キタムの話
「キタムも、騎士団員の稽古、受けるんだろ」
「一応ね。運動は苦手だけど、全員参加することになってるから」
本に興味のあるアリフは、図書館でよく会うキタムと話をするようになった。
キタムはアリフより少し年上だった。
サリーフと気が合いそうだな、とアリフは思った。
そういえば、あいつらどうしてるだろうか。
「騎士団、って、空飛ぶラクダに乗ってくるんだってな」
「うん。アリフは、空飛ぶラクダのことは知ってる? 」
「ああ、もちろん。空の商人も使ってるやつだろ。
王家や貴族、騎士団しか使えないやつだろ」
「うん。空飛ぶラクダはパギリングって呼ばれてるよ。
遺伝じゃなくて突然変異で生まれるんだ」
「パギリング? 変な名前だな」
「ギンアカージャの葉しか食べないから、草食のクモにちなんだ名前なんだ」
「へえ。ギンアカージャしか食べないって、偏食だな」
「でも今、ギンアカージャがあちこちで枯れてしまう現象が起きてて、パギリングのエサの確保が大変なんだ」
「え、なんで枯れてんの? 」
「原因はわからないけど、気候変化のせいじゃないかって言われてる」
「エサがなきゃ、そのラクダ、どうなるんだ? 」
「死んじゃうよね。ほかのものを食べないか探してるみたいだし、栄養素を直接体に入れるような研究もされてるらしい」
「腹減ったら、つらいよな…。何か、可笑しいか? 」
「ごめん。だって君が、まるでラクダを人間みたいに言うから」
「動物だって同じだろ。腹減ったら生きていけない」
「確かに、そうだよね」
「でも、空飛ぶラクダなんて、なんか楽しみだな」
「うん。騎士団が来ると、パギリングも人気だよ。
乗せてもらいたがるナリドやナリダがたくさんいる」
「そうだろうなあ、俺も乗ってみてーな。キタムは乗ったことあるのか? 」
「いや、僕は、ないよ」
「ふうん。そういや、騎士団が来る日は、この図書館はいつもみたいに開いてるのかな」
「いや。図書館は閉められてるよ。ナギやナダたちは騎士団のもてなしとかもあるし。
騎士団が来てたら、図書館に来るやつなんていないだろ。」
「そっか、そうだよな」
稽古の脱出先にしようと思ってたけど、無理か。
「アリフ、どうかした? 」
「なんでもない」




