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多分、きっと、止められない

昨日の夕飯時、大和と下らないことで喧嘩した。

彼はあとでこっそり謝りにきたけど、私が膨れっ面のままシカトするから、逆ギレして部屋に戻って行った。


お互い意地っ張りで頑固。


目も合わせないまま、翌朝別々に家を出る。こんなにムカムカしているのは、きっと大和が女の子と歩いていたという母親の言葉があったからだ。自分がこれほど焼きもちやきだなんて、知らなかった。嫌になる。






教室に入って、ナツメや唯と挨拶をしたあと、目の前で怖い顔した橘が私を待っていた。何事。


「お前昨日俺様のメール無視しただろ」


は?あんた王様?と私は返す。メールなんて読んだ覚えない。


「知らないよ」


「とぼけんな!ちゃんと送ったっつーの。確認してみろよ」


「えー」


半信半疑で携帯を開く。メールボックスには、確かに橘からのメールがあった。しかも、開封済み。


「なにこれ、私読んでない!」


「知らねーよ。それよりちゃんと俺の宿題もやってきたんだろーな」


「何で私がそんなこと。やってないよ、あんたの分まで」


「はぁあ?てめえ勝手に持って帰っといてなんだそれ。キレそう。まじキレそう」


「あーもう!はい、返す」


無理矢理橘の手にノートを押し付け!私は自分の席に逃げた。と言っても隣の席だから逃げられないんだけど。



でも、どうして橘からのメールが開かれていたんだろう。

もう一度確認すると、時間は昨日の夜中3時過ぎ。


そういえば、私は大和の部屋に携帯を置きっぱなしにしていた。気付いて取りに行ったのは大和が寝てしまったあとだ。


まさか……大和が?

でも、それしか考えられない。あのガキ。帰ったらシメてやる。







昼休み。私はいつもの友達みんなで教室でお弁当を食べていた。

ちょうど橘率いる男子達が食堂から帰って来たとき、合わせたように一人の女の子が勢いよく入ってきた。


「すみません橘くん、いますか」


うーわ、顔ちっちゃ。目おっき。かわい。まさに美少女という言葉がピッタリの女の子がおどおどとしている。

多分、一年生か二年生だろう。こんな可愛い子、同じ学年にいたらすぐに噂になってるはずだ。


クラスは一瞬静まり返ったけど、気付いた橘本人がその子を連れて何も言わずに教室を出たことで、ちょっとしたざわめきが起こった。


「今の子、確か女子バスケ部の1年だよ」


「えー、橘くんとどういう関係?ねぇ、水香」


「さぁ、知らないよ」


好き勝手に話し出すみんな。

私はそれだけ言って玉子焼きを口に入れた。

関係ないし。でも、何でだろう。さっきの橘、少し怒ったような表情してた。気のせいかな……。

考えていると、みんなが面白そうにこちらを見てくる。

どうやら、あの橘バカによる偽告白騒動以来、私た橘の関係が疑われている。大迷惑だばかやろー。


「なに……?私には関係ないんだけど」


「またまたー!気になってるくせに」


「追いかけて見てきてあげようか?」


「ごめん、ほんと興味ない」



本気でそう言ったのに、誰も信じてくれなかった。











「俺の彼女のふりをしてほしい」


「なにこれデジャブ?」


さっさと帰ってメールのことで大和を問い詰めようと思っていた帰りのホームルーム終了後、橘に真剣な顔して話がある、なんて言われたからついて行くと、誰もいない用務室の階段前で唐突にそう言われた。


私は鞄を肩にかけ直し、溜め息混じりに答える。


「それはもういいって、この前言ってたじゃん……」


橘は、罰が悪そうに俯くと、ブレザーのネクタイを少しだけゆるめる。


「ちょっと、状況が変わって……」


「状況ねぇ」


「一日だけでいいんだけど」


「やだ」


じゃあ、と冷たく言って帰ろうとした。

きっと、他の女の子なら喜んで引き受けるんだろうけど、本性を知ってる私は冗談じゃないと思う。

だって、橘って、なに考えてるか読めない。


背中を向けた私に、橘が余裕たっぷりに言う。


「俺がなにを知ってるか忘れたわけじゃねーよな」


「……最低。この前は謝ってきたくせに」


思わず振り向いてしまった。先ほどとはうって変わって不適な笑みを浮かべた橘が、腕を組んでいる。

どんだけ性格悪いの、こいつ。


「だから、状況が変わっつってんだろ」


「え、それが人にものを頼む態度ですか」


「いや、命令」


「バカ。死ね」


「中城、俺本気だぜ」


「……」


「お前のことは嫌いじゃねーし、恨みもないけど、もし弟と付き合ってることがバレたらって考えてみろよ」


もし、バレたら……

橘の思惑通り、最悪の事態が頭を過った。

親は泣くだろう。一緒には暮らせない。家族も壊れる。友達だって、どんな反応するか……。


「一日だけでいいからさ」


そう言って橘は、にやりと笑った。








多分、きっと、止められない

(悪魔って本当にいるんだ)



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