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かけがえのない


クラブハウスで大和が私を引っ張った時、驚いたのと同時に安心した。


大和が路上で無理矢理キスをしてきた時、熱くなる胸の奥とは裏腹に、どこか冷静にそれを受け止めている自分がいた。まるで、こうなることを知ってたみたいに。






どちらからともなく、私達は近くのラブホテルに入った。

クリスマスだから満室かと思ったけど、一部屋だけ空いていた。それが良かったのかは分からない。


部屋に入るや否や、大和は私のバッグを床に放り投げ、強く抱き締めてから夢中でキスをする。私もそれに応えた。全てが一瞬だった。


ベッドに倒れ込み、大和が私の上に覆い被さる。暗がりの中で見る彼の瞳が微かに揺れた。


しばらくその体勢のままお互い見つめ合う。

私の顔の横に両手をついたまま、大和は低い声で放った。



「後悔しない?」


「……したとしても、今じゃない」



その意味が大和に伝わったのかは分からない。何もかもかき消すように、彼は再び唇を合わせてきた。



そう、今じゃない。

後悔するなら、もっと……こうなるもっと前から後悔するべきなんだ。


私を抱く大和の手は震えていた。

何だか彼の全て、愛しくて仕方なかった。

彼を愛したいと思った。もう嫌だと思うくらい愛したいと、そう思った。


大和に抱かれながら、高い天井を睨み付けた。

姉弟なんて、信じられない。

こんなにも、愛し合ってるのに。








気付けば枕の上のデジタル時計は、夜中の3時を指していた。

大和は目を瞑ったまま何も話さない。寝てるんだろうか。

起こさないようこっそりベッドの中から這い出て、ごそごそと自分の鞄を探る。

携帯には着信が3件。

2件はマナで、1件は太一くんだった。

マナに電話をかけるが、彼女は出なかった。



「こっち来て」



ふいに聞こえた大和の声。

振り向くと、首だけをこちらに向けた彼が、無表情で私を見つめていた。



「……寝てるのかと思った」


「こんな状況で眠れるかよ。いいから早く」



促されるままにベッドに戻る。

大和は私の手を掴むと、その胸中に引き寄せてきた。



「あったかい」


「……うん」



しばらく抱き合ったまま、時間が流れる。ぴたりと耳をつけた大和の胸から心臓の音がうるさいくらい響いた。



「もう、後戻りできないよ」


「そんなもん最初からする気ねえよ」


「よく言うよ。勝手に好きになって、勝手に突き放したくせに」


「うん。ごめん。でも、もう離さない。絶対。何があっても」



何があっても……。


その言葉が胸にのしかかった。

何もないはずないんだ。このまま一緒にいられる程、簡単じゃない。そんなに優しい世界じゃない。分かってる。分かってるけど、止められない。



セックスの最中、大和は何度も私の名前を呼んだ。まるで、私がちゃんとそこにいるのを確かめるかのように。

とても優しかった。優しすぎて、涙が出た。



―俺はお前を、姉だなんて思ったこと一度もねぇよ!―



あの時の大和の言葉が頭を巡った。

今まで大和がどんな想いで私の側にいてくれたのか、それを思うと苦しい。

溢れても溢れても足りないくらいの、大和の想いが伝わって、胸が痛んだ。



私がいるよ。

ずっといるよ。

私達はまだ子供だけど、この想いに嘘はないよ。

何があっても、離れないで。






かけがえのない不道徳

(私達、どうすれば良かった?)





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