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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第1章 オアシスの街ワーフ
12/22

見知らぬ朝



 カンッ、カンッ、カンッ、…

 

 

 ——なんだ……? うるさい。

 

 アリフはまどろみの中で、ぼんやりとそう思った。

 

  

 が、周りの騒がしい様子にハッと目が覚めた。


 沢山のベッドが並ぶ、大きな部屋にいた。

 大勢の男の子たちがベッドから起き上がろうとしていた。

 

  

 ……ここ、どこだっけ?

 

 


 あ、そうだ。

 昨夜、質屋の店主に大聖堂に連れてこられたんだっけ。

  

 ぼんやりした頭で、昨日のことをぽつぽつと思い出していく。

 男の子がひとり、話しかけてきた。

 

 

  

「お前、新入りか? 」

 

「…いや、俺は…」

 

「早く行こうぜ。ナギたちが、うるさいからな」

 

「行くって、どこへ…」

 

 見ると、男の子たちは、次々と部屋の外へと出ていく。

 アリフも、声をかけてくれた子の後ろをついて、部屋を出ていった。

  


「一緒にやるか? 」

 

 「何を?」と聞く間もなく、雑巾を渡された。

 

 

 周りの子たちもそれぞれ、あちこち掃いたり拭いたりと、掃除をしている。 

 アリフも仕方なく、適当に柱を拭いた。 

  

 

(こんなに子どもがいるのか)

  

  

 明るくなって見えた大聖堂の敷地は、思った以上に広かった。

 いくつかの建物と回廊、そしてそれに囲まれた庭。


 それらの場所を、子どもたちが散らばって掃除していた。 

 ナギやほかの僧たちも、一緒に掃除したり、子どもたちに指示したりしていた。

 

 

 

(これ、いつまでやってりゃいいんだろう)

 

 とアリフが思いはじめたころ、

 

 

 

 カンッ、カンッ、カンッ、…

 

 

 さっきの、何かを叩くような音が、また聞こえた。

 

 

 

 すると子どもたちは一斉に掃除をやめて、掃除用具を片付け始めた。

 アリフはさっきの子に雑巾を取られた。

 ぼーっとしていると、その子がアリフに言った。

 

 

「ついてこいよ。今度はメシだぞ」

 

 

 メシと聞いて、アリフは素直にその子についていった。

 


 子どもたちがあちこちから、集まってきた。

 目指すべき場所へと向かって行く。

 

 食堂。

 大聖堂の裏側の、生活棟の建物のなかにある。

 

 子どもたちは器とスプーンをひとつずつ取る。

 そして給仕係から器にスープを注いでもらい、パンをもらい、席に座る。 

 

 スープには野菜の切れ端が少々浮いているだけだ。

 パンも握りしめた拳より少し小さいくらい。

 

 だが、アリフは目を輝かせた。

 

  

(粥じゃなくてパンを食べられるなんて、いつぶりだろう)

 

 

 前の子についてテーブルにつくと、アリフはさっそくパンにかぶりついた。

 


 

「あっ! ダメだよ!」 

 

 その声に、周りの子たちが一斉にアリフを見た。

 ナギたちのテーブルからも、視線が注がれた。

 

 

 

(おや、あの子は…? )

 

 ひとりの視線が、アリフに止まった。


 

 ——ダールだった。


  

 

「食べるのは、祈りを捧げてからだよ」

 

 さっきの子がコソリと言いながら、アリフの口からパンをむしり取った。

 

  

 確かに、食べ物をもらってテーブルについたものの、誰もまだ食べてない。

 


「ふーん。そうなのか」

 

 

 言いながらアリフは、こちらをジロジロ見てコソコソ笑っている子たちを、ギロッとにらみつけた。

 



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