第二十一話:二年生への階段
# 第二十一話:二年生への階段
桜の花びらが舞い散る四月の朝、俺は二年生としての新学期を迎えていた。
「二年生か...」
教室の窓から見える桜を眺めながら、この一年間の成長を振り返る。
一年前は何もできなかった俺が、今では中級の魔法も使えるようになった。
「佑樹、おはよう」
遥が教室に入ってくる。
「おはよう、遥」
答えながら、彼女も確実に成長していることを実感する。
「今日から、俺たちは先輩なんだね」
田中が感慨深そうに言う。
「そうだな。後輩たちの手本になれるように頑張らないと」
神宮寺が責任感を込めて言う。
「そうだね。でも、緊張するな」
答える。
***
朝のホームルームで、担任の先生から重要な発表があった。
「今年から、二年生の諸君には新入生の指導係をお願いします」
先生が説明する。
「一年間を通じて、新入生の学習や生活をサポートしてもらいます」
詳細を聞いているうちに、責任の重さを感じる。
「指導係は、四人一組で新入生五人を担当します」
先生が組み合わせを発表する。
「相模、遥、田中、神宮寺の四人で、一つのチームとして活動してください」
俺たちが同じチームになったことに安堵する。
「担当する新入生は、後ほど紹介します」
先生が続ける。
「先輩として、後輩の成長を見守ってください」
重要な役割を任されたことに、身が引き締まる思いがする。
***
午後、体育館で新入生との対面式が行われた。
「今日から、君たちの指導係を務めさせていただきます」
俺は五人の新入生を前に挨拶する。
「よろしくお願いします」
新入生たちが緊張した面持ちで答える。
「まずは、自己紹介からしましょう」
遥が優しく促す。
「僕は山田太郎です。火系統の魔法を得意にしています」
一人目の新入生が自己紹介する。
「私は佐藤花子です。回復魔法に興味があります」
二人目の新入生が続く。
「僕は鈴木一郎です。戦闘技術を学びたいです」
三人目の新入生が意気込みを語る。
「私は高橋美咲です。まだ何が得意か分からないです」
四人目の新入生が正直に答える。
「僕は伊藤次郎です。探索者になるのが夢です」
五人目の新入生が夢を語る。
「みんな、それぞれ目標があっていいですね」
田中が感心する。
「僕たちも、一年前は同じような気持ちでした」
神宮寺が共感を示す。
「一緒に頑張りましょう」
俺は新入生たちに向かって言う。
***
指導係の初日、俺たちは新入生に基礎的な魔法を教えていた。
「魔法の基本は、イメージと集中です」
俺は『光球』を手のひらに浮かべながら説明する。
「まず、光をイメージしてください」
新入生たちが真剣に聞いている。
「そして、その光を手のひらに集めるように集中します」
実演を見せる。
「では、一人ずつ挑戦してみましょう」
遥が順番を決める。
最初に挑戦した山田は、小さな光球を作ることができた。
「すごいじゃないか」
田中が褒める。
「でも、もう少し安定させられるといいですね」
神宮寺がアドバイスする。
次に挑戦した佐藤は、光球を作るのに苦労していた。
「焦らなくていいよ。ゆっくりやって」
遥が励ます。
「イメージが大切だから、時間をかけてもいいからね」
俺も助言する。
三人目の鈴木は、光球よりも戦闘技術に興味を示していた。
「魔法も大切だけど、剣術も練習したいです」
鈴木が要望を述べる。
「もちろん、両方とも大切です」
神宮寺が理解を示す。
「今度、剣術も教えてあげるよ」
田中が申し出る。
四人目の高橋は、自分の得意分野が分からずに困っていた。
「何も得意なことがないんです」
高橋が不安そうに言う。
「大丈夫。最初は誰でも同じです」
俺は自分の経験を話す。
「僕も最初は、何も分からなかった」
過去を振り返る。
「でも、いろいろなことを試しているうちに、だんだん分かってきます」
遥が励ます。
五人目の伊藤は、探索者への憧れが強く、熱心に質問していた。
「ダンジョンって、本当に危険なんですか?」
伊藤が真剣に尋ねる。
「確かに危険だけど、正しい知識と技術があれば大丈夫です」
神宮寺が説明する。
「それに、仲間と協力することが一番大切です」
田中が協力の重要性を強調する。
「みんなで支え合いながら、一歩ずつ成長していきましょう」
俺は新入生たちに向かって言う。
***
指導係の活動を通じて、俺は教えることの難しさと楽しさを知った。
「教えるって、思った以上に大変だね」
遥が感想を述べる。
「確かに。でも、新入生たちの成長を見るのは嬉しいよ」
田中が満足そうに言う。
「自分たちも、教えることで理解が深まっている気がする」
神宮寺が気づきを語る。
「そうだね。人に教えることで、自分の知識も整理される」
俺も同感する。
「みんな、それぞれの個性があって面白いよね」
遥が新入生たちの特徴を評価する。
「山田は火系統の魔法に才能があるし、佐藤は回復魔法への適性がありそうだ」
田中が分析する。
「鈴木は戦闘技術への情熱があるし、高橋は慎重で観察力がある」
神宮寺が続ける。
「伊藤は探索者への憧れが強くて、向上心がある」
俺は五人の新入生の特徴を整理する。
「それぞれの良さを伸ばしてあげたいね」
遥が願いを込めて言う。
「俺たちも、一年前は先輩に助けられて成長した」
田中が感謝の気持ちを表す。
「今度は、俺たちが後輩を支える番だ」
神宮寺が決意を語る。
「そうだね。責任を持って、みんなの成長を支えよう」
俺は仲間たちと共に、新たな役割への決意を固める。
***
指導係の活動が始まって一週間、俺たちは新入生との関係を深めていた。
「先輩、質問があります」
高橋が俺に近づいてくる。
「何でも聞いて」
俺は優しく答える。
「どうしたら、先輩方のように強くなれるんですか?」
高橋が真剣に尋ねる。
「特別な秘訣があるわけじゃないよ」
俺は正直に答える。
「毎日の練習と、仲間との協力が一番大切だと思う」
経験を基に説明する。
「それに、失敗を恐れずに挑戦することも重要です」
続ける。
「私も、もっと頑張ります」
高橋が決意を込めて言う。
「でも、無理をしないでね。一歩ずつ進んでいけばいいから」
俺は彼女を励ます。
「ありがとうございます」
高橋が感謝の気持ちを表す。
このような交流を通じて、俺は先輩としての役割を実感していた。
***
二年生になって一か月が経った頃、俺は新入生指導の経験を通じて多くのことを学んでいた。
「教えることで、自分の理解も深まった」
一人で振り返る。
「新入生たちの成長を見るのは、本当に嬉しい」
彼らの頑張りを思い出す。
「でも、まだまだ学ぶことがたくさんある」
自分の未熟さも感じる。
「二年生として、もっと成長しないと」
決意を新たにする。
指導係の活動は、俺にとって新たな挑戦だった。
しかし、その挑戦を通じて、俺は確実に成長していた。
教えることの責任と喜びを知り、後輩の成長を支える充実感を味わっていた。
「これからも、みんなと一緒に頑張っていこう」
俺は新たな学年での目標を心に刻む。
二年生への階段を一歩ずつ上りながら、俺は探索者としても人間としても成長し続けていた。