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創碧の吟遊詩人  作者: 奈取 葉
第一章
7/25

夏の夢-7

 祭り当日までの二日間はあっという間だった。そわそわしっぱなしで何かをしていないと落ちつかなく、いつもなら夏休みの終わり頃になってようやくとりかかる宿題を半分以上も片づけてしまったほどだ。


 勇人、セレスタ、依茉の三人とは現地で集合することになっているのだが、今までにない緊張感で気後れしてしまい、集合時間ぎりぎりに支度をし始め、家を出たのは太陽がすっぽりと地平線にのみ込まれた後のことだった。


 現地に着くとすでに人があふれており、探すのに時間がかかった。


「ちょっと和葉、なんか言うことがあるんじゃない?」


 みんなと合流して開口一番、そんなセリフを吐いたのは依茉だった。確かに遅れてきたが、改めてそう言われると申し訳ない気持ちになる。


「みんなごめん、遅れた」


「そうじゃなくて、ほら」


 依茉がにぃっと笑みを浮かべながらセレスタの肩に手を置き、ぐいっと前に押し出した。一方のセレスタは頭にはてなを浮かべている。


 依茉が意図することは大体分かった。袖を揺らしながら見せつけている浴衣のことだろう。セレスタは青いアジサイ柄をあしらったもので依茉は金魚柄の浴衣を着ていた。珍しくはあるがこの長い付き合いで何度か見たことがあったで特段触れなかったのだが。


「えーと……、その浴衣すごく似合ってるよ」


「うん、ありがとう」


 俺は次に出すべき言葉が思い浮かばず目を背けてしまう。


「おい、ちょっと」

 勇人が女性陣と反対の方を向くように俺の肩に手を回してきた。


「おいおいやるきあるのか? もっと積極的にいかないと失った信頼は返って来ないぞ」

「そ、そうなのか」


 積極的に行くことと信頼を取り戻すことがイコールなのかよく分からなかったが、こうやって茶々を入れてくれるのは今の状況ではとてもありがたかった。


 それに俺は少しほっとしていた。セレスタとの間にはやはり気まずい雰囲気があるものの、セレスタからは努めていつも通りで接しようとする姿勢が見られたからだ。だから、なにかきっかけさえあればすぐに打ち解けられる気がした。


「ねえみんなお腹すかない? なんか買って食べようよ」


 気を利かせたように依茉がそう提案し、何も知らないセレスタは「それじゃあたこ焼きたべたい!」と目を輝かせる。俺もそこら中から漂ってくる屋台飯の匂いに食欲が刺激され、セレスタの意見に賛同する。そうして屋台巡り合が始まるかと思いきや、

「よし、それじゃあ一興として何かで勝負して負けた奴が全員分の飯を奢ることにしよう」


「どうしてそうなるんだよ」


「えー、いいじゃない。私は乗ったわ」



「確かにただ食べるだけじゃ面白味がないかもね」

 どこまでもエンタメ重視な勇人の提案は意外にも乗り気な女性陣の賛成によってそれは決行されることとなった。


 早速それっぽい店がないかと賑わう群衆の中を散策してみると、案外競技性がありそうなものは多くあった。


 輪投げや型抜きが候補に挙げられたが、依茉の強い要望で最終的に選ばれたのは射的だった。取った賞品が一番少ない人が奢るというルールに決まり、俺たちは射的屋に向かった。


 活気のいいおじさんに迎えられ、ちょうど四丁空いていたので一列に並び銃とコルクを受けとる。

 景品の種類は豊富でお菓子やオモチャ、誰も知らないような戦隊モノのフィギュアなどが立ち並んでいた。


 コルクを銃口に詰め、じっくり狙いを定める。手頃そうな小さいお菓子の箱を狙って打つが、少し動くだけで、落ちる気配がない。一発、また一発と虚しくコルクの弾だけが落ちていく。結局、絶望的なセンスを発揮し、一つも落とすことなく弾が無くなってしまった。


