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逃げ勝ち〜戦略的撤退をしましたが?なにか問題でも?〜  作者: 中尾 トウヒ


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9話 新たな仲間

R7年9月に物語を初投稿をさせていただき、勢いのみで投稿しておりましたが、文章が上手だとはお世辞にも言えず、一度戦略的撤退を致しました。

ただ、楽しく投稿はできていたので、自分なりに構成を考え直し、再投稿した物語です。

まだまだ文章は稚拙ですが、最後まで物語を描けるように、精進致します。

もし覗いてくださる方がいれば、前向きなアドバイスを頂けますと幸いです。

 ここ何日か、天気がいい日が続いている。

 現在はブランシュが、館の機能(防衛施設築造1)で造り出した、防壁の上をたま、ブランシュ、はなと歩いている。

 防壁は、高さ10m、厚さ5m、全周約400m、陸上トラック一周分と同じ距離、館の周りを四角く囲んでいる。

 ちなみに、館の管理範囲が広がりブランシュの行動範囲も広がった。

 「これは、高台デートでございますね」

 先を歩くブランシュが、笑顔で振り向いた。

 今日のブランシュの装いは、白コーデでオシャレをしている。

 最近は、メイド服が多かったので珍しい。

 「僕とはなもいるよ」

 はなの頭に乗ったたまが、ジト目でブランシュを見た。

 はなはそんなブランシュとたまをしりめに、散歩が楽しいようで、尻尾をブンブン振っている。

 「わかっていますよ。ペット連れのデートなんてセレブみたいでいいじゃないですか」とブランシュが、瞬平の隣に並んだ。

 「いやいや、セレブどころか防壁造ったら、資材庫と動力庫の物資がもう底を突きかけて、火の車なんだろ?」

 「そうですね。ですので、この上から城塞都市『ブラーヴ』について簡単にお話して、今後について相談できればと思います」

 

 現在、遺跡群となっているブラーヴ。

 その昔、この防壁から東にはテール基地(陸の基地)、南に3km程行くと、今も海岸が広がり、その海岸から南東に行くと港が栄え、海岸から南西辺にはメール基地(海の基地)があった。

