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4話 [しまい]

2024年7/25、ミニ動物達を追加しました。

 父と兄と、そして母であり女王のアンナ=ゼア=ウッドとの再開に家族の有り難みを再確認したアリスだったが第二王女にして姉、アルテシアがイキーダ大公国に拐われた事を知るも、そこに第一王女のアンジェリークが豪快に登場すると大声でアリスを呼んだ。

リビングで大声がする度、大きな音やテーブルをドンッと叩くと給仕係のミニ動物達は怯えて紅茶を溢したりコップを落としたりして片付けにも追われいた。

それを手伝う吸血鬼は笑顔だった。


 勢いよく窓は破壊して、そのまま室内に入って来ようとするアンジェリークの姿は余りにも王族としても女性としてもどうかと行動に眉を(ひそ)める両親(かぞく)を他所にアンジェリーク自身は五女であるアリスと抱擁で喜びを分かち合う。

アンジェリークとの再開に嬉し涙を流していたアリスをアンジェリークは強引に退けるとアリスに語りだす。

余韻も、へったくれも無い姉にアリスは、たった数日しか離れていなかったのに数十年ぶりのような懐かしさを感じて余計に込み上げてしてしまうもアンジェリークはアリスの頭にチョップを軽く、お見舞いした。


「よいか?

よく聞け、人間の国は新技術を(もち)いて我らに勝てると喧嘩を仕掛けて来やがった。

真夜中だの卑怯だの何だと難癖を付けようとも吸血鬼………ん…う、…様のお蔭で、一命を取り留めたと言ってもだ。

しかしだ!

しかし我らが遅れを取り負けた事に変わりはない!

だが今こそ、此方から打って出てやるのだ。

アリス、必ずアルテシアの奴を救い出すぞ!!」


「はいっ!!」


「良い返事だ、いくぞ!

オウ!!

もっと大きく、腹から声をだせ!

もっとだ!!」

 アンジェリークとアイスの良く言えば武人、悪く言えば脳筋のような会話に吸血鬼の秘書であるヨーコは待ったを掛ける。


「お待ち下さい。

早急にコトには移れません。

不可解な動きも気になります。

それに進軍するにも兵も気力も足りません。」


「そんな惰弱でどうする。

アルテシアを救命する事こそが1番の奴の奴で奴だろう!!」


「アンジェリーク、物事はそう簡単ではないのだ。

他国の介入が予想される、それは何故か?

以前のイキーダ大公国には無い、いやこの世界に無かった技術だ。

そう易々と開発出来るとは思えん。

これを与えイキーダに野心を植え付けたモノがいるのか?

それともイキーダ自らの手で完成させたのか?

では何故エルフを狙ったのか?

アルテシアを殺しもせず拐ったのか?

そして我らに 〝返して欲しくば伝説の秘薬と森の神の血を寄越せ〟 などと言ってきたのか?

上に立つ者として、これ以上犠牲は許されん。

動くのなら慎重にせねば成らんのだ」

 父、ブルックスの言葉にアンジェリークは頭を掻いて難しい顔をした。


「訳が分からん!

ならば奴等を出し抜いて今、叩いてやれば良いのではないか父様?」

 上を向いたり横を向いたりして考えてみたが苦手な事に直面したら諦めて行動に出そうとするも、その考えは母アンナに止められてしまう。


「アンジェリカ、頭を使う事を放棄してはいけません。

戦場では貴女はその直感で助かってきたからと行って、それが続く訳でも、何処でも通用する訳でもないのだから。

考えねば成らない事は考えないといけないのです。

先送りも横にも置けないのです。

幸いとは変ですが1週間は待ってやると偉そうに言ってきたのですから。

それと貴女を納得される言い訳としては今、追ってもイキーダはまだ国に距離的に到着していません。」


「え?

ではソコを奪還すれば良いのではありませんか?」

 率直にアリスが意見を述べるが兄、アーロンは悲観的な表情でアリスに告げる。


「コトはそう簡単ではないよ。」


「そうだ、流石だアリス!!

なに!?

アーロン、何故だ??」


「上手くいけば良いが、失敗すれば移動中の経路の他国やその民に被害が起これば国際問題に成りかねん。

それに人質だと言う事も忘れてはいけない。

奴等が何を仕出かすかぐらい、予想が付くだろう。」

 アーロンに変わって答えたブルックスは更に続きを、一層に顔を強ばらせながらクチにする。


「イキーダの要求する〝伝説の秘薬〟も〝吸血鬼様の血〟も、渡す事が出来んのだからな」


「何故だ!

