5話 [ようせい]
イキーダ大公国の狙いはエルフの伝説の秘薬と吸血鬼の血液だった。
アルテシアを救出するのが困難だと諦めしか無いと顔が見え隠れした時、満を持して緋焔狐のヨーコは宣言する。
魔の森の神、吸血鬼である旦那様がいるのだと!
「なんの問題もないのです。
旦那様がいるというのに無謀にも暗躍したモノがいたとしてもその計画事、潰してしまえば良いのです。
現に旦那様の活躍によりエルフ国の滅亡は免れたのですから。
それに旦那様は元来、他の追随を──又、エルフとの───ですから慈愛に溢れた、いえ今も衰えず溢れて───」
早口気味に尚、続く吸血鬼様の自慢や、どのように凄いかの話が止まらないのでエルフ王ブルックスは娘のアンジェリークとアリスを席に座るように指示するとノックして入って来た赤と白のパンダと外から窓から見える黄色のビーバーに会釈をする。
彼らは各々、壁や窓を修復し出した。
「イキーダの思惑なのか、それとも別の黒幕がいるとしてもエルフは吸血鬼様の作戦に参加させて頂く所存です。
それでよいなアンジェリーク。」
「おじ様が動くと言うのなら依存は‥‥無い‥‥‥です。」
姉、アンジェリークの言葉にアリスは違和感を覚える。
「アンジェリーク姉様?
吸血鬼様を、ご存知なのですか!?」
「んが?
あっ、ああ。
昔からの知り合いだ。」
アンジェリークは話に納得がいっていないのか少し手短に話して終わられせてしまう。
或いは彼女の性格からなのか上手く伝えるのが下手なのも有るかもしれない。
それを見兼ねてか毎回の事だと言わんばかりに弟アーロンが笑顔で不足情報を付け足す。
「アリスは知らなかったみたいだね。
姉様や僕は長女、長男だからね。
習わしと次代の顔繋ぎの意味でも幼少の頃から、御世話になる時期があるんだ。
次男・次女までは行われるけど、それ以降は行われていないんだ。
だからこれは兄姉には内緒だよ!」
「そっ、そうだったのですか!?
ごめんなさい。
お手数を掛けてしまいました。」
その後、王家だけで少し話たりしている内にヨーコの解説も終わり吸血鬼が欠伸をした所でヨーコはクチを閉じて、やりきった表情と高揚で厭らしく下品な顔で満足げにしていた。
その時だった。
ヨーコの左隣、吸血鬼の後ろの左側に突然、透明から徐々に妖艶で妙齢の女性が姿を現す。
「相変わらずね。
火の粉ヨーコちゃん♡」
いきなり現れた彼女にアンジェリーク達は臨戦態勢に入ろうとする。
だが吸血鬼が片手を上げて待てと合図したためブルックス達は留まる。
「くっ!?
バース、何でアンタが!?」
「ふふん。
エルフ王家の皆さん、初めまして。
私は吸血鬼様の配下の1つ、妖精族・雪精霊のバース・デイーでございます。」
エルフ達の自己紹介が完了するとバースはヨーコに向き直る。
「久しぶり。
でも配下の者が主人を置いてきぼりにするのは宜しくないわ。
それに、あの厭らし~い顔を晒すのはどうかと思うわ
火の粉族の名折れだもの♡」
「なっ、何ですって!?
火の粉、火の粉って私は緋焔狐のヨーコって何時も言ってるでしょ~~が!!!
って言うか何のようよ。
ビックリした……なんて事は無いけどお客様に失礼でしょうが!!」
「あら?
今月から妖獣族から妖精族へ当番交換でしょ?
正確には昨日からね♡
それなのに引き継ぎの場所に待てど暮らせど来ないモノだから私自ら来てあげたのよ。
そうしたら旦那様が貴女の暴走に御困りだと連絡がきたから急行したのよ。
でも確かに先程は突然の登場、失礼しました」
バースの謝罪を受けてブルックスもエルフを代表して問題ないと答える。
「ご寛大な対応、恐れ入ります。
それでは業務に入らせて頂きます。
次女アルテシア様についてですが──」
「ちょ、ちょっと私はどうすれば良いのよ!?」
「あら?
言ったでしょ?
今月から私達妖精の担当よ。
火の粉ちゃんはサッサと寝倉で、おねんねしなさい。
なんてね。
今回は非常事態だから妖精族と妖獣族の合同でコトに当たるようにって旦那様が仰せよ。
旦那様の慈悲に感謝しなさい。」
「えっ、ありがとうございます‥‥‥‥‥‥‥‥‥って、何よ。
アンタの意見だったの!
礼は言わないんだからね。
ってか何すればいいのよ」
「あら、秘書は私だし火の粉ちゃんは第二秘書、いいえ補佐かしら?」
「はあ!?」
「そうね、でも真面目な話、妖精族と妖獣族の合流作戦の場合、妖獣族の音頭や指示系統は貴女になるから旦那様のお手伝い以外は普段と変わらず動きなさい、分かった?」
「何よ年上ぶっちゃって、何時までもお姉さん気取りで指図して~~~~ふん!」
そっぽを向いて、これまでの完璧な秘書像から素を露見した事に数分後に気付き赤面するのは御愛嬌だ。
「ふふ。
続けさせて頂きます。
アルテシア様、拉致事件の猶予期限1週間ですが待つ必要はありません。
イキーダ大公国到着の間際ないしは到着直後に急襲を仕掛けます。
タイムリミットは、もう2日と残っていません。」
「「「なに!?」」」
「ですので、そのためエルフの皆様はこのまま待機して頂きます。」
「それは!?
エルフ族には役不足と言いたいのか!?」
アンジェリークの噛み付きにバースは微笑むだけで答えない。
「娘の失言を謝罪する。
しかし吸血鬼様ばかりに頼ってばからになのも事実。
そこにこれ又、苦労を掛けてしまうのは祖先に、吸血鬼様にも、申し訳だけで無くエルフの魂に傷を負い子孫に正しく誇れる魂であれない」
「そうですね。
少しお待ち下さい」
エルフ達の言う、魂にキズが付く。
正しく誇れる魂とは。
エルフ族の習慣と感性で人間等で言う所の祖霊や死語の霊魂に近い。
彼等エルフは死んだ者の遺体を森に埋め森や森に棲む動物に食べてもらう事で還す埋葬方法を取る。
森や動物の糧になる事で自然の1つ、エネルギー循環で世界の住人である事、魂が自然界で巡っている考えを持つ。
そのため祖先と子孫に恥じる行為は魂を誇れない傷を負うと死後の魂が不破を起こすとバースに言っていたと、そして彼等の感情的にも納得出来ないのでは?っと吸血鬼はテレパシーで教えていた。
「分かりました。
なら数名のみを随伴を許可しましょう。
それ以上は足手まといに成りましょう。
失礼な物言いを御許し下さい。
あくまでも今作戦はアルテシア様救出ですから。
急務を迅速に解決する必要があるのです
それと言葉足らずでした。
現在稼働中の救命班に加わるか救出班とは別の復興班に参加下さい。
‥‥それで救出班には…………。」
バースに自分だっと目で訴えるアンジェリークに根負けしたのかバースはアンジェリークの名をクチにする。
跳び跳ねて喜ぶアンジェリークにアリスは椅子に座り背筋を伸ばしながら右手を真っ直ぐと上げる。
「私も救出班に入れて下さいッ!!」
バースでも無く、ヨーコでも無ければ父ブルックスでも無い。
吸血鬼の目を見詰めて勇気を振り絞ってノーバ達を思うと、そう叫んでいた。