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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第2章 大聖堂
23/27

お楽しみ

 

「あのスラ! まるで生き物みたいだったなあ」 


 あれからマシュアは、騎士団の演武のことばかり話していた。

 

 

 

(鍛錬すれば、あんな風になれるんだろうか…)

 

 アリフはそんなことをずっと思っていた。

 

 

 

「な、アリフ。アリフってば! ん?どうしたんだ? その顔のひっかき傷」


「ああ……ちょっとな」


 木を降りる時に、鳥の巣があって、その鳥にやられた。

 


「なんだっけ。ああ、騎士団のことな」

 

「違うよ。聖香祭のことだってば。もうすぐだろ」

 

「え」

 

 

 


 聖香祭。

 

 ワーフの聖堂で浄化の香が焚かれる、毎年恒例の行事だ。

 人々は香炉を持って聖堂へ赴き、香を分けてもらい家に持ち帰る。




「ああ、お菓子とか、店がタダで出すものがあるんだよな」


「うん。街からその分、金が出るらしいよ」


「そうなのか。太っ腹だな」


「大聖堂前の広場にも、露店が並ぶよ」


「へえ」


「その日は、ナリドやナリダたちも、広場に出ていいんだよ」


「ほんとか! 」



 ミリアおばさんが生きてたころ、聖香祭に連れて行ってもらったっけ。

 美味しいお菓子をたくさん食べた。


  

 ミツヤシペーストとナッツをナクリ粉の生地でくるんで焼き上げたマ-ムル。

 

 ココナッツパウダーやヨーグルト入りのパイ生地を、スパイス入りのシロップに漬けたバスブス。



(どれも甘くて、いい香りだ——)




 スパイスをたっぷり入れたパンケーキに、こってりしたミツヤシシロップを挟んだシェバーブ。

 

 サクサク生地に、ナッツとスパイスを挟み、ねっとりした蜜に浸したナクラーヴ。



 ……それから、俺のお気に入り。

 

 外はカリッと、中はふわっとした食感の、スパイスと糖蜜がたっぷりかかった揚げ団子のルガマット。

 

 

 

(ああ~、考えるだけで腹が減ってくる)

 

 

 

「聖香祭、いつだっけ? 」

  

「来週の日曜日だよ」

 

「そっか。楽しみだな。もう俺、今日は早めに寝る」


「アリフ。早く寝ても、聖香祭は早まらないよ」

 

 


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