「あー、全然だめだー」

 セレスタも苦戦しているらしく、隣で侘しい声を上げていた。


 すると突然歓声が上がった。

「嬢ちゃん何もんだ!?」


 賞賛の言葉を浴びていたのは依茉だった。


 どうやったらそんなことが可能なのか、大きいくまのぬいぐるみや、大容量のお菓子、最新のゲーム機を落としていた。


「依茉にそんな才能があっただなんて」


「ふふ、私に勝負を挑んだ時点で私の勝ちは決まっていたのよ」


 こいつ、得意なのを黙ってこの勝負を提案していたのか。結局、勇人もセレスタも一つ二つお菓子を落としていて。一つも落とせなかった俺が飯を奢ることになった。


 こうしてる間にも河川敷にはだんだんと人が増えており、祭りは最高潮の賑わいをみせていた。そんなタイミングを見計らったかのように、大きな音とともに夜空が煌めいた。それと同時に皆が空を見上げる。


 大勢の感嘆の声が四方八方から重なり合い、会場に響き渡る。この祭りの花火はなんだかんだ毎年見ているが、何度見ても飽きることがない。


「俺たちで適当に買ってくるから、和葉とセレスタは見やすい場所でも探して待っててくれ」


「あ、私もいくよ」


「いいから、いいから」


 依茉がセレスタを止め、俺に小声で「しっかりね」と耳打ちし、ウインクまで残して勇人と行ってしまった。


 俺とセレスタは顔を見合わせて、とりあえず河川敷の方へと歩み始めた。その間にも豪快な音を立てて花火が次々と上がり、その度に顔を上げ二人して見入ってしまう。そうしているとセレスタとのわだかまりも花火と一緒に夜空へと消えていっている気がした。


 ふと、セレスタを横目で見ると、一瞬にして心を鷲掴みにされたように目が離せなくなった。夢中で夜空を見上げる彼女の瞳は、花火の鮮やかな色が入り交って、まるで千紫万紅の花を一か所に集めたかのように輝いていた。


 セレスタが「どうしたの?」とこちらに顔をやった。


「いっ、いや……」


 咄嗟に目をそらし、行き場のなくした視線をさまよわせ、結局空に戻す。何をやっているんだと自分に活を入れ、少しの時間を決意を固めるために費やす。そして真っ赤な花火が咲いたのを合図に俺はセレスタの手を取って走り出した。


「ほら、いくぞ!」

「わっ、ちょっと!」

「もっと川の方に近づいた方が見やすいだろ!」


 セレスタの手を引き人混みをかき分けながら進んでいく。花火は川の向こう側で上がっているのでその手前の河川敷が一番眺めのいいスポットのはずだ。


 そうして走ること数分。


「はぁ、はぁ……、そんなに走らなくてもいいのに」


「ご、ごめん。つい」


 二人して膝に手をついて息を整える。不意にセレスタが「ふふふっ」と笑い、俺はなんだか気はずかしくなった。


 彼女の様子を見るにもう怒ってはいなさそうだった。祭りへ誘ったのは大正解だったようだ。


 ただ、このままなんとなくで仲直りしてしまうのも違う気がした。きちんと謝って関係を元に戻すには今が絶好のチャンスだと思い、俺は頭を下げた。


「セレスタごめん! 俺、本当にバカだったよな。セレスタの気持ちも考えないであんなこと言って。その……、死にたかったなんて」


「ううん、私の方こそごめん。私が本当に怒ってたのは私自身になの」


 俺は耳を疑った。その言葉の意味を理解することができなかった。だってあの出来事の非は百パーセント俺の方にあるのだから。


「ずっと和葉が和音さんのことで思い悩んでることは分かってた。もしかしたら和音さんの後を追おうとしてるんじゃないかって心のどこかで思うこともあった。でも、私が和葉の傍にいれば和音さんが亡くなる前みたいに笑ってくれるってそう思ってた。だけど、あの時にはっきりと分かった。私はずっと和葉の隣にいながら、なにもしてあげられてなかったんだって。そう思ったらすごく悲しくて腹立たしくなって、和葉に当たってしまった」


