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気づけば、エキシトの視野の中に突然くりくりの青い目が映りこんで来た。至近距離に驚き、一歩後ずさる。
「エキシト様。私は小さな領家の次女です。どうして東の代表になれたのかなんて、私には分かりかねることですが、選ばれたのならば全力で、そのお気持ちに応えたいと思うのです」
「俺の気持ちは、変わらないかもしれないぞ」
「構いません。もし、本当にエキシト様が無理だと思うのでしたら、西国へ戻られても口出しいたしませんわ」
ほわほわとした笑顔のまま、強い言葉を放つレクリエールが、ちょっとだけ大人に見えた。背丈が低いだけであって、年は重ねているのだろう。エキシトは初めてそう感じた。
「私は、エキシト様と出会えてよかったと思っております。その紅の瞳は、とても美しく。穢れを知らない輝きをしていますわ。きっと、器であるエキシト様が、清らかな方だからだと思います」
エキシトはかぶりを振った。エキシトにとって、この目はコンプレックスのひとつ。異端児として気味悪がられることも多々あった。それが美しいと? そんな言葉、易々と信じることは出来なかった。素直に受け入れることは出来ず、内心で尖った感情が沸々と湧いて来た。そのとき背後から、
「レクリエール様、エキシト様。お風呂の準備が整いました」
執事が頃合いを見計らったかのように言葉をかけてきた。クーパーも、寝間着を決めたのか。エキシトとレクリエールの会話を盗み聞きしていたのか。会話に区切りがついたところで、居間へと戻って来た。
「エキシト様。このボーダーのシャツはどうですかな。ゆったりしていて、寝間着には丁度いいと思うのですが」
「あぁ。貸してもらえると助かる」
「靴も、革靴では窮屈でしょう? 明日、街で調達してくるといいでしょう。レクリエール、案内して差し上げなさい」
「えぇ、お父様。喜んで」
「……」
エキシトはクーパーから寝間着を受け取った。ふんわりとハーブの香りがした。これは、ラベンダーか。
「安眠できますようにと、オイルを塗っておきました。匂い、きつくはないですかな?」
「あぁ、問題ない」
「それはよかった。さぁ、冷めないうちにお風呂へどうぞ。それとも、シャワーの方がよければ、それでも構いませんので」
「クーパー殿が先に入られては? 家主ではないか」
「言ったでしょう? 今日はエキシト様は客人です。おもてなしをさせてください」
強く言われ、エキシトはそれに従った方がよいのかと頷くと、執事からタオルを受け取った。そのまま、執事に風呂場を案内される。居間を抜けて左手側の通路を進んでくと、さらに左手側に風呂場があった。木製の扉を内側に開くと、まずは脱衣所があり、その奥にガラス製の引き戸があった。そこにシャワースペースと湯船がある。
西国にも湯船はあるが、東国の方がゆったりとした広さだった。長く浸かる文化があるのかもしれない。




