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第28話 真相

 俺が立ち上がりながら叫ぶと、銀髪でハーフアップの赤い瞳をした少女が、その赤い瞳を輝かせながら路地の暗がりから出てきた。


「完全に乗っ取るつもりは無かった。だけど、まさか逆に取り込まれて同化するとは予想外」


「一体どういう……それより、お前は誰だ」


「私の名前はナイアーラトテップ、危害を加えるつもりは無かった」


 そう言うと、ナイアーラトテップっと名乗った少女は押し黙る。


「お、おい。じゃあさっきのはなんなんだ」


「私は危険じゃないと説得しようと思って」


「何のために?」


「安全に寄生させてもらうために」


 またもや、そう言うとナイアーラトテップと名乗った少女は黙る。


 ――説明が説明になってねえぞ……。


「どうして悠馬に寄生する必要があったんですの?」


 エミリーヌが質問すると、ナイアーラトテップは答えた。


「力を回復させて、父を利用するヨグ=ソトースを殺すため」


 ナイアーラトテップがそう言った瞬間、ロトが飛び出してきた。


「噓だ! ヨグ=ソトースは確かにあの方が、魔神ソロモン様が滅ぼしたはずだ!」


「フッ、あのヨグ=ソトースが地球の神一人に滅ぼされるとでも?」


「貴様ァ!!」


 ロトの言葉を鼻で笑ったナイアーラトテップに、ロトが飛び掛かろうとするのを阻止しながら、俺は叫んだ。


「離すのだ悠馬! コイツはコイツだけは!」


「あーもう落ち着け! 知らない情報ばっかりペラペラ喋りやがって! ここじゃまともに会話も出来ない、一旦家に帰ってから話すぞ! 当然ナイアーラトテップも一緒にだからな!」


「大丈夫、私の核は寄主の心臓と同化してるから。離れるつもりはない」


 ――それってどこが大丈夫なんだ?






「んじゃあ話してくれ、まずはロトから。さっき言ってた魔神ソロモンってのは一体誰なんだ? お前も魔神とか名乗ってた気がするんだけど」


 俺達は各々ソファや椅子に座ると、ロトの言葉に耳を傾けた。


「ソロモン様は魔を司る我らの偉大なる主だった。しかし、昔攻め込んできた邪神と相打ちになり、亡くなったのだ。その後、ソロモン様の配下で誰がその魔神の名を名乗るのか後継者争いが起き、力を付けるために我は禁術の研究を……」


 そう言うと、ロトは押し黙った。


「お、おいロトー?」


「その先は僕が説明するよ」


 声の方向を向くと何故かトイレから、金髪のイケメンが現れた。


「だ、誰だお前!?」


「嫌だなぁ、僕だよ僕。ヘルメスだよ」


 自称ヘルメスはつかつかとこちらに歩いてくると、机の上に置いてる俺のコーラを飲み干し、ゲップをした後語りだす。


「おいそれ俺のコーラ」


「そして、禁術を研究していたことがバレて追放された後。暫くは腐っていたが、突如として同じ元ソロモン様配下達と結託して天界に反逆。そして勢力を拡大する為に降り立ったココ人間界にて封印されたわけだけど……」


「俺の事は無視かこの野郎」


「その際の君が何をしたのか覚えてるかい? アスタロト」


「い、いや。ぼんやりと人間たちを配下にするために、人間界に降り立ったまでは覚えているのだが……」


 俯いたロトを見ながら、ヘルメスは話を続ける。


「生きとし生ける者全てを殺して回り、その魂と負のエネルギーを取り込んでいたんだ。それも、君は自分の身に邪神を住まわせている状態でね」


「バカな! 我がそんな事するはず……!」


「現に、君は封印から目覚めた際にこう言ったよね『だが安心するがいい! 褒美をやろう! この場に居るすべての者に我の贄となる栄誉を! その目に刻むがいい! この我の偉大なる姿を!』ってね。まあ人間を見下してたのは、元々の君の気質だったけどさ」


「そ、それは……」


「ハッキリ言おう、君は禁術を通して汚染されてたんだ。奴らに、ヨグ=ソトースに。そしてソロモン様に致命傷とはいかないまでもだいぶ力を削られ、生きていたヨグ=ソトースが再び力を蓄える為にせっせと力を集めていたわけだ」


「なッ!?」


「あの昔の戦いの時は、君自身の意思でやっているのか操られていたのか分からなかったけど。前に君を鷲掴みにしてペンダントに封印した時に、奴らの残滓を確認した。不完全な状態での復活だったから、君本体だけが出てこれたけど。もしも完全な状態での復活だったら……。あぁ、心配しなくて良いよ。君に付いてた悪いものは、全部あの時に除去しといたから」


 ヘルメスの話を聞き終わると、ロトは姿を消した。


 ――お、おいロト!?


