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第42話  フィールドワーク

 フィールドワーク。広大な森林型ダンジョンを往復で四日以内に踏破し、その奥深くに幾つかある遺跡に設置されているそこでしか取れないイベントアイテム、試練の証を如何に早く持ってこれるかを他チーム競う、一種の試験のようなイベントだ。


 そのイベントに、俺は花音と和人の二人とチームを組んで挑んでいた。


「大丈夫か! 花音、和人!」


 俺は一太刀でゴブリンを切り捨てながら、他のゴブリンと戦闘中の二人を気にして声を掛ける。


「ああ! コッチは大丈夫だ!」


 ――花音は……。


「きゃッ!」


 俺が振り返るとライカンスロープの攻撃を防いだ拍子に弾かれ、尻餅を突く花音の姿が見えた。


「フッ!」


 ――ライカンスロープ!? いつの間に!


 花音が、襲い掛かってくるライカンスロープ相手に目をつぶったその時。俺は花音を庇うようにしてライカンスロープに立ちふさがり、ライカンスロープを真っ二つに切り裂いた。


「大丈夫か、花音」


「う、うん。ありがとう」


 俺は花音に手を貸して立ち上がらせる。


「全く。俺がゴブリン相手に四苦八苦してる間に、お前らはいちゃいちゃしてたってか?」


「いや、いちゃいちゃなんかしてねーよ。ゴブリンの襲撃に乗じてライカンスロープが花音に奇襲してたんだ。……あと花音、もうそろそろ手を放してくれないか?」


「ご、ごめん!」


 俺がそう言うと、花音は顔を真っ赤にしながら慌てて俺の手を離した。


「マジか……。後、やっぱりいちゃいちゃしてんじゃねえか。死ね、ハーレム野郎」


「うるさいわ! おーい花音さん? 黙ってないで否定してくれると助かるんですが!?」


 俺は真っ赤になって押し黙る花音に叫ぶ。


「はぁ……。とりあえず先に進もうぜ?」


 そして、俺達は再びゴール目指して先に進みだした。





「セイッ!」


「ハッ!」


「やあ!」


 俺たちが各々行く手を遮るモンスターを殲滅した後、俺は二人に声を掛ける。


「おい二人共、もうそろそろ休憩にしないか!」


 ――昼飯食いたいし。


「おう、良いんじゃないか?」


「わ、私もいいと思います!」


 そして少し開けた所で、広域フィールド型ダンジョン用結界石を使ってモンスターが来ないようにして、俺達は一息ついた。


「ふぅ……。まだ昼だってのが信じられねえな」


 そう言って地面に大の字になって寝っ転がる和人に、俺は苦笑する。


「森ってのは、歩きなれてないと直ぐに疲れるからな」


 そして、俺は背伸びしながら言う。


「ああそうだ。俺おやつにマシュマロ持ってきたから、キャンプっぽく焼きマシュマロでもしようぜ。俺、薪集めてくるからさ」


 こういう一日でダンジョン攻略が済まない時は、少量だけ普通の食材も持っていくのがセオリーだ。

 普段なら食材自体や調理道具が嵩張ってバッグの容量を気にしたり、持ち込んだ水を余計に消費しなきゃいけなかったり、俺のバッグは問題ないが食材の鮮度を気にしたり。他にも色々な問題があって出来ない。

 しかし何日間もダンジョンに滞在する時は、普通の暖かい食事で気を紛らわせストレスを緩和すると言う意味では有効な手段である。

 

 ――一日だけならカップラーメンや栄養食品だけの生活も我慢できるから、バッグの容量を優先できるけど、何日間もそれだと気が滅入るしな……。


 まあバッグの容量上、なるべく早めに消費すべきと言う難点はあるが……。


 ――人ってのは単純なもんで、初日にダンジョン内で暖かい飯食うと案外暫く持つんだよな。不思議だけど。


「それじゃあ私がお昼……」


「い、いや! お、俺がやるから! 二人は待っててくれ!」


 花音がそう提案してきたので、俺は慌てて断る。


「なんだよ、野郎の飯食うより女子に作ってもらった方が気分上がるだろ? それともなんか理由でもあんのかよ」


 ――ああそうだな、俺だって花音に作ってもらいたいさ……。メシマズじゃなければなぁ!!