「どうして……、むしろ俺はセレスタに恨まれても文句は言えない立場なんだ。どうしてそこまで俺を気にかけるんだ。そんなことをしてもらう資格なんてこれっぽっちもないのに」


「ううん、違うの。恨まれることなんて一つもないんだよ。私には分かるから、和音さんがどんな思いでその身を犠牲にして和葉を守ったか。いや、きっと犠牲になるなんて考えすらなかったんだと思う。それだけ和葉を愛してたのを知ってるから。絶対に自分の分まで幸せに生きて欲しいって思ってるのが分かるから」


 それを聞いた瞬間に世界が反転したかのような衝撃を受けた。俺はずっとその言葉を待ち望んでたような気さえした。


「俺は……、俺は……!」


 バカだ。みんなあれは不幸な事故だったって俺を責めることはなかった。けれど、時間が経つにつれて、自分が自分を責め始めた。


 そうせずにはいられなかった。周りは悲しみに暮れていた。だから俺は自分がのうのうと生きているのが許せなかった。幸せになるのが怖かった。そう思う方が楽だったから。


 けれど、それは独りよがりで自分勝手な考えで、ただ不幸を周りに振りまいているだけだった。姉さんがそんなこと望んでないって自分の中だけではどうしても信じることができなかったから。


「誰かが落ち込んでるとき、和音さんがくせみたいによくやってたこと覚えてる?」


 そう言ってセレスタは両手を俺の背中に回して抱きしめた。不意の出来事にどうすればいいか分からずたじろいでしまう。


「こうやって、ぎゅっと抱きしめてくれて、そしたら魔法みたいに不安がすっと無くなるの」


 それは寸分違わず、姉さんの抱きしめ方と同じだった。いつのまにか涙がこぼれていた。幸せに恐怖する退屈を愛する虫はもう自分の中から消え去っていた。


「さっきどうして和葉のことをそんなに気にかけるのかって聞いたでしょ? それはね、私が和葉にずっと助けられてきたからだよ」


「え?」


「ほら、私って小学校に入ったばかりの頃、見た目が違うからってよくいじめられてたでしょ。そんな時に初めて和葉が止めに入ってくれたの覚えてる? いつも泣いてる私にそんなんだからいじめられんだよって。それからいじめられる度に『あんなやつらのこと気にすんな』って言って私の手を引いてくれたよね」


「あれはいじめてる奴らが気に食わなかっただけだ」


「それでもね、私すごく感謝してるの。それまで学校が大嫌いで毎朝家から出るのが怖くて、毎晩明日が来なければいいのにって願ってた。でも和葉と出会ってからは和葉に話しかけられますようにって願うようになった。和葉に会えると思ったら学校も悪くないってそう思えた。和葉と仲が良くなる度に学校に行くのが苦じゃなくなって、気づいたら私も明るくなれて、勇人や依茉とも友達になれた。それからは学校生活がすっごく楽しかった」


 明るく彩られた夜空が川に映って幻想的に輝いている。そしてその輝きに負けないほど綺麗な、濃淡の折り重なった深い琥珀の瞳が俺の目をしっかりと捉えた。


「それでね……、気づいたら和葉を好きなってた」


 あまりにも予想外なその発言で言葉を失くしてしまった。花火が上がる間のその一瞬の静寂がひどく長いものに感じた。


「和葉は私のこと、どう思ってるの?」


「ど、どうって……俺は」


 鼓動が速まる。熱くなった頭で必死にその答えを探るが、すぐに見つかるはずもなかった。これは退屈を愛する虫によってずっと阻害され、目を背けていた問題なのだ。


「お、俺は――」


 その時、突然「きゃあー!!」と誰かの甲高い叫び声が聞こえた。それを皮切りに、周囲がざわめき立ち、川とは反対側にいる人達が悲鳴を上げながら何かから逃れるように散っていく。