「すまないが悠馬君、少しアスタロトを放っておいてあげてくれないか? 多分結構ショックだろうから」


「な、なんか壮大な話になってきましたわね……」


「そうね……」


「わ、私は知ってたけどそんな詳細までは知らなかったな……」


 ――それにしてもなんなんだ? そんな話、ラスティア関連の作品の何処にも……。


「話は終わった?」


 ナイアーラトテップはオレンジジュースを飲み、足をぶらぶらさせながら言う。


「あ、あぁ。次はナイアーラトテップ……長いな、イアで。じゃあイア、説明頼む。ヨグ=ソトースって言えば、お前と同じクトゥルフ神話の神だろ? それくらいはクトゥルフ神話に疎い俺でも知ってる。 それで、どうして仲間割れを?」


 俺がそう言うと、イアはムッとした。


「その呼び方、嫌い」


「へ? イアって呼び方気に入らなかった?」


「そうじゃない、イアは別に良い」


「じゃあなんだよ」


「クトゥルフ如きと私を一緒にしないで」


「え?」


「偶々発狂せずにクトゥルフと邂逅した人間が、私達をそう名付けただけ。あのバカの息子と一緒にしないで。私はクトゥルフより格上、偉い」


「そ、そうか。悪かった。で、どうして仲間割れを?」


 イアは暗い顔をしながら答える。


「父、白痴。ヨグ=ソトース、バカの癖に支配領域広げようとして、この辺境の星で痛い目みた後。父の力利用しようとした。だから私、怒った。だけど、ヨグ=ソトースの配下多い。戦ったけど私、父の力を利用したヨグ=ソトースと数に押されて負けた。だから力を蓄えてこの地に眠るヨグ=ソトースの分身越しに、アイツを滅ぼそうと思った」


「なるほど……イアの父親の力を利用しようとしたヨグ=ソトースに怒って、戦いを挑んだけど負けて。力を蓄えて、この地球に眠るヨグ=ソトースの分身越しにヨグ=ソトースを消滅させようとしたと……。あー、前俺がハスター? とかいう奴を滅ぼした時みたいにか」


 俺がそう言うと、イアは目を丸くした。


「驚いた、ハスターを滅ぼせる人間が居たなんて」


「お仲間だったか?」


「いや。ハスターとクトゥルフは仲が悪かったけど、ハスターはヨグ=ソトース側。私に味方は居ない、孤立無援」


「まあ今までは一人ぼっちだったかもしれないけど、これから俺達とイアは仲間って訳だ」


 俺が手を差し出すと、イアは首を傾げた。


「何故そうなる? 寄主」


「だって、敵の敵は味方って言うし。それに、俺に危害を加えるつもりは無かったんだろ?」


「ん。寄主を基点として、地球の生き物から少しづつ生命力を分けて貰うつもりだった」


 ――それ大丈夫なんだよな?


「あー、それで死んだりは……?」


「しない。一日に回復する生命力の10分の1ずつ貰うつもりだった」


「そ、そうか。なら大丈夫だな。これからよろしくなイア」


 イアは俺の手を取り握手する。その時イアは無表情だったが、俺には少し笑ったように見えた。


「寄主は不思議な人間だな、てっきり私のことを恐れるか排斥してくるかと思ってた」


 その言葉に、俺は苦笑いしながら言う。


「まあアレだ、見た目ただの女の子だし」


 頭に手をやりながら俺が言うと、イアは無表情のまま答える。


「それは良かった。寄生した時に寄主の脳を読み取って好みの姿に変えた甲斐があった」


 ――それって俺の好みをそのまま体現した姿って事? いや、だって俺ロリコンじゃねえぞ!?


