見知らぬ朝
カンッ、カンッ、カンッ、…
——なんだ……? うるさい。
アリフはまどろみの中で、ぼんやりとそう思った。
が、周りの騒がしい様子にハッと目が覚めた。
沢山のベッドが並ぶ、大きな部屋にいた。
大勢の男の子たちがベッドから起き上がろうとしていた。
……ここ、どこだっけ?
あ、そうだ。
昨夜、質屋の店主に大聖堂に連れてこられたんだっけ。
ぼんやりした頭で、昨日のことをぽつぽつと思い出していく。
男の子がひとり、話しかけてきた。
「お前、新入りか? 」
「…いや、俺は…」
「早く行こうぜ。ナギたちが、うるさいからな」
「行くって、どこへ…」
見ると、男の子たちは、次々と部屋の外へと出ていく。
アリフも、声をかけてくれた子の後ろをついて、部屋を出ていった。
「一緒にやるか? 」
「何を?」と聞く間もなく、雑巾を渡された。
周りの子たちもそれぞれ、あちこち掃いたり拭いたりと、掃除をしている。
アリフも仕方なく、適当に柱を拭いた。
(こんなに子どもがいるのか)
明るくなって見えた大聖堂の敷地は、思った以上に広かった。
いくつかの建物と回廊、そしてそれに囲まれた庭。
それらの場所を、子どもたちが散らばって掃除していた。
ナギやほかの僧たちも、一緒に掃除したり、子どもたちに指示したりしていた。
(これ、いつまでやってりゃいいんだろう)
とアリフが思いはじめたころ、
カンッ、カンッ、カンッ、…
さっきの、何かを叩くような音が、また聞こえた。
すると子どもたちは一斉に掃除をやめて、掃除用具を片付け始めた。
アリフはさっきの子に雑巾を取られた。
ぼーっとしていると、その子がアリフに言った。
「ついてこいよ。今度はメシだぞ」
メシと聞いて、アリフは素直にその子についていった。
子どもたちがあちこちから、集まってきた。
目指すべき場所へと向かって行く。
食堂。
大聖堂の裏側の、生活棟の建物のなかにある。
子どもたちは器とスプーンをひとつずつ取る。
そして給仕係から器にスープを注いでもらい、パンをもらい、席に座る。
スープには野菜の切れ端が少々浮いているだけだ。
パンも握りしめた拳より少し小さいくらい。
だが、アリフは目を輝かせた。
(粥じゃなくてパンを食べられるなんて、いつぶりだろう)
前の子についてテーブルにつくと、アリフはさっそくパンにかぶりついた。
「あっ! ダメだよ!」
その声に、周りの子たちが一斉にアリフを見た。
ナギたちのテーブルからも、視線が注がれた。
(おや、あの子は…? )
ひとりの視線が、アリフに止まった。
——ダールだった。
「食べるのは、祈りを捧げてからだよ」
さっきの子がコソリと言いながら、アリフの口からパンをむしり取った。
確かに、食べ物をもらってテーブルについたものの、誰もまだ食べてない。
「ふーん。そうなのか」
言いながらアリフは、こちらをジロジロ見てコソコソ笑っている子たちを、ギロッとにらみつけた。