 しかし、この事を口に出すわけにもいかない。花音の名誉のためでもあるが何よりも、ゲーム内でそういう描写があったからダメなんだよ! 死にたいのか! なんて説明する訳にもいかないのだ……。


「と、とりあえず俺が作る。良いな! 良いか和人、忠告しておく。絶対に俺が帰ってくるまで待ってろ」


 そうして俺は薪拾いに出かけた。





「お、薪によさそうな木ゲットー」


 結界外に出るとモンスターに襲われて薪拾いに時間を食う為、最初は結界内で木を探していたが見つからず、俺は結界の外に出ていた。


「誰だ!」


 そして、薪拾い中に会敵したコボルトとゴブリンの集団を残らず切り捨てた時。後ろから音がした。

 

「お待ちなさい、わたくし達はモンスターでは……。あら?」


 俺の後ろに居たのは、エミリーヌとそのパーティーメンバーだった。


「なんだエミリーヌか」


「それはこちらのセリフでしてよ。一人で行動している殿方が居るから声を掛けようとしたら、突然剣を向けられたのですのよ。全く。所で鈴木悠馬は一人で何を?」


「ん? ああ。昼飯を作ろうと思ってな、薪拾いしてたんだ。ちなみに仲間二人は安全地帯作ったからそこで待ってる」


「なるほど……。鈴木悠馬、わたくし達もご一緒させて頂けるかしら? 無論、食材は出しますわよ」


「おう良いぜ、あっちに安全地帯作ってあるから」


 俺は花音と和人が居る方向を指さした。


「わかりましたわ、それではまた後で」

 

 そして去っていくエミリーヌ達を見送り、俺は薪拾いを再開させた。





「皆ー、お待たせー……。なんだこれ」


 約二十分後。俺が薪拾いを終え帰還すると、花音以外の全員が地面に伏していた。


 ――エミリーヌなんて白目を剥いてるし……マジでどうしたんだ! 邪神教団でも攻めて来たのか!?


「おいどうした和人! 何があった!」


 俺は木に寄りかかる和人を揺さぶり、事情を聴きだそうとする。


「ゆ、悠馬か……。済まねえ、お前は知ってたんだな。それなのに、お前の忠告無視しちまった。だけどさ……女子の手料理は俺の夢だったんだ。愚かな俺を許して……くれ……」


 そのまま再び目を閉じた和人から手を離し、恐る恐る後ろを振り返る。


「ま、まさか」


「あ! 悠馬君! 帰って来たんですね! 皆待ってる間小腹が空くだろうから、ちょっとした物作ったんですけど。皆、意外とそれだけで満足しちゃったみたいで……」


 俺は花音の手にある謎の物体Xを見ると、花音に質問した。


「……それは?」


「ベーコンを私なりに味付けして焼いたものです」


「味付けって?」


「お肉がとろけるように水酸化ナトリウムや、色々な薬品で味付けしました!」


 ――やっぱり花音のケミカルクッキングか……。


「お、俺は別に……」


「そ、そうですよね。私の料理なんか……」


 俺がやんわりと断ろうとすると、花音は悲しそうな顔をする。


 その時。後ろから肩を掴まれた。


「おい悠馬、お前も男だろ? なら、やることはわかってるよな」


 ――そう、だな。覚悟を決めよう。これ以上花音の悲しむ顔は見たくない、俺の犠牲で済むならそれで……。


「いや、やっぱり貰うよ。よくよく考えたら、腹減らしながら料理するのも辛いからな」


「ホントですか!? 良かった……」


「じゃあ頂くよ」


 そして俺はそれと箸を花音から受け取り、悟ったような顔で口に放り込む。


 その瞬間、俺は地面に崩れ落ちる。


「ゆ、悠馬君!?」


 あたふたしながら俺の顔を覗き込む花音に、俺は最後の力を振り絞って答えた。


「よ、予想以上に疲れてたぽくってな……。ちょっと……寝る……」


 そのまま俺は気絶し、気が付いたのはもう日が暮れるころだった。

 ちょっと花音の口調変えました。いや、変えるって程じゃないけど、少しソフィアと紛らわしそうだったんで……。


 クシャトリア楽しすぎるッ! 時間が無さ過ぎて睡眠時間削って昨日2時までやってたら、何故かベットに入っても明るくなるま寝れず、今完全に疑似的な徹夜状態。13話辺り調整したら寝よ……。

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