「なんだ?」


 異常事態を前に、その原因が現れるのをただただ見守ることしかできない。セレスタが俺の傍へ身を寄せ、ごくりと固唾をのむ。


 やがて屋台の照明に照らされ、明瞭に姿を現したそれに俺は驚愕の声を上げた。


「ねえ、なんなのあれ」

「あ、あいつは……」


 俺は確かにそいつを知っていた。しかし、何者であるかは全く検討がつかなかった。なにせ今まで何かの見間違いだと思っていたからだ。


 いつかの日にか見た全身が灰色の人型。二メートルほどある体はマネキンのようにのっぺりとしていて、顔にぽつんとついた金色の目は不気味な輝きを放っている。灰を散らすように輪郭を揺らめかせる姿はまさに化け物という言葉がぴったりの異様な存在。


 そいつはゆっくりとこちらに近づいてきており、その眼光からは明らかな敵意が漏れ出していた。


 真っ白になった頭の中で黒い恐怖が蠢いて、脳が停止する。しかし、今取るべき最善の行動を体が、本能が教えてくれている。ここで取れる選択肢はたった一つ。それは――


 俺はセレスタの手を取り、地面を蹴って走り出した。と同時、後ろから何かが爆ぜるような轟音が聞こえた。


「なッ!!」


 あまりに非現実的な光景に、なにが起こったのかすぐには理解できなかった。さっきまで遠く後ろにいた化け物が一瞬にして目の前に降り立ったのだ。化け物は驚異的な跳躍で一瞬にして十メートル以上もの距離を詰めてきたことになる。


 その圧倒的な身体能力を前に、人がどうあがいても太刀打ちできない存在であることを理解する。そして生と死が色濃く認識される希少な緊迫感が体を駆け巡った。


 化け物は逃げ道を塞ぐように立ち、神経を鈍らせるような低い雄たけびを上げた。本能が警鐘を鳴らし、この化け物が俺たちの命の狙っているのだと察する。


 一体何が起きているというんだ。たった数秒で蹂躙された常識を、脳が虚構として認識しはじめるが、理性と反発し合い、やがて吐き気となって排出される。


 相対して戦うという選択肢はなかった。素早くきびすを返して、セレスタの手は決して離さないよう全力で逃げる。


 後ろを振り返ると、化け物は他の物には一切興味を示さずに、俺たちに向かってゆっくり歩いてきているのが見えた。


「どうして私たちが狙われてるの!?」


「分からないけど今は逃げるしか!」 


 道路に出る道が見えこのまま行けばまけると思った時、思わず足を止めてしまった。そこには後ろから迫る脅威に匹敵するほどの悪夢のような光景があった。


 そこにいたのは全身を灰色に染め金色の目をした大きな狼のような四足獣。威嚇するように震わせる口から覗くのは獲物の命を刈り取るように発達した鋭い牙。一度捕らえられれば致命傷は免れないだろう。そんな恐ろしい獣が五匹の群れをなし俺たちの行く手を阻んでいた。


「くそっ!」


 どう考えても素直に通してくれるとは思えない。俺たちは横道にそれて屋台が立ち並ぶ方へと走り出す。それに反応して四足獣も一斉にスタートをきるように猛追してきた。


 奴らの速さは獣そのものでこちらの全力を遥かに上回っており、すぐ後ろまで迫られる。


「こっちだ!」


 俺は足を滑らせながら急転回し、屋台の角を曲がる。凄まじい衝撃音が響き、振り返ると曲がり切れなかった獣たちが屋台の鉄板を吹き飛ばしテントに大穴を開けていた。


 とにかく障害物を利用してかき回してまくしかない。


 そのまま屋台を縫うように駆け抜けるが、やつらは屋台の食べ物や景品、机や椅子にいたるまで道にある物をお構いなしに蹴散らしながら突進してくる。


 俺たちになんの恨みがあるってんだ! 体力も限界を迎え始めるが足を止めることは許されない。なにかが破れ、壊れ、潰される音が背後から迫ってくる。


 そして脚がもつれて減速したとき、

 「ッ!!」


 悶絶するほどの痛みが襲い、派手にその場に倒れ込んだ。


 振り返ると獣の化け物が左の太ももに噛みつき、恐ろしい表情でこちらを睨みつけていた。肉が貫かれ、剝がされる狂気じみた苦痛。


「ぐあぁぁぁ!」


「和葉!」


 セレスタが慌てて引き返そうとするが、

「逃げろ……セレスタ! 俺はもうだめだ!」


 セレスタは聞く耳を持たず、噛んで離さない四足獣の顔目掛けて、つくように足蹴りを食らわす。


 一発ではびくともせず、二発、三発、四発目で獣の目にめり込むようにヒットし、キャフンと怯んでようやく離れる。


 セレスタは担ぐように俺の腕を肩に回し、俺はなんとか立ちあがることができた。しかし、もう手遅れだった。四足獣は獲物を追い詰めるハイエナのように俺たちを包囲し、徐々にその輪を縮めていく。


 逃げ場はない絶対絶命の状況。そこへさらなる絶望の気配が漂う。暗闇から現れたのは異形の人型。超人的な力を見せたさっきの化け物だ。


 ゆっくりとこちらへ歩き、獣たちは従者のように俺たちへ続く道を開ける。人型の鋭い金眼が邪険にこちらを見据えている。その化け物はおもむろに腕を胸まで上げた。事が起こるまではほんの一瞬だった。

人型が手刀を放った瞬間、俺はセレスタに突き飛ばされていた。血飛沫が眼前で散り、俺は訳も分からず尻もちをつく。咄嗟に顔を上げると、力なく倒れ込むセレスタの姿があった。俺は飛ぶように腕を伸ばして受け止める。


 生温かく、ぬるりとした感触が手のひらに広がり、それが何か分かった瞬間に過去にいやというほど味わった膝から崩れ落ちるような感情が一気に噴き出した。


 「セレスタ! おい、嘘だよな……」


 何度も名前を呼ぶが、返事がない。


 脇腹が抉れており、出血がひどい。このままじゃ命が危ない。


「くそくそくそ! 今救急車を呼ぶから、それまで耐えてくれ……!」


 手を当ててなんとか血を抑えようとするが漏れ出る血潮は無情にも次々とこぼれ落ちていく。


「かず、は……」

「セレスタ!」


 まだ意識があることにつかの間の安堵を覚えるが、セレスタのかすれた声がさらに焦りを加速させ、震える瞳がもう長くないことを訴えている。


「和葉だけでも逃げて……お願い」


「そんなことできるわけないだろ! そうやってお前はいつもいつも人のことばっかり!」


暴力的なまでに理不尽な状況に神を呪い、行き場のない思いは怒りへと転換される。


「お前らいったいなんなんだよ!!」


 俺の怒号も虚しく、なお化け物は俺たちに死をもたらそうと無機質に近づいてくる。

 ふと、セレスタが俺の手を取った。


「私は和葉に何度も救われてきた……、だから今度こそ私が……」


「こんな時に何を言ってるんだよ」


 セレスタは震える手で前髪に着けた髪留めを手に取った。


「何してるんだよ! 今はそんな物どうでもいいだろ!」


 セレスタは目を細め、微笑んだ。そして必死に口を動かして何かを伝えようとしてくるが、声になっていなく聞き取れない。


「もういい、喋らないでくれ! すぐ救急車を呼ぶから。すぐ病院に行けば、絶対助かるから」


 その時、セレスタの手の中に納まる髪留めが光を放っていることに気づいた。

「何だよ、これ……」


 それは目も開けられないほどの力強な光を放ち、目を眩ませた。


「くっ……! セレスタっ!」


 咄嗟に手を伸ばすがそれよりも速く世界が光で包みこまれていく。体が急降下していくような感覚を覚えると同時、光が完全に視界を白く染め上げていった。

ここまで読んでくださりありがとうございます! これで日常編?は終了になります。 ブックマークや評価で応援していただけるとモチベーションに繋がりますのでぜひお願いします!

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