第47話 絶望
駆け付けた俺達を見ると、スペルビアは嫌な笑みを浮かべる。
「なあ、お前らどうやってココにたどり着いたんだ? 尾行されてる気はしなかったんだが」
「コッチには我が家の癒し兼秘密兵器が居るんでね」
そう言うと、イアは胸を張った。
「花音は返してもらうぞ!」
「ハイ、どうぞ。なんて行くとでも? それにこの方もお怒りのようだしな」
スペルビアの声に答えるように、アイホートは眷属を複数召喚した。
――クソ。アイホートの雛の強化バージョンか?
「イア、花音を連れて下がっててくれ」
「ん」
「悠馬君、お兄ちゃん……。どうか気を付けて……」
奴らに何かされたのだろう、苦しそうに俺と真司を気遣う花音に俺達は笑顔で応えた。
「大丈夫だよ、花音。絶対に助けて見せるから」
「ああ。だから安心してそこで待っててくれ」
そして、再び俺達はスペルビア達の方を向く。
「真司、俺はスペルビアを倒す。あの蜘蛛野郎共を任せて良いか?」
「分かった」
「オイオイオイ、俺に勝てるとでも思ってんのか?」
「ああ。お前をぶっ倒して、ハッピーエンドだ!」
そして、俺達はそれぞれの敵と戦闘を開始した。
「ハァ!」
俺はまず、レイスラッシュ・真を発動させてスペルビアに切りかかる。
「おっと危ねえ」
「何ッ?」
しかしスペルビアはするりと剣を躱し、俺に向かって拳を振るう。
――なんだ今のは!
俺は咄嗟に剣でガードすると、横なぎに剣を振るうが再び躱されてしまった。
「このッ!」
「ホレホレ、当ててみろよ!」
「バカにしやがって!」
俺は神威を発動させ、ついでに疾風迅雷・真も使って切りかかる。
「さっきよりはマシって所だな。だが」
「ガッ!?」
スペルビアは片手で俺の剣をつかみ取る。そして、俺は何をされたのかわからないまま吹き飛ばされた。
「弱ぇ弱ぇ弱ぇ!! なんだお前、ホントにそんなんで俺に勝てるとでも思ってんのか?」
「まだだ!」
俺は少し腹を抑えながら立ち上がると、龍装を纏った。
「へえ、アウァリティアの力か。良いぜ、面白れぇじゃねえか」
「舐めるな!」
紫電一閃・シンを発動させて切りかかると、スペルビアは高速で拳を繰り出して対抗してくる。
「中々やるじゃねえか」
「そりゃどうも!」
俺はスペルビアの繰り出してきた魔法を切り裂くと、爆炎の中を突っ込む。
「ハァァァ!」
「甘ぇ!」
しかし剣を振りかぶってスペルビアに繰り出そうとした途端、俺は腹部を横なぎに蹴られて吹っ飛ぶ。
俺は即座に体勢を立て直すと、ミラージュデコイを発動させた。
「これで!」
俺は分身の間から切りかかり、暫くはスペルビアを押していると思われたが……。
「ハン、面白い事するじゃねえか。だけどなァ」
俺が分身の間から飛び出し切りかかった瞬間、スペルビアに首を掴まれた。
「グッ!?」
俺は首からスペルビアの手を引きはがそうと藻搔くが、段々と首が締まって行き息が出来なくなっていた。
「このまま絞め殺してやるよ」
――クソ……。
その時だった。
「チッ」
スペルビアは、突如として飛んできた魔弾を防ぐために俺を放り投げた。
「ゲホッ、ゴホッ!?」
「無事かい!? 悠馬!」
「あ、ああ。助かった」
どうやらアイホートの雛を片付け終えたらしい。真司は咳込んでいる俺の傍に駆け寄ってくる。
「まだやれるかい? 悠馬」
「ああ、大丈夫だ。まだ行ける」
俺は剣を支えに立ち上がると真司にそう答える。
「ハン、雑魚が一匹から二匹に増えた所で何が出来るってんだ!」
そう言って突っ込んでくるスペルビアを尻目に、俺は真司へ声を掛けた。
「いつも通り行くぞ! 真司!」
「分かった! 僕たちの連携、見せつけてやろう!」
まず、俺はスペルビアの攻撃を真正面から受け止める。
「このまま吹き飛ばしてやるッ! 何!?」
そうやって力を込めるスペルビアを受け流し俺が左に逸れると、真司がスペルビアに飛びかかる。
「チィ!」
「おっと! 俺を忘れて貰っちゃ困るぜ!」
真司の刀を片腕で受け止めたスペルビアに、俺は脇から襲い掛かかった。
「クッ!?」
――浅いか!?
俺の剣を受け後退したスペルビアに、俺達は畳み掛ける。
「なッ! グッ! このッ!」
反撃する暇すら与えないよう、真司とお互いに上手く立ち位置を入れ替えながら剣を繰り出していく。
「雑魚が! 調子に乗ってんじゃねえぞッ!!!」
俺達の息もつかせぬ連携攻撃に業を煮やし、スペルビアはその身に迸る魔力で無理矢理俺達を吹き飛ばす。
「真司!」
「ああ!」
俺は空中でタラリアを発動させ真司の手を掴み、そのままスペルビアの方へ投げる。
「ハァァァ!」
「何ッ!?」
スペルビアが、飛んできた真司の攻撃を防ぐために体勢を崩したその瞬間。
「行っけぇぇ!」
「アウァリティア・バースト!」
「ガッ!?」
アウァリティア・バーストを受けても満身創痍ながらも、まだ立つスペルビアに俺は最近新しく覚えた技を放った。
「跡形もなく吹き飛んじまえッ! 繧ウ繝シ繝ォ繧ェ繝悶い繝薙せ!」
何故か口に出すとおかしな音に化けてしまったが、この技の名前はコールオブアビス。イアを経由して、宇宙からエネルギーを耳障りな音と共に相手に向かって放つ技だ。その威力は絶大で、ラヴァフレイムドラゴンが一撃で跡形もなく消滅したほどである。ちなみに奥義スキルである。
虚空に裂け目が出来たかと思うと裂け目からに目が出現し、形容しがたい漆黒のエネルギーがスペルビアに襲い掛かる。
「やった……のか?」
そうしてコールオブアビスによるエネルギーの奔流が収まると、右半身が吹き飛んだスペルビアがまだ立っていた。
「ハハハ……てめえらのお陰で俺の右半身は消し炭だ。ったく……。てめえら! 豚の餌確定だぞゴラァ!!!」
そうして激昂したスペルビアを触手が伸びてきて、アイホートが取り込んだ。
「なんだ!?」
俺は嫌な予感がしてディメンジョンスラッシュ・シンを放つが、見えない壁のようなものに弾き返されてしまう。
その後、俺達は繭のようになったアイホートから発生した爆風によって吹き飛ばされる。
「グッ!?」
そして目を開けると、目に映ったのは下半身はブヨブヨとしたアイホートで上半身は黒い龍という、形容しがたい謎の生物だった。
いや、サボってた訳じゃないんです。下剤飲んだり内視鏡検査したり、誕生日パーティーでしこたま飲んだりしてただけなんです……。あれ? これって立派なサボりじゃ……。
兎も角、遅くなってすいませんでしたッ!!