 また、防壁から西側の山の上にはシエル基地(空の基地)、館の北西には現在も山城が残っている。

 港を除いたこの基地3基と山城が、主要軍事施設であった。

 他にも、物資の生産拠点となる施設があり、この城塞都市だけで自立可能且つ、一国と渡り合える力を保有していた。

 それがブラーヴだと、ブランシュが教えてくれた。

 「現状の確認をしましょう。まず目的ですが……」とブランシュが切り出した。

 そう目的は、瞬平が家族と再会を果たすため大命樹に辿り着くこと。

 だが、大命樹への道のりは険しく、瞬平の実力だと到達困難である。

 その足りない実力を補うため、館の稼働率を高め、ブラーヴ遺跡群を再稼働することにより、瞬平の影響範囲(領地)を広げ、武力を高めるのが狙いだ。

 「そして魔石の種類は問わないですが、館の稼働率を100%にするには、下位から上位魔石が必要となります。ですが現状、中位以上の魔石は、入手困難です」

 中位魔石や上位魔石を入手するには、ゴブリンの群れを超えて、ダンジョンに潜らなければならないためだ。

 「じゃあ、ゴブリンを倒せばいいんじゃない?」とはなが言った。

 「そうですね。倒し切れれば話は簡単ですが」とブランシュは被りを振った。

 そもそもブラーヴ遺跡群周辺に、なぜゴブリンが大量発生しているかというと、近くに決壊したダンジョンがあるのだ。

 それも1つではない。

 ブラーヴ遺跡群周辺には、数多くのダンジョンがひしめいて、その大半がダンジョンブレイクしている。

 それゆえ魔物除けの結界外は、魔物たちで溢れ、この地域は魔物達が覇権を争い群雄割拠する地域となっている。

 そんな紛争地帯といっても過言ではない危険な場所で、生き残る力は、まだ瞬平達にはない。

 それらを踏まえ考えると、シンプルに兵力を増強したい。

 だが、兵力増強といってもここは山の中。

 近くに街などない。

 人を雇うことすら絶望的である。

 そこで、ブランシュがある提案をしてきた。

 「妹のルージュを起こしませんか?」

 ルージュ自身の戦闘力はさることながら、ルージュを起こすと、ゴーレムファブリークを稼働できるという。

 「ゴーレムファブリーク?」と瞬平が呟いた。

 ブランシュは、頭を上下に動かし言った。

 「ゴーレムファブリークは、その名の通りゴーレムを作り出す施設です。そこの管理者がルージュなんです」

 作り出せるゴーレムの数には、縛りがあるものの、兵力を増強でき、さらに人手を増やせるという。

 一石二鳥である。

 また、魔物除けの結界外であるが、館から比較的近い場所にあり、近い場所から少しずつ広げた方が、再稼働後の防衛の観点からしても効率がいいと。

 瞬平達は頷いた。

 「それでいこう」

  瞬平一行は、ゴーレムファブリークの跡地へ向かうことになった。

  

 ゴーレムファブリーク跡地は、館から直線距離で東に2km辺りにある。

 「にいやん、危なくなったら防壁まで走って逃げるんだよ」

 「たまと私が、全力で守るよ。けど、危ない時は逃げてね。にいやんの安全が第一だよ」

 たまとはなが、心配そうに声を掛けた。

 はなも、たまの真似をして瞬平の事は、にいやんと呼んでくる。

 「瞬平様非常に口惜しいですが、私はこの防壁てお待ちしております。まずは、情報収集で構いません。無理はされず、たまとはなの言う通り、何かあればお戻りくださいね。いってらっしゃいませ」

 「ありがとう。いってくる」

 真剣な顔で見送る、ブランシュに瞬平に片手を上げた。

 

