プロローグ 自分らしくある為に
R7年9月に物語を初投稿をさせていただき、勢いのみで投稿しておりましたが、文章が上手だとはお世辞にも言えず、一度戦略的撤退を致しました。
ただ、楽しく投稿はできていたので、自分なりに構成を考え直し、再投稿した物語です。
まだまだ文章は稚拙ですが、最後まで物語を描けるように、精進致します。
もし覗いてくださる方がいれば、前向きなアドバイスを頂けますと幸いです。
私は『松木 瞬平』世の中に不満を抱えた30代子持ち、アニメ好きである。
なぜ、世の中に不満を抱えていたのか話すと一言で説明できてしまう。
仕事が、ダメダメなのだ。
まぁ、自分の所為である。
以前、友達と飲みに行ったが「やれ管理職になっだの、やれ年収が上がっただの」羨ましい限りであった。
年収が上がらない私にとっては、仲の良い友達との楽しい飲み会のはずが、針のむしろに感じてしまった。
自分より、仕事が順調な友達をひがんでしまうのだ。
社会人になり、もう15年以上経つのだが、情けない限りだ。
そんな不甲斐ない私だが、寝る前に、ちょっとした楽しみがあった。
それが、アニメ鑑賞である。
無論、晩酌込みだ。
それゆえ、2人の子どもを寝かしつけた後が至福の時間であった。
念のための明言しますが、子供達を邪魔者扱いしてるわけじゃないですよ。
ただ、寝る前に少しでいいから自分達の時間が欲しかった。
仕事と寝食だけで、1日が終わってしまうのは、なんだか切ない気分であったから。
それだけです。
だからその日も、妻と共に、お酒とアニメを嗜んでおりました。
さらにその日は、娘が4歳の誕生日を迎えた。
娘の写真を見ながら、ついついお酒が進んでしまった。
「いい写真が撮れたね」と妻は言った。
写真には子供達とケーキが写り、2人とも満面の笑顔とピースサイン。
ピースした中指が、兄妹揃って少し曲がっている。
実は、私もピースをすると中指が真っ直ぐならない。
変なところが、私に似てしまったのだろうか?
私は、妻と他愛の無い話をしながら、ソファーで二人寄り添った。
地球での記憶はそこで途切れる。
それ以降のことは、何も思い出せない。
瞬平は、このテルミヌスで目覚める前のことを、思案していた。
ここに辿り着くまでに苦労したから、少し、感傷的になっていたようだ。
なんでも昔を思い出すと、ストレス緩和や、自己肯定感の向上に繋がるらしい。
だが、そろそろ相手に集中しなければ。
彼奴はすぐそこだ。
瞬平は、スタスタ歩きながら前を向いた。
そこには、白い肌に黒い角を生やした紫髪の男が、空を見上げて佇んでいた。
「今日は、星がよく見えますね」
悪鬼、滅紫鬼と瞬平は、向かい合った。
この世界の悪鬼は、負の感情や欲望といった意志の蓄積が、光のエネルギー(光力)と合わさり生まれた存在とされている。
悪鬼は他者へ対し、異常な攻撃性を持ち合わせ生まれてくる。
それゆえ、光の災害と人々に恐れられている。
対抗手段がない者からすれば、天災に近いイメージだ。
そんな理由から悪鬼は、発見されると討伐対象となり、大規模な討伐チームが編成されるのだ。
しかしそんな中、滅紫鬼は500年前から存在が確認されている伝説の悪鬼なのだ。
「また、あたなですか?」
男は、鼻を鳴らしこちらを見据えている。
「覚えていてくれて嬉しいよ」
瞬平は、不敵に微笑む。
相手は、2m以上の体格を有し、顔は小さくスタイル抜群。
正直、無駄にかっこいい。
瞬平は、そんなイケ鬼の目を強く見据え直した。
目を見直した瞬間、滅紫鬼から凄まじい濃さの殺気が発せられ、瞬平を襲った。
滅紫鬼の、殺気は何度か受けているが、やはり慣れるものではないと瞬平は思う。
さらに殺気に乗っているのは、純粋な殺意だけでは無い。
こいつの殺気は、気持ちが悪いのだ。
「今回は逃げないのですか?私は、戦意がなく逃げる者は追わない、と思いますよ。以前のようにね」
滅紫鬼は、小馬鹿にした態度で瞬平に問いかけた。
瞬平は、自身の手を強く握った。
そして、滅紫鬼の獲物に目をやった。
滅紫鬼の武器は、相も変わらず刀だ。
相対する瞬平は、両手に籠手、左腰に刀を差している。
準備は、しっかりしてきたのだ。
ここまで来て、逃げ出す奴などいないだろ。
気持ちとは裏腹に瞬平は、肩をすくめ、あっけらかんと答えた。
「危なくなったらすぐに逃げるさ」
滅紫鬼は、ニヤリと粘着質な笑顔を見せ、刀を抜いた。
周りから音が消えた。
瞬平は、左手を顔の前、右手は顔の横、体を半身に構えた。
空気が揺らいだ刹那。
滅紫鬼は、瞬平の前に飛び込み上段からの真っ向切り。