「え、マジ?」


「マジ。私の本当の姿は不定形、決まった形を持たない」


「いやいやまさかぁ……」


 ――……確かに俺の好みは年下銀髪美少女だよ? あ、そっか! それは俺の中身がおっさんだからであって。今の、鈴木悠馬状態の俺より年下となると、小学生くらいの姿になるわけだ! ……噓だろ。


「悠馬……アンタ」


「……少し見損ないましたわ。鈴木悠馬」


「えっとね、悠馬。その……人の好みはそれぞれだけど。悠馬の逮捕される姿は見たくないかな……」


 皆が白い目で見てきたので、俺は汗をダラダラと流す。


「違うんだッ!!」


 俺は否定したが、疑惑が晴れるまで暫く時間が時間が掛かった。




「後、その宿主ってのはやめてくれ。なんか寄生虫が居るみたいで嫌だ」


 誤解を解き終え皆で晩飯を食べ、トイレにまた消えていったヘルメスと玄関から帰っていたエミリーヌを見送った後。一息つきながら俺は言う。


「むっ、私は寄生虫じゃない」


「それは分かってるからさ……」


「じゃあご主人様?」


 首をかしげながらそう俺の事を呼ぶイアに、何かグッと来るものがあったが無理やり抑える。


 ――落ち着け鈴木悠馬、お前はロリコンじゃないんだろ? だから揺れるんじゃない! 俺の心!


「そ、それは周りから見てアウトだから他ので……」


「じゃあお兄ちゃん?」


「ゲホッ!? ゴホッ!? そ、それも無しで」


「おかしい、今のは寄主の記憶の中の好きなアニメ? から取ってきたのに」


「お願いいたします。これ以上俺の記憶探るのはヤメテ! これからは俺の脳を勝手に見るの禁止!!」


 ――これ以上許すと昔の性癖までばらされてしまう!! そんな事になったら俺は……!


「じゃあ主」


「もうそれで良いです……」




 その後寝ようとしても、何故かイアがピッタリとくっついてきていた。


「あのさ、イアさん。寝たいんで、空いてる部屋のベットでも使ってもらえます?」


「嫌」


「それまたどうして……」


「主の脳を読み取った時、寂しさを感じる感情まで読み取った」


「えーっとそれで?」


「今まで一人ぼっちでも平気だったけど、今はもう一人は嫌。だから離れない」


「えー、けど事案なんだけど。絵面が」


「主がどうしても嫌だって言うなら、諦める」


 その後。俺は心なしかしゅんとした様子で、垂れた犬の耳や尻尾まで見えてきそうな様子のイアを見て、折れた。


「あーもうわかった! わかったから!」


「ありがとう、主」


 そして俺は、ピッタリとくっついてくるイアを見ながら考え事をしていた。


 ――それにしても、ロトの事と言いヨグ=ソトース関連の事と言いイアと言い。DLCとかアニメ版とかコミカライズとかの次元じゃない情報だらけだな、まさか噂だけあったラスティア2の要素だったりする? ハハッ。そんな事になられたらこの先、完全に予測不能になっちまう……。


「まさかな」


 そして俺はそのまま目を閉じて、深い眠りについた。





「ううん……」


 ――なんか変に揺れてるな……地震か?


「おはようイア」


「ん、おはよう主」


 ――なんだココ。確か昨日はベットで寝て……。


「あら、お目覚めになられましたか悠馬様。おはようございます」


 俺が寝ぼけまなこで目をこすっていると、目の前に座っていたエミリーさんがにこやかに挨拶してきた。


「お、おはようございます? 所でここは?」


「神聖サンチェス法国所有のプライベートジェットです。あ! ちなみに今は丁度カスピ海の上あたりですよ!」


 ――は?


 そして俺が窓の外を見るとはるか下、雲が途切れた隙間から地面と海? が見えた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 無駄だと生まれた時から省いていた感情まで間違って読み取ってしまたため、イアちゃんは今己に芽生えてきた様々な感情に戸惑ってる状態です。

 妹キャラって良いよね、異論は認めない。


 お気づきの方もいましたが、前回のサブタイトル途中で変更しました。モロにアレだったので……。

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