 東の防壁をでて、400mまでは魔物除けの結界内である。

 そこを抜けると、魔物の領域である。

 三たびの魔物領域への侵入だが、瞬間平は顔を強張らせた。

 「にいやん、そろそろ結界を抜けるよ。準備はいい?」

 「準備いいよ!たま、はな、お前達も無理はするなよ」

 瞬平達は、結界外に脚を踏み出した。

 結界は透明のため、結界の外に出ても景色は変わらない。

 ただ、魔物に襲われるリスクがあるだけで、遺跡群は、緑に侵食され、赤い花が至る所に咲き乱れていた。

 その花は、細長い線形で反り返りが強く、曼珠沙華に似ていた。

 ただ、美しい風景に瞬平は心を奪われていた。

 だが、目的地が後少しのところではなが呟いた。

 「様子がおかしいね。血の匂いがする」

 「静かだけど、何かあったみたいだね」とたまも言った。

 たまとはなも、予想外の展開に少し困惑気味だ。

 魔物が現れない上に血の匂いだ。

 危険な予感しかしない。

 「にいやん、どうする?」

 「そうだね、隠れて様子を伺おう」

 はなを撫で瞬平は、言った。

 3人は気配を消して、ファブリーク跡地を物陰から覗いた。

 「あれ、狼とゴーレムだよね?」と瞬平は小声で聞いた。

 ファブリーク跡地の中央部には、下へ降りる階段がある。

 その階段の前には、ゴブリンやキラーラビットの死骸に、大きさが4mほどの半壊した赤色のゴーレムと、まるでゴーレムを守るように白狼の群が、腰を下ろしている。

 狼の群れを数えると、総勢49匹だ。

 数が多いが、とても統率が取れている。

 だがよくよく群れを観察すると、大怪我をしている狼が多い。

 子狼が、倒れている狼に頭を擦り付けていている。

 親なのだろう。

 その姿は、痛ましく見ていられない。

 「ウー」

 狼の群れの中で一番大きい狼が、こちらに気が付いたようだ。

 唸り声をあげている。

 狼はゴーレムより一回り小さく見えるが、腰を落としていても迫力がある。

 だが、その場から動く気配がない。

 いや、きっとケガを負って、動けないのだ。

 瞬平は両手をあげて、物陰から出た。

 「こちらには、攻撃の意思はないよ」

 「にいやん!」

 たまとはなが、焦った顔で瞬平の後に続いた。

 「そのケガどうしたんだ?」

 瞬平は、一番大きな狼に声を掛けた。

 狼は唸るのをやめ、こちらの様子を見ている。

 他の狼たちも、瞬平たちへ鋭い目を向けるが、その場から全く動く気配がない。

 統制の高さに、瞬平は言葉を呑んだ。

 「たま、はな、狼たちと意思疎通取れるか?早く怪我を治さないと」

 「その必要はないわ。彼等は、『軍狼』人間の言葉を理解できるはず」とはなが言った。

 その言葉を聞いてか軍狼は、瞬平が思うもよらない方法で、接触を図ってきた。

 「人間に玉獣に……珍しいな光獣とは」と頭の中に声が、直接届いた。

 「おお、なんだこの声は」

 瞬平は、驚きの声をあげた。

 なんでも軍狼は、群れの仲間とテレパシーでコミュニケーションを図り、上位個体に至っては、他種族ともテレパシーが可能だ。

 「驚いている場合じゃなかった。軍狼さん話は後だ、早く怪我を治さないと」

 瞬平は、手に中位回復ポーションを持ち、軍狼に駆け出した。

 その時、体長50cmほどの子狼が飛びかかってきた。

 「父様に手を出すな」

 「にいやん!」

 瞬平は、脚を噛まれた。

 「大丈夫だ!2人とも動くな」

 瞬平は、左足を噛まれた状態でしゃがみ、子狼の頭をやさしく撫でた。

 「大丈夫、大丈夫、俺は敵じゃない」

 瞬平の脚が血で滲んだ。

 「君のお父さんたちを助けたい。これは、ポーションだ。見てて」

 瞬平は懐からナイフを取り出し、自身の手のひらを切った。

 そして、ポーションでその傷を治してみせた。

 軍狼たちは、瞬平がナイフを出した瞬間に警戒から殺気を放ったが、瞬平に殺気が皆無だったことから、すぐに殺気をおさめた。

 それと同時に、子狼が噛みつきをやめてくれた。

 「いい子だ。お父さんたちは任せて」

 再度、子狼の頭を撫で父狼に近づいて言った。

 「軍狼さん、この傷はゴブリンにやられたの?」

 「そ、そうだが」

 「じゃあ、毒消しも必要だ」

 瞬平は、中位ポーションと毒消しポーションを順番に、軍狼たちの口の中へ次々と流し込んだ。

 狼たちは、驚きのあまり目を見開いている。

 「なんだ?この効果は?傷と毒が完治した。だが、おぬし正気か?我等は肉食獣だぞ?もう少し躊躇せんのか?」

 「えっ?食べる気ですか?それは流石に困りますよ」

 瞬平は、少しおどけてみせた。

 「いや、助けてもらったから食べはせんが、我等が、恩知らずな獣なら食べられているぞ。もう少し、警戒しないとダメだ」と軍狼が困った顔で注意してきた。

 「ありがとう。けど、何も無かったからいいのでは?それにあたな方は、そんな事しないだろ?」

 予想外に子狼が飛びかかってきたが、これだけ統率が取れているのだ。

 まず、理不尽に殺されることはないと考えていた。

 「まぁ、そうだな。まずは、感謝を延べるべきだな。ありがとう助かった」と軍狼は言った。

 「大群だだとはいえ、キラーラビットやゴブリンなんぞに遅れをとってしまうとは、情けない限りだ」

 軍狼は被りを振り、立ち上がった。

 中位ポーションは、傷を治すと共に体力も回復する。

 そのため軍狼は、直ぐに動き出した。

 「ゴブリンとキラーラビットの大群に襲われて負傷したんでしょ?何で助かったの?」とたまが質問した。

 「コイツが助けてくれた」

 軍狼は、赤いゴーレムを見て言った。

 「我等は圧倒的な物量を抑えられず、追い詰められてこの場に来たのだが、ゴーレムが、光の結界を張ってくれたのだ」

 しかし、ゴーレムは魔物の気配が無くなると、沈黙してしまったという。

 「仲間以外に助けられたのは、初めてだった。それも2度も続いて」

 軍狼たちがゴーレムを見て、その場で目をつぶった。

 そして白い毛並みが、風にたなびく。

 その狼たちの姿は、ゴーレムへ感謝を伝えてるように見えた。

 次に、狼たちが一斉に瞬平に向き直った。

 「人間に今一度感謝を」

 狼達が目をつぶり、少し頭を下げた。

 

 その後、軍狼たちの事情を聞きたいのは山々だが、瞬平は周りを見渡しながら切り出した。

 「とりあえず、用事を済ませていいか?」と。

 ここは、魔物の領域。

 ゆっくり話している時間はないであろう。

 魔物がいつ湧いて出てくるか分からないのだ。

 早めに、用を済まさなければならない。

 瞬平たちは狼たちから了承を取り、階段を降りた。

 階段は少し崩れていたが、通り抜けるには問題はなかった。

 階段を降りた先には、直ぐに淡い光を発する大きなクリスタルがある。

 こちらのクリスタルは、館のベースクリスタルと比べると小さいが色が赤っぽい。形はあまり変わらない。

 瞬平はクリスタルを起動させる為、クリスタルへ触れた。

 クリスタルの輝きが、強くなる。

 『プロダクションクリスタル起動確認。ブラーヴベースクリスタル制御下へ移行……完了。マスター登録完了。順次アップデート……』と瞬平のスマホから音声が流れた。

 さらに、ブランシュから電話がかかってきた。

 実は、ブランシュに瞬平の仕事用のスマホを貸していたのだ。

 「瞬平様、プロダクションクリスタルの起動が確認できました。ルージュを起こしましょう。外に出てきて下さい」

 「了解!」

 瞬平たちは、階段を上り外へ出た。

 外に出ると、ブランシュが軍狼たちと共に瞬平が出てくるのを待ち構えていた。

 管理領域が広がり、ブランシュの行動範囲がまた広がったのだ。

 だが、ブランシュが防壁からここまで来るのが早すぎる。

 「瞬平様、さすがです。プロダクションクリスタルの起動だけに留まらず、配下を手に入れるとは」とブランシュが満面の笑みで迎えてくれた。

 「ん?なんですと?誰が配下だって?」と瞬平は首を傾げた。

 「何をおっしゃいますか!この白いわんちゃん達ですよ」とブランシュが言った。

 「わ、我等は、狼だ。だが、配下に加わるのは問題ない。むしろ、こちらからお願いしたい、です」と軍狼が呟いた。

 さらに子狼の側で倒れていた狼が、口を開いた。

 「先程は、お助けいただき有難うございます。私は今話していた、長の妻でございます。あまり知られてはいないのですが、私たち軍狼は、信あるお方に出会うと、そのお方に一生付き従います。そして、忠誠の証として魔法的に繋がる主従印を心に刻みます。また、主従印を刻んだ者の特徴として、こちら側だけですが、毛並みに特徴がでます。このように」と子狼の背中を鼻で押した。

 出てきた子狼は、口を開いた。

 「主、先程は噛みついてごめんなさい」と言った子狼の毛並みは、白いベースの毛並みに金色が散りばめられている。

 さっき、撫でた時は真っ白だったはずだ。

 「主従の印を刻むには、主人側が頭を撫でること。そして、その時に従者側が誓いを立てること。そう先程この子は、貴方様に忠誠を誓いました」と母狼が言った。

 「主、実は……我もだ」と狼の長も言った。

 長を見ると、少しわかりにくいが、毛先が緑色に変わっていた。

 「実は……私も」と計31匹が名乗りをあげた。

 意志がない者や動けない者は、手で口を開いてポーションを流し込んだが、意志がある者は……頭を撫でて、口を開けるようお願いしたのだ。

 「軍狼たちはそれでいいのか?」

 「もちろん、問題ございません。私を含め残る者たちも忠誠を誓わせていただきます」

 瞬平に仲間が49匹増えた。

 「ふふふふ、これなら魔石を効率よく集められるわ。作戦を練らなければ」

 ブランシュがニマニマしながら呟いてた。

 「あ、いけない。ルージュの存在を忘れるとこでした」とブランシュが言った。

 「ルージュは、ゴーレムオタクだから館じゃなくここに残ったんですよ。姉としては心配だったんですけど、言うこと聞かなくて」とブランシュは半壊した赤いゴーレムに近付き、さらに言った。

 「紅、久しぶり。そして長い間お疲れ様。ルージュを出すね」と言い、ブランシュは、ゴーレムの腹部に手を当て何か呟いた。

 そうすると、腹部装甲がゆっくりと開き、その中から、赤髪ショートの華奢な感じの女性が、脚を手で抱えた状態で出てきた。

 「あら?ブランシュねえなの?おはよう」とルージュが言った。

 ブランシュは、笑顔の中に涙を薄っすら浮かべ、ルージュに抱きついた。

 

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