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二十話 勇者様!魔王城の家具を売り払うのはやめてください!

いつも通りの昼下がり。


勇者一行の無茶ぶりも近ごろは慣れっこになり、幾分か余裕を持って対応できるようになった。しかし、今日の案件はいつもの数倍は面倒なものだった。


「おい、木っ端役人!」


いつも通りに横柄な態度の勇者が王宮の私の執務室をノックもせずに訪問する。


「なんですか・・・今度は」


「なんですかだと?これは何だ!!」


勇者が私の鼻先に突き付けたのは先ほど私が上司に提出したばかりの書類「勇者一行の魔王城における習得品の不適切処理に関する覚え書き」だ。


「何って・・・御覧の通りの内容ですが」


「御覧の通りだと!この!国の英雄たる勇者様が魔王城で拾ってきた戦利品だぞ!それを売り払って何が悪い!」


そう、このトラブルメーカーは、魔王城で手に入れた呪い付きの家具をまとめて売り払ってしまったのだ。


おかげで市内には中身が勝手に消える戸棚や、座ったものの背骨を捻じ曲げる椅子、果ては食べ物が勝手に腐る皿などが大放出され、私とリリアは先週いっぱい、町中を駆け回ってそれらの呪いの家具類を回収し、さらにはこの勇者に代わり、始末書まで書いてやったのだ。


「と!に!か!く!」


私は声を張り上げて勇者に覚え書きを突き返す。


「いいですか、魔王城の戦利品は王国に帰属する、立派な国有財産です!勝手に横領して売り払うのはやめてください!」


「なんだとこの木っ端役人!そもそも、そんなことを言われても売り払ったものは仕方ないだろう!今更金を返せと言われても遅い!」


「いや、品物を押収する際に慰謝料と弁償を約束したから無理ですよ!払ってください!」


そう。私とリリアの謝罪行脚で、ほとんどの購入者は快く呪いの家具類を返品してくれたが、一部の購入者が曲者で


「そんなこと言われても、買ったものを返せなんて横暴だ!」


やら、


「こっちも出るとこ出ても良いんだぞ!」


だの、果ては


「こっちはこの家具で商売してるんだから、その分の賠償をしてくれ」


だの、ごね始める連中が何人か出てきてしまい、彼らを黙らせるために弁償を約束してしまい、その財源として勇者の売却代金を当てることにしたのだ。


「とにかく、覚書に書いてある通りの額、変換してもらえますか?」


リリアがぴしゃりと言い放つと、勇者は極めてばつの悪い顔をして唸り始めた。


まさか・・・


「実はな、今持ち合わせがないんだ」


この野郎・・・思わず手が出そうになるのを抑えつつ、冷静に事情を聴く。


「いやあ、なんというか、王都で最近評判の酒場があってな、そこで使ってしまったんだ」


「ちなみに、おいくらほど使われたんですか・・・?」


「い、家が建つくらいに・・・」


「どうやったらそんな額を使い込めるんですか!」


「いやあ、看板娘が可愛くて、ついな・・・」


もはやどうしようもない。とはいえ、王都法でもクーリングオフのようなものは認められているから、何とかそのうちの何パーセントかは回収できるかもしれない。勇者には申し訳ないが、このままでは私が上司から怒鳴られるだけなので、心を鬼にして勇者を王都の酒場「びーなすの宴」へと連れていき、二人で土下座して何割かを返金してもらった。


とぼとぼと二人で帰る途中、勇者はまた懲りずに酒場によろうと言い出したが、心を鬼にして断り、私はひとりで執務室に帰還した。


いつの日か、心置きなく休日を楽しみたいものである。

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