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第7話 女王様と童達

村を出て1時間半ほど歩き、僕とレオンは森についた。森に入る前にパンを食べ、地図を見ながら今日の予定を決める。

 

「今日は森の南西方面に行こうと思うんだけど、どう思う?」


「そっちはゴブリンはあまり出ないと思うぜ、何か理由が有るのか?」


「南西に流れる川の辺りでヒーリスという薬草が採れるらしいんだ。持って帰って家で栽培出来れば金になるかも」


「でも森の外で育てたヒーリスは薬草には使えないって話だろ?」


「うん、薬草に使えるのはピンクの花を咲かせるヒーリスだけ、森の外では花は全て白になる。だからその理由を調べたいんだ」


「それが出来ればとっくに誰かがやってると思うがなぁ」


「まぁ良いじゃないか。この前はレオンの要望通り北側の山に面した森を探索してゴブリンといっぱい戦えただろ?」


「俺は今日もそこに行くもんだと思ってたぜ」


「じゃあ次はそうするから、今日はお願い」


「ルートに頼まれちゃしゃーねぇな。じゃあさっさとヒーリス見付けて、その後は肉狩るぞ肉!鹿か猪、熊でも良いぜ」


「オッケー!」


 地図をしまうと僕達は森に入った。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 森を1時間ほど歩くと流れのきれいな川にぶつかった。


「あった、この川だ。この川を上流に向かって歩いていけばヒーリスは見つかるはずだよ。川辺にピンクの花が咲いてたらそれがヒーリスだ」


「森の中で花探しか、トホホ」


 それから暫く歩いたが、ピンクの花は見つからなかった。

 ゴブリンや獣の姿も全く見ない。

 見かけた生き物と言ったら虫やトカゲ、たまに鳥の鳴き声が聞こえるくらいだ。

 やれやれといった感じでレオンが切り出す。


「なぁルート、もう戻ろうぜ。ゴブリンはともかく、何か肉を持ち帰らないとマリーにガッカリされちまう。俺はマリーを悲しませ…」


 急にレオンが立ち止まり辺りをキョロキョロうかがい出した。


「レオン、どうしたの?」


「静かに!」


 何だ?何か聞こえたのか?

 僕も周囲を警戒した。



「………ァ………」


 微かに何か聞こえる!声か?

 そう思う間も無くレオンはもう駆け出していた。


「女だ、助けを求めてる」


 レオンにはあれが聞き取れたらしい。

 しかし全力で走るレオンはこんなに早いのか。

 

「クソッ、この辺のはずなんだがな」


 レオンが焦って周囲を見回している。

 もしこれが人間の女がゴブリンに連れ去られるような事態だとしたら止めないと厄介な事になる。

 人間の女から産まれたゴブリンは体格も力も並のゴブリンとは違う強力な戦士となる。

 下手をすると他のゴブリンを集めて村を襲撃するかもしれない。

 そうで無くてもあの村は過去にゴブリンの襲撃が何度もあり村の家畜が襲われた。それ以来家畜を飼育するのが禁止にされた経緯がある。

 

「キャアアァァ、来るな化物!わらわは食うても旨く無いぞ!」


 今度は僕にも女の悲鳴がハッキリ聞こえた。

 確かにこの辺りから声が聞こえる。

 しかし誰も居ないぞ。


「おぉ、そこのわらべ達、妾を助けてくれ。早う!はよう!」


 向こうからは僕達が見えているのか?

 何処だよ全く!


「おい、何処だ!何処にいる!」


 レオンが叫ぶ。

 これが何かの悪ふざけじゃないなら女と一緒に化物も居るということになる。

 正直、ゴブリンよりそっちの方が怖い。

 見えない化物?どうなってんだマジで。


 レオンが剣を抜く。

 つられて僕も腰からナイフを抜く。

 レオンが剣を構える

 つられて僕もナイフを投げる動作に入る。

 しかし、敵が分からない。


「早くやるのじゃあああ!」


 女が叫ぶと同時にレオンが剣を凄まじい勢いで前に突き出した。

 何だ?そこに何かが居たのか?

 良く見ると、レオンが突き出した剣先にクモが貫かれていた。

 

「全く、人語を話す虫など聞いたことが無い」


 驚くことに、声の主はクモの巣にかかってジタバタしている虫だった。


「早く妾を助けてくれ、抜けられぬのじゃ」


 良く見るとその虫は人の姿をしている。

 黄色と黒のボーダー柄のチュニックを着た女性。体長は20cmくらいだろうか、背中には虫のような透明な羽が生えている。


「暴れるな、糸が絡まる」


「そ、そうか?すまぬな」


 レオンが蜘蛛の巣からその虫のような女性を助けると、女性は自己紹介を始めた。


「コホン。礼を言うぞ童達、妾の危機を良く救ってくれた。妾の名はクィンビー、蜂の女王じゃ。苦しゅうない、ひれ伏すが良いぞ」


 クィンビーと名乗ったその女性はどうやら蜂の女王らしい。

 でも、女王って1匹で行動するものなのか?


「女王蜂って普通、巣から出ないんじゃないですか?何でこんな所で蜘蛛の巣に引っ掛かったんです?」


「おぉ童、よく知っておるな。そうじゃ、巣に居るのが普通じゃ」


「そもそも人語を話す時点で普通じゃない、化物はクモよりむしろコイツの方だぜ」


 それはレオンの言う通り。


「妾はこの男は好かん。助けて貰った恩はあるが態度が大きくてかなわぬ。でかいのは図体だけにした方が良かろうよ。そもそもスピードを犠牲にしたパワー全振りの図体では敵が倒せないのは常識じゃ。そんな事も知らぬのか?やはり図体ばかりで頭はまだまだ小童こわっぱじゃのう。おっほっほ」


 クィンビーがレオンの周りを飛び回りながら言いたい放題言っている。

 まるで捕まえてみろノロマと言わんばかりだ。         

 しかし、次の瞬間クィンビーはレオンの右手に捕らわれていた。


「…へ?」


「ルート、これ肉になるよな?」


「意外と美味しいかもしれないね」




「待て待て待て、妾は食うても旨く無いぞ!」

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