表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/19

第5話 滅びゆく世界へようこそ!

「隠蔽します!この件は誰にも知られてはいけません。絶対に!」


「で、でもエリちゃん…そんな事出来るの?」


「もちろんです。一哉様の協力さえ得られれば」


 テッテレーテーテ~~♪


『正義は勝つ!』


 ブラックゲイル将軍を倒し、ファンファーレと共にエリザベスが 勝鬨かちどきを上げる。

 エリエルの顔がひきつった様に見えたのは気のせいか?


「隠蔽って何やるんですか?俺、魂の牢獄とかには行きたくないんですけど」


「ワシも行きたくないよエリちゃん」


「私もです。でもこのままだとゴーラ様と私は間違いなく魂の牢獄行きです。今もどんどん死者の魂がやって来て、この部屋の順番待ちで外に列を作っています。このままでは何事かと監視員が来てしまい全てが露見してしまいます」


「ワシ、あの天使嫌い!会いたくない!束縛の鎖ちらつかせて喜ぶような変態じゃん!」


「私だって嫌いですよ。でもこのままだとそうなります」


 今のエリエルは先ほどまでの頭を抱えて狼狽していたエリエルでは無くなっている。

 出来るオーラ全開のエリエルだ。

 オーラの色は黒そうだけどね。

 

「一哉様。本来、名簿に一哉様の名前があれば、我々は一哉様のこれまでの人生が書かれたページを読むことが出来ました」


 それってどこら辺まで書いてあるんだ?

 とっても気になります!


「そして、一哉様の人生を確認し、その行いに応じて一哉様の魂を天国、輪廻、牢獄のいずれかに送り届けます」


「なるほど」


「ところが天国、輪廻、牢獄にもそれぞれ担当が居て、送られた魂の最終的な行き先を決めます。天国なら天使になって天界で働くかそのまま天国で過ごすか、輪廻なら虫に転生するのか再び人なのか、牢獄なら…この話は聞かないほうが良いですね。それぞれの担当が判断します」


 俺はどうだったんだろ…そういや最後に信号無理矢理渡っちゃったからな。

 大目に見てね!


「ですが、今のまま一哉様を送り届けても名簿に名前が無いので大騒ぎになり、私達が追求されてしまいます。そこで…」


「そこで?」


「一哉様には是非、4番目の選択肢を取って頂きたいのです。つまり、天国でも輪廻でも牢獄でもなく、この世界とは全く別の世界、異世界に転生して欲しいのです」


 異世界転生キター!


「そうすれば、全く別の世界にはなりますが、一哉様は再び人間として生きることが出来ますし、我々も非常に助かります」


「おぉ、エリちゃん!名案だね!」


「ですが、これは一哉様がここで起きたことは絶対に誰にも話さないと約束してもらう必要があります。この事が他の誰かに知られたら、私達は今以上に苦しい立場に置かれますので」


「ウーン…」


 異世界行きたい!

 でも安易に決めて良いのだろうか?

 俺がアニメのように巨大なドラゴンと戦えるとは思えない。

 そもそも異世界ってどんな所なんだ?


「その…異世界って、どんな所なんです?」


 あれ、エリエルの表情がちょっと曇ったか?


「そうですね、中世のヨーロッパを想像してもらえると近いと思います。電気やガスは有りません。そして、そこに住んでる生物はこの世界とはだいぶ様子が違います。ただ、ちゃんと人間も存在しておりますのでそこは心配は要りません。それと、この世界には無い魔法というものが存在しています」


 おぉ、これは理想の異世界っぽいぞ。

 ならまぁ良いか!

 どうせ一度は死んだ身だ。

 こんな事ならもっと現代知識を学んでおくんだった。

 現代知識で無双したい!


「ゴホンッ」


 俺の咳払いに2人がビクッとする。


「分かりました、異世界に行きましょう。そしてもちろん、この事は誰にも話しません」

 

 これは2人の為じゃなく俺の為だ。

 散々アニメで見た異世界転生が現実になるなんて!


「おぉ、行ってくれるか!ワシは嬉しいぞ一哉君!」


「ありがとう御座います一哉様。では、我々の我儘ばかりでは申し訳ないので、何かご要望があれば1つだけ一哉様の願いを叶えたいと思いますが、何かございますか?」


 ここは定番の強力なスキル!