父様!!

何故に渡してやらん、自分の娘が可愛くないのか!!!」

 アンジェリークの叫びにブルックスは机に両肘を当てながら静かに答えた。


「アンジェリーク、我らエルフに伝説の秘薬が有るか?

今まで生きてきて聞いた事があるか?」

 父の言わんとしている事を理解してアンジェリークは壁を叩き、窪みを作る。

その事にヨーコは驚くもアンジェリークの開けた穴に彼女を睨む。

居心地の悪い中、アリスはもう1つの吸血鬼様の血について聞くことにする。


「あの、それでは吸血鬼の血は?」


「それについても解決しておる。

ヨーコ殿、話してやってください。」


「畏まりました。

森の神と呼ばれているのは十中八九

旦那様つまり吸血鬼の血の事です。

しかし旦那様の血には何の効力も効果も無いのです。

体内から放出した直後の一滴だとしても旦那様の強力なチカラを帯びています。

が、時間経過と伴に失われます。

仮に魔法的な要因で完璧に、その際の苦労を度外視して防いだとしても、使用しよとした瞬間には離散したように唯の水と同じの血でしか無くなってしまうのです。」


「で、でもっ!!」


「既に実験済みだ。」


「そんな、」


「それに吸血鬼様にチカラが失われないようにして貰ったが、その場合とても運べる物でも兵器としての運用も不可能だった。」


「もう良いですね?」

 母の言葉にアリスはえ?っと首を傾げた。


「最悪の場合、エルフ全体を守るためにアルテシアには、そのための生け贄になってもらいます」


「なっ、何を言う!!

母様ぁぁぁぁぁあ!!!」

 抜剣してアンナにアンジェリークは詰め寄った。


「それも視野に入れなければ成らないのです、良いですか?

私達はエルフ全体の代表、王族なのです。

多を国民を生かすためには個を、娘を犠牲にする事も選らばなければならないと言っているのです!」

 素手で剣を掴み血を滴らせるアンナにアンジェリークも引かない。


巫山戯(ふざけ)るなぁ!

それが母親の言う、言っていい言葉かあ!!」

 激昂するアンジェリークの背の服を優しく掴んで止めたのはアリスだった。


『これらの事を両親達は知っていたから、あんなにも悲しい顔をしていたのだろうか?

私が目を覚まして顔を出した時、心の底から喜んでくれたのはこのためなのだろうか?

母が私が泣いているから手を離さなかった、その訳はアルテシア姉様の事があったからなのだろうか?』

 そう考えたら、その考えを分かっていながら抗おうとしている姉を止めたくて、羨ましくて、でも辛くて堪らなく嫌で、そっと腕を伸ばしていた。


「アンジェリーク姉様、(わたくし)達は今も生きてる皆に。

死なせてしまった皆に。

見守ってくれてる祖先に、

そしてこれから生まれてくる皆に恥じないように情けない涙を、泣かずに笑顔で暮らしてく、生きていく義務が、責任があるの、‥‥‥あります。

ですから、だから、だから…………。」


「だから?

だからアルテシアを見捨てろと言うのか、それに頷けと言っているのか?

私の妹を、お前の姉を!!」

 言った(そば)から又、頬を濡らしながら根拠も言い分も、なにも無い反論をしようとしてヨーコが手を叩いた。


「こっほん。

失礼、何もアルテシア様を生け贄にエルフ族繁栄が約束されたわけでも、この案を決定した訳でもありませんよ。

仮にそうしたとしてもトランプ国に偽装したイキーダ大公国との戦争は終わりませんから」


「ではどうすると言うのだ?」


「ですから、それをを伝えるための場が今回の話し合いを設けた理由でございます。」


「はぁ?

何を意味の分からん事を!!!」


「これまでのは事実確認と情報の擦り合わせに過ぎません

良いですか?

ここにいるのは誰ですか?」

 アンジェリークは答えようとしてヨーコは間髪入れずに続きクチにした。

先程、壁を殴られた事に対する、ちょっとした仕返しだ。


「遅いですよ。

エルフの国王?

違います。

エルフの王族?、エルフの民?

全てハズレです。

正解は、…………ペンペケポーン!

吸血鬼様、そう旦那様です!!!!」

 真剣な顔付きから何とも間抜けな効果音を手にヒラヒラと吸血鬼様を紹介するヨーコに本人である吸血鬼は今度は自分が頭を抑える番になるのだった。


「擬音が変だ。」

 ボソッと告げられた吸血鬼は此処に来て始めて小さく喋った事をアリスは思い出していた。

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