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第23話 笑顔

「勝った……のか?」


 ――ああ、どうやら終わったようだな。


 ――よく寝た……ってお前は何者だ!


 ――やっと起きたかロト、こっちは強欲の龍アウァリティアだ。


 ――は? あの大罪の? 我が寝てる間に何があったのだ!?


 ――あー、話せば長くなるから後でな。


「鈴木悠馬! 無事ですの!?」


 龍装を解除してから俺は大の字に寝そべると、エミリーヌが駆け寄ってきた。


「大丈夫大丈夫」


「そんなわけがないでしょう!? 血が……あら?」


 エミリーヌは俺の傷口を抑えて止血しようとしたが、首をかしげる。


「痛い痛い痛い! ……あれ? そういえば、血が止まってんな」


 ――言い忘れていたが、龍装中