 でも良いけど、俺にはもっと大事なものが有るじゃないか。


「じゃ、じゃあスマホは持って行けますか?」


 だが、エリエルさんの表情がまた曇った。


「申し訳御座いません、一哉様。これから行く世界の文明レベルに合いませんのでそれは無理です。それに、転生では母親のお腹から産まれる事になりますので、手にスマホを持ちながらというのも都合が良くありません。異世界に行っても連絡を取りたい人が居るのですか?」


 うっ、ボッチにはその質問はダメですよエリエルさん。


「連絡じゃなくて、このスマホには俺の大事なものが入っていて…まぁ生き甲斐というか、これが無いなら別にもう死んでも良いかなんて気になるかもしれないと言うか…」


 ちょっと俺、駄々っ子になってるな。

 死んでも良いという言葉にエリエルさんも神様も焦っている。


「か…一哉様。ちょっとそのスマホを見せてもらっても良いですか?」


「どうぞ、これなんですが」


 俺はエリエルと神様にゲーム画面や保存してある大量の画像やムービーを見せた。

 もちろん、俺の熱い解説付きでだ。

 興味津々でエリザベスを見ている2人を見てると布教活動みたいで何だか気持ちが良い。

 2人が見ている目的がそうではないのは分かってるけどね。


「可愛い娘じゃね、ワシ好きよ」


 お、神様イイネ!分かってらっしゃる。

 俺の方が100倍は好きだけどね!


「分かりました。ゲームの方は無理ですが、保存した画像やムービーを異世界でも見たい…こちらは最大限何とかしてみましょう」


 最大限頑張ってください!


「それでは一哉様、異世界の件は承諾いただいたということで宜しいですね?くれぐれも秘密は守って下さるようお願いいたします」


「勿論です!」


「ではゴーラ様、よろしくお願いします」


「ホイホイ!そんじゃ、行くよ~」


 え?爺さんがやるの?

 何だか不安だなぁ。

 でも異世界か、ワクワクするぜ!


 いつの間にか木の杖を持った神様が、目を閉じて何やらブツブツ唱えている。

 念仏みたいだが、それが異世界転生の呪文なのだろう。

 すると、足元が金色に輝き出し、床に魔方陣が描かれていく。

 身体の周りにも浮遊する金色の粒がたくさん出てきた。

 それっぽいそれっぽい!

 

「……滅びゆく…………から……犠牲にする者……死の運命……」


 え?爺さん何だって?


「いざ、旅立ちの時は来たれり!」


「フフフ、一哉様。滅びゆく世界にようこそ…」


 滅びゆく世界?

 どうゆう事???

 

 周囲が激しい光に包まれ身体が浮遊する。

 そして、俺は意識を失くした。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




「お疲れ様、ゴーラ」


「上手くいったねエリエル。でも本当に一哉君で良かったの?世界を救う感じにはちょっと見えなかったがのぅ」


「良いんですよ、彼が直接世界を救わなくても。彼は、きっとあの娘を導く役割を果たしてくれます。準備に3週間かかりましたが、何とか上手く行きました」


「ところで、何であの娘の事は黙ってたんじゃ?」


「あの娘はまだ産まれて間もない子供ですし。それに、あの世界はどんどん厳しさが増しています。あの娘が無事に成長出来る保証もありません。それでも、どうしてもという時は話すつもりでは居ました」


「なるほど。今日の事は1つ貸しだよエリエル」


「分かっています。この世界の住人を転生させるにはこの世界の神の力が必要。協力に感謝します。本当に頼りになりますね貴方は」


「ホッホッホッ、お安いご用じゃ」


「それでは、私もそろそろ戻りますね」


「うん、頑張ってねエリエル」


「せっかく神になって世界を1つ任されたのです。滅びゆく世界と言われていますが、私は諦めません。では、また今度」


 エリエルが光に包まれると、その姿はもう消えていた。





「お、これは…下界に戻しておかんといかんな」


 ゴーラは落ちていた一哉のスマホを拾った。

 そして、スマホのエリザベスをじっと見つめてニヤニヤ笑っている。


「一哉君、さぞビックリするじゃろうな。エリエルも面白い事を考える。きっと一哉君はあの娘を必死になって助けるじゃろうて。ホッホッホッ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