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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第2章 大聖堂
16/18

稽古

 



 アリフは昼食を終え、まだ腐った気持ちを抱えたまま回廊をぶらついていた。

 すると、中庭のほうから、賑やかな声が聞こえてきた。

  

 中庭には、何十人かのナリドやナリダたちがいた。

 かけ声をかけながら、型通りに動いたり、互いに組んで組み手をしたりしていた。

  


 

「何やってんだろ…」

   

「おい、アリフ」

 

「マシュア。お前もいたのか。みんな、何やってんだ? 」

  

「武術の稽古だよ。アリフもやらないか? 」

 


 

(……おもしろそうだな)


 

 ケンカなら、クワディームで何度もやってきた。


 

 


「やるよ」

 

  アリフは、稽古に加わった。

 


「最初は型を覚えるんだ。僕の真似をして」

 

 マシュアの言うとおりに、動きを真似た。


 


 構えてから、前足を大きく踏み込む。

 と同時に、腕を突き出す。

 

 そのまま前足を軸に、体を反転させ、また構える。

 

 

 アリフは体を反転させるたびに、ぐらついてばかりいた。

 

 


「これを何度もくり返してるうちに、体が安定してくる。

 そしたら、相手と組んで組み手をするんだ。こんな風に」

 

 

 マシュアがアリフの前に向き直り、構えた。

 アリフもマシュアの真似をして構えた。 

 

 

「さっき1人でやったみたいに、踏み込んで突いてきて」

 

 

 言われた通り、足を一歩踏み込んで、腕を突き出した。

  

 手首を打たれ、体勢が崩れる。

 気づけば、突きは空を切っていた

 

  

 それを何度もくり返した。


  


 

 

 ……つまんねえ。

 



 アリフの気がそれた。



 ふと、音に気づいた。


 カンッ、カンッ……と、細長い棒を突き合わせている。


   

 片方が棒をぶんと振りおろすと、もう片方がカンッと受ける。

 受けたと思ったらくるりと棒を回し、反対側で反撃した。

 

 

 

(カッコいい……! )

 

  

「なあ、マシュア。俺も、あれ、やりたい」

 

「ああ、スラだね。カッコいいよね」

 

「スラ? 」 

 

「あの棒のことだよ。スラは、型と組手がある程度できるようになってからだよ。

 僕もまだ、少ししかしたことない」


「えー。そうなのか」

 

「今、スラを打ち合ってるのはアシュバルとラビサ。

 彼らはもう6,7年、武術をやってるんだって」 

 

「でも、やりたい」

 

「まだ無理だってば」

 

  

「そこ、どうした?」

 

 スラの稽古をしていたアシュバルが、声をかけてきた。

 

 


「お前、見ない顔だな。新しく入ったのか」

 

 

「あ、はい。アリフです。1か月くらい前にナリドになりました。

 さっき稽古に誘ったんです」


 アリフの代わりに、マシュアが答えた。


  

「そうか。俺はアシュバル。ナリドになって10年以上経つ」

 

「10年…」

 

 アリフがつぶやいた。

 

 

「小さい頃にナリドになったからな。もうすぐ騎士団に入る予定だ」 

 

 



 大聖堂でナリドやナリダになって学んだ者たちの、将来は様々だ。

 

 アシュバルのように武術に精を出して、騎士団に入る者もいる。

 聖職につく者もいるし、聖堂に残ってナギやナダを目指す者もいる。

 

 聖堂や騎士団とは全く別の、商人や農業を選んだりもする。

 

 

 

 

「俺も、そのスラ、やりたい、んですけど……」

 

 

 アリフが唐突に言ったので、アシュバルは目を丸くした。

 マシュアは、あ、という顔をした。

 

 

 

「……お前、さっき稽古を始めたばかりだろう。スラはまだ無理だ」

 

「でも、やりたい。やってみたい」

 

 

 アシュバルは、はあ、と息をついた。

 

 

 

「あのな、スラを扱うには、まず自分の身体をしっかりと扱えるようにならないと。

 自分の体も思うように扱えないうちは、スラだって扱えるようにはならない。

 かえって危険だ。怪我するぞ」

 

 

 するとアリフは、アシュバルが持っていたスラをさっと奪い取った。

 

 

「なっ…! 」

  

 一瞬の隙だった。


 

 

 アリフはにっと笑い、アシュバルに向かってスラを構えた。

 


(仕方ない……)


 アシュバルはアリフに向きなおり、素手で構えた。

 

 

 

「怪我しても文句言うなよ。来い」

 

「スラは? 」

 

「必要ないだろう」

 

「ふーん。いいんだな」

 

 

 素手で構えたアシュバルに、アリフはスラを振り上げ、向かっていった。

 

 

 

 

 ……結果は聞くまでもない。

 

 アリフはしたたかに打ちのめされた。




 アシュバルは武器を持っていないのに強かった。

 アリフの攻撃をひらりとかわし、気づけばスラを奪い取っていた。

 

 さらにはそのスラで、あちこち突かれ、叩かれた。

 気づけば地面に転がっていた。

 

 

 そのあと数日、アリフの体はあちこち筋肉痛で悲鳴をあげた。

 打たれた痛みと、使い慣れない筋肉のせいだ。


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