瞬平は、身体1つ分後ろに下がり、刀の軌道から紙一重で外れ、右ステップを踏み、左ジャブを数発相手の首と肩付近に繰り出した。
剣がいなされた滅紫鬼は、ジャブを気にせず横一文字切りから袈裟斬りと連続で斬りかかる。
瞬平は、左手を一瞬で戻しバックステップしながら、パリングで攻撃を弾く。
瞬平は、刀を差しているが、基本の戦闘スタイルは拳闘メインである。
戦法としてはヒットアンドウェイだ。
滅紫鬼の袈裟斬りをいなした後、すぐさま懐に踏み込み、右ストレートを顔面にお見舞いした。
しかし、うまく威力をいなされたようで、滅紫鬼へのダメージは少ない。
バックステップで距離を取り、瞬平は一定のリズムでステップを踏む。
「本当にあなたは戦いにくいですね、実にいい。独特のリズムで間合いが読みにくい。次は力技ですかね?」
滅紫鬼は、嬉しそうに言葉を発し、刀に紫色のアークを貯めている。
「滅紫、斬虚」
滅紫鬼は、目に留まらない速さで、刀を横に振った。
空気を伝い、一瞬で紫色の禍々しい斬撃が、瞬平に迫ってきた。
「もう技を披露していただけるとは、光栄だね。空色、暗夜」
瞬平は、斬撃に合わせ居合切りで相手の紫色の斬撃を深い夜色で、拒絶した。
キンと鞘に刀を戻した瞬平は、口角を上げ大きく後ろへ飛んだ。
「挑発はこのぐらいでいいですかね?逃げる者は追わないんでしたっけ?まぁ、追えるものでしたら追ってください。ちなみに、自分は早いですよ?」
瞬平は、あえてゆっくり言葉を発すると、木に飛び乗り、軽快な音を立て走り出した。
「それは逃げてるのですか?戦意ダダ漏れじゃないですか。まぁ、あなたについては、逃げたとしても今回は特別に追ってあげましょう。最近、誰かさん達のおかげで、強者をいただけてないので」
滅紫鬼は、粘つくような笑顔を咲かせ、瞬平を追い出した。
瞬平は、滅紫鬼が追ってきた事を確認すると、走るスピードを上げた。
滅紫鬼の単体戦力は、恐らくこの世界で上位に君臨する
強者の中の強者だ。
そんな強者相手に、正々堂々戦うなんて、正直に、真っ平御免だと瞬平は考えている。
「俺の土俵なら今度こそ負けない」と瞬平は、自分に言い聞かすように、小声で呟いた。
前回、滅紫鬼と相見えた際、師匠に命を助けられた。
失意の中、滅紫鬼を倒すためだと1度は、逃げた。
逃げるが勝ちと言うが、本当に勝つために作戦を立て、準備し、盤面を整えた。
後方から、滅紫鬼の殺気が背中に迸る。
冷たい風の気配と共に、紫色の斬撃が無数に飛んでくる。
右、左に飛び回り、木々を使い斬撃をかわす。
斬撃が止んだ刹那、瞬平は、重力の影響があってないかの如く、幹に垂直に着地し、すぐさま両足で木を蹴り、一瞬で滅紫鬼との間合いを詰める。
「空色、居合早暁」
瞬平は、小声で声を発し、刀を鞘から振り抜いた。
「ガーン」
かん高い音が森に広がった。
滅紫鬼に、刀を胸の前でうまく受け止められた。
だが、空中で鍔迫り合いの状態になり、瞬平は飛んできた勢いが無くなる前に両足で、滅紫鬼の体を蹴飛ばし距離を確保する。
そしてまた瞬平は、木々の間を走り出す。
「隙を見出せ空色、黄昏」
夕焼け色が明滅し、瞬平の姿が一緒ボヤける。
「なかなかそそりますね」
滅紫鬼は、蹴り飛ばされたが、体勢を上手く立て直し、大地が陥没すると見紛う勢いで大地を蹴り、瞬平の背後に迫った。
「けど、何やら嫌な気配もしますし、お遊びは、ここまでです」
滅紫鬼は、満面な笑顔で横一文字に瞬平を切り伏せた。
そして、瞬平が残影のように消えた。
刹那、木の影から黒い影が飛び出し、滅紫鬼に向かい全力で刀を抜く。
「師匠に教わった技だ!」
消えたのは、瞬平の残像であった。
少し反応が遅れた滅紫鬼は、体勢を入れ替える余裕がなく、刀を左手で左回りに振ると共に、アークの防壁を展開した。
「空色、居合黒絶一線」
瞬平の刀から瞬く黒い光と、紫色の防壁が触れた瞬間、光が爆発した。
その場から瞬平は吹き飛んだ。
場には煙が広がり、滅紫鬼の姿は確認できない。
「く、」
吹き飛ぶ刹那、腹に蹴りを入れられた。
爆発の衝撃も合わさり、後ろに飛ばされ、腹へのダメージは、少ない。
だが、爆発と蹴りの威力が合わさり、飛ばされた勢いを止める事ができない。
瞬平は受け身が取れず、強く木に打ち付けられた。
煙の中から、黒い影が瞬平に向かってくる。
瞬平は影を睨みつけ、心の中で自身を鼓舞し、勝利を渇望する。
負けるわけにはいかない。
負けたくない。
今度こそ、不条理を乗り越えろ。
瞬平は、口から滴る血を左手で拭い、静かに立ち上がった。




