マシュアの話
「まだ痛むか? 」
1週間くらいたったころ、マシュアがアリフに尋ねた。
「大分良くなった。けどまだあちこち…」
アリフはあれから、武術の練習場には近づかないようにしていた。
「アシュバルもラビサも、何年も騎士団をめざして稽古してきてるんだから、強いのは当然だよ」
「ラビサ、って誰」
「アシュバルと同じくらい強いナリダだよ。アシュバルとスラを打ち合ってただろ」
「そうだっけ」
「騎士団は数か月に一回、聖堂に来て稽古をつけるんだ。
見込みがあれば、目をつけてもらえる」
「へえ」
「僕も騎士団に入りたいんだ。
騎士団の人たちって本当に格好いいんだよなあ」
「ふーん、そうか。頑張れよ」
「アリフも、騎士団が来たら、稽古を受けるんだよ」
「え、俺はいいよ」
「そうはいかないよ。騎士団が来た時には、全員何かしらの稽古をつけてもらうことになってるんだ。だからその日は一日、授業がないよ」
「えっ! 」
授業がないだって!
「じゃ、じゃあ、その日は勉強、なんにもしないのか⁉」
「ああ。朝、騎士団が来るから、午前中、稽古をつけてもらって。
午後は自主練習で、それを騎士団の人たちが見てまわる、って感じ」
「そうか……」
「でも全員、騎士団の稽古を受けるんだってば。聞いてる?」
「稽古はどこでするんだ? 」
「いつもの中庭だよ」
外か。
……逃げやすい。
「そっか。ありがとな、マシュア」
何がありがとうなのか、マシュアにはよく分からなかった。
その日から、どうやって稽古を抜け出すか考え始めた。




