第2の異常者
「異常性癖者ってこだわり強すぎる奴が多いんです」
広げられた写真を見比べて分かることは二つ。
一つ目、先に殺されている三人はきちんと手足を切り取られだるま状態になっているが、四人目は腕だけ切り取られただけの状態。
こだわりの強いマッド・ドッグがこのように中途半端で投げ出すことは大変珍しい。
二つ目。凶器を使い慣れていない。
犯人の傾向から見て、同一犯なら四人とも同じ凶器と方法で手足を切り取られているはず。しかし、四人目の犯行のみ切り方がやけに雑な事が写真を見て読み取れた。これは四人目の犯人が普段使い慣れていない凶器を使ったからだ。
つまり、犯人のマッド・ドックは三人目まで独自ルール通りに犯行を行っていた。しかし、四人目を殺した犯人はその独自ルールに従っていない為、この事件だけは別の人間が犯人である。
と、言うことらしい。
「おいおい、容疑者が二人ってか?」
「まあ、あくまで模倣犯の犯行かもって話ですよ」
写真しか見ていないですからね。
相楽に説明した戌亥は、勝手に事務所にあったマグカップを使い、コーヒーを入れて飲んでいた。
コーヒーに落としていた瞳は、何処かつまらなさそうにしているように感じた。
根拠も何も無い推理ではあるが、相楽を驚かせるのに十分過ぎる答えをたたき出したようで、相楽は今までの被害者の事や現場の地図を事務所にあったホワイトボードに描き始めた。
戌亥は、それを黙ってじっと見つめる。
「悪いが写真とオレの説明だけで、分かることがあったら教えて欲しい」
「…オレで良いんですね?分かりました。話してください」
内容はこうだ。
被害者は女性三名、男性一名。
共通点らしきものはなく、無差別かと思われているが、奇妙な点がいくつかある。
その内の一つは、殺された女性達と男性の発見場所が違いすぎるということだ。
女性達は全員外で遺体が見つかっていることに対し、男性は自宅で遺体が発見されたらしい。
すると、今まで黙ってホワイトボードを見ていた戌亥がため息をついてソファーに寄りかかった。
その顔には珍しく、呆れという表情を浮かべて。
「オレ、警察ってほんときらーい!これを同一犯にしちゃうところとか無能にも程がありますよ!」
「無能って…。何がわかったの?」
「え、星華さん分からないんですか?狂犬使いですよね?」
ストレートにバカにされた。
私は対マッド・ドックには使える力を持っているだけで、推理や捜査といった事がからっきしダメなのだ。
だから、今みたいに戌亥からバカにされる事も多々ある。
腹は立つが、私も言い返せる程口も達者ではない為いつも泣き寝入りなのだ。
戌亥にバカにされた私がプルプル震えているのを気づかないようにか戌亥は相楽へ向き直してあることを提案した。
「相楽さん。今から言うことをYESかNOで判断してください」
「…分かる範囲なら」