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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第2章 大聖堂
22/27

質屋街で




「旦那。こりゃおもちゃだ。値はつけられないね」


 質屋の主人は、ネックレスをジャラジャラ鳴らせながら言った。



 

「そうか。残念だ」


 サッドは返されたネックレスを懐にしまった。



 

「…ところで、どんなものでも買い取る質屋があるって聞いたんだが、知ってるか? 」

 

 


「ああ…」

 

 主人は、眉をひそめた。



「あるにはあるがね。どんなもの、ってのはアレだよ。

 要するに、いわくつきのものでも、ってことだよ」

  

 

「いわくつき? 」

 

 

「……出どころの知れないものだよ」

 

 

 

(盗品……あるいは遺跡物か)

 

 

 

「あんまり近寄らねえほうがいいよ」

 

 主人はボソッとつぶやいた。

 


 

「そうか、邪魔したな」

 

 

 サッドは店を出た。

 外はもう暗くなり始めていた。

 

 

 

 例の質屋には、すでに足を運んでいた。

 店は、昼間は閉まっていて、どうやら夜しかやっていないようだった。

 

 

 日が暮れるころに出向き、店の扉を叩いた。

 ドアの小窓から確認され、扉は開かれた。

 

 サッドは、さっきの質屋にも持っていったこのガラクタを出した。

 

 

 

「これは、おもちゃですな。とても値はつけられません」

 

 小柄で、眼光の鋭い店主が言った。

 

 ……アリフが言ってた通りの奴だ。




「そうか。ちょっとでも金になればと思ったが…。

 どんなものでも買い取ってもらえると聞いてきたんだがな」

 

 ため息まじりに、サッドはそう呟いてみた。

 


  

「どんなものでも買い取りますよ。

 もちろん、価値あるものであれば、です」

 

 店主は穏やかな笑みを浮かべた。


 

 ……その穏やかさが、かえって不気味だった。




 

 サッドは質屋の評判を探って回った。

 どこも、似たような話ばかりだった。


「いわくつきの品」

「近寄らないほうがいい」



(穏やかじゃないな……) 


 

 

 行き場のない子どもを、大聖堂へ連れていった。


 そんな話もいくつか出てきた。

 そう、アリフの時のように……。



(子どもを大聖堂に連れていって……何の得がある? )  


 後ろ暗いことをしている罪滅ぼしか?




 それとも、ただの善行?

 

 ……だが、そうとは思えない何かがある。

 そんな気がしてならなかった。


  

 

(俺だけの力じゃ無理かもしれない…)

 

 

 そう思いながら、サッドはもう暗くなった質屋街をうろついていた。



 ——話し声だ。

 

 ボソボソと何か聞こえる。

 サッドは音を立てないようにして、声のほうへ近づいていった。

   

 

 

「……用意は…」

 

「もちろん……。……聖香祭の…」

 

「……伝えてある…」

 

 

 

(聖香祭……? )



 耳を澄ませていると、ふっと静かになった。



(いなくなったのか)

 

 あたりを伺いながら、そっと横道を覗き込んだ。

 

 

 ——!


 ……あっ、と思うまもなかった。



 頭に鈍い衝撃が走った。

 そのまま、意識が途切れた。

 

 


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