉が当たり、冷んやりした感触。

 身震いした。

 そして同時に、強い戸惑いを覚えた。

 「蝶々ちょっとデカ過ぎやしませんか?さらに、何匹か発光してる奴いるし、あと、この場所どこですか?」と瞬平は独りごちた。

 もう自分の正気を疑うレベルだ。

 「とりあえず、蝶々近づいて来るなし」

 小声で、瞬平は念じ続ける。

 ちなみに、自分は蛾アレルギーだ。

 蛾って蝶々とは違うのかな……

 そもそも、周りがおかしい。

 起きたら普通、家の天井が見えるはずでは?何故?草原のど真ん中?

 瞬平は、腕時計を見た。

 日付は、9月17日7時05分。

 日付は合っている気がするが、瞬平は混乱している。

 これはおかしすぎると瞬平は感じた。

 だが、客観視できているということは、まだ、まともな?思考がてきているのか?

 自分自身でも不明、だが、ふと思う。

 「子供達はどこだ?」

 瞬平の体から、血の気が引いた。

 俺は、薬でも盛られて誘拐されたのか?

 今見えている、風景は高性能なバーチャルリアリティか何かで、実験のモルモットとして、巨大な施設に放り込まれたのだ。

 きっと、そうに違いない。

 「こんな事、許した覚えはないぞ」

 瞬平は、立ち上がた。

 頭に血が上っている。

 ここ最近で、一番憤りを感じる。

 普通こういったことをやる場合は、事前に承諾が必要であろう。

 「ここから出せ!なんで俺が、こんな場所に、連れてこられたんだ?ふざけるのも大概にしろよ!あ、そうか、これは実験場で、いい大人が、慌てふためく姿を、撮影する趣旨の番組撮影か何かか?本人に承諾もなく、こんな事するのは、犯罪だろ!だれか、なんとか言えよ」

 瞬平は、心の限り叫んだ。

 だが、瞬平の声は周りの風景に吸い込まれていった。

 誰からも反応がない。

 ただただ、現実味がない景色が、瞬平の眼前で、風に揺れている。

 「ちょっと待てよ。嘘だろ、転……」

 瞬平は独り言を止めた。

 後ろから、草を掻き分ける音が迫ってきたからだ。

 瞬平は、反射的に後ろを向いた。

 そこには、肌が緑色、人型、体長1mの影が飛びかかってきていた。

 瞬平は、咄嗟に体を後ろ引きながら、顔を腕で守った。

 それゆえに、腕を斬られてしまった。

 刃物の切れ味は悪いのか、骨は切断されなかったが、その代わり右腕前腕の骨が折れ様だ。

 「く、痛い、マジ?ゴブリン」と瞬平は、斬られた腕を押さえながら呟いた。

 瞬平は、勢いよく走り出していた。

 だが、ゴブリンは気色の悪い笑みを浮かべ、瞬平の背を追って来るが、ゴブリンとの間隔が少しずつ離れていく。

 理由としては、ゴブリンが自身の背丈に見合わない、刃物を持っているからだ。

 それゆえ、瞬平の方が走る速度が速かった。

 瞬平は、走りながら腕を滴る血を見て、理解しざるを得なかった。

 立体映像ではない、紛れもなく現実だと。

 瞬平にとって、これは人生二度目の命の危機に瀕している。

 一度目は深夜仕事で、首都高速道路をトラックで走行中に、トラックのタイヤがバーストした所為で、壁に衝突しかけた経験がある。

 タイヤがバーストした瞬間、死が脳裏を過り、必死になって重くなったハンドル操作し、ブレーキを踏んだのを覚えている。

 その際、目に飛び込んでくる映像が、本当にスローモーションのようにゆっくりと流れ、頭の中に走馬灯が過ったのだ。

 今回は、危険のベクトルがまるで違う。

 背後から絶望が纏わりついてきて、その絶望を振り払うように必死に走った。

 加えて恐怖心から瞬平の呼吸は、人生の中で1番荒いと言っても過言ではない状態であった。

 過呼吸により、今にも倒れそうであった。

 そうして幾分か走ると、草を掻き分ける音が離れた気がして、多少冷静さが戻った。

 それゆえに、瞬平はチラッと後ろを確認してしまった。

 日本のような、極めて命の危機に瀕する事が少ない場所で、平々凡々と暮らしていた瞬平には、刺激が強すぎる映像がそこにはあった。

 「誰か助けて」と反射的に瞬平は呟いた。

 ゴブリンが追ってきているは、無論だが、1匹だけではなかった。

 森の方から、ウジャウジャと湧いて出てきている。

 瞬平は、間違いなく死ぬのだと感じてしまった。

 だが、まだ死にたくはない。

 自分から、死を早める行動は取れない。

 それゆえにひたすら走り、死にものぐるいで、逃げ続けた。

 なだらかな坂道を登りきり、平地を進んだ。

 この辺りには、倒壊した遺跡が広がっていた。

 そして、その倒壊した遺跡群をさらに幾分か進むと、瞬平の目に枝葉が大きく広がったとても大きな木が、飛び込んできた。

 その近くに、石造りの立派な建物が確認できる。

 瞬平は走り続けているが、だんだんと手や足、体全体から力が抜けはじめている。

 さらに、目の前がチカチカして気持ちが悪い。

 もう長くは走れない。

 きっとゴブリンに斬られて、血を流し過ぎ所為だろう。

 ふと、周りが光った気がした。

 だが瞬平には、それを確認する余裕が無かった。

 しかし、余裕がなく思考が巡らなかったからこそ、目的地を定める事ができた。

「せめて、あの建物まで」

 瞬平は、視野が狭まるのを無視して走り続けた。

 自分を鼓舞し、妻と子供達を思い浮かべながら。

 「がんばれおれ」

 「負けるなおれ」

 「最後まで足掻け」

 「そこまでだ」

 何とか建物にたどり着いたが、ドアを開ける力もなく、扉に倒れ込み瞬平の意志は、そこで途切れた。

 あみちゃん

 たいき

 みつき

 ごめんね。

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