質屋街で
「旦那。こりゃおもちゃだ。値はつけられないね」
質屋の主人は、ネックレスをジャラジャラ鳴らせながら言った。
「そうか。残念だ」
サッドは返されたネックレスを懐にしまった。
「…ところで、どんなものでも買い取る質屋があるって聞いたんだが、知ってるか? 」
「ああ…」
主人は、眉をひそめた。
「あるにはあるがね。どんなもの、ってのはアレだよ。
要するに、いわくつきのものでも、ってことだよ」
「いわくつき? 」
「……出どころの知れないものだよ」
(盗品……あるいは遺跡物か)
「あんまり近寄らねえほうがいいよ」
主人はボソッとつぶやいた。
「そうか、邪魔したな」
サッドは店を出た。
外はもう暗くなり始めていた。
例の質屋には、すでに足を運んでいた。
店は、昼間は閉まっていて、どうやら夜しかやっていないようだった。
日が暮れるころに出向き、店の扉を叩いた。
ドアの小窓から確認され、扉は開かれた。
サッドは、さっきの質屋にも持っていったこのガラクタを出した。
「これは、おもちゃですな。とても値はつけられません」
小柄で、眼光の鋭い店主が言った。
……アリフが言ってた通りの奴だ。
「そうか。ちょっとでも金になればと思ったが…。
どんなものでも買い取ってもらえると聞いてきたんだがな」
ため息まじりに、サッドはそう呟いてみた。
「どんなものでも買い取りますよ。
もちろん、価値あるものであれば、です」
店主は穏やかな笑みを浮かべた。
……その穏やかさが、かえって不気味だった。
サッドは質屋の評判を探って回った。
どこも、似たような話ばかりだった。
「いわくつきの品」
「近寄らないほうがいい」
(穏やかじゃないな……)
行き場のない子どもを、大聖堂へ連れていった。
そんな話もいくつか出てきた。
そう、アリフの時のように……。
(子どもを大聖堂に連れていって……何の得がある? )
後ろ暗いことをしている罪滅ぼしか?
それとも、ただの善行?
……だが、そうとは思えない何かがある。
そんな気がしてならなかった。
(俺だけの力じゃ無理かもしれない…)
そう思いながら、サッドはもう暗くなった質屋街をうろついていた。
——話し声だ。
ボソボソと何か聞こえる。
サッドは音を立てないようにして、声のほうへ近づいていった。
「……用意は…」
「もちろん……。……聖香祭の…」
「……伝えてある…」
(聖香祭……? )
耳を澄ませていると、ふっと静かになった。
(いなくなったのか)
あたりを伺いながら、そっと横道を覗き込んだ。
——!
……あっ、と思うまもなかった。
頭に鈍い衝撃が走った。
そのまま、意識が途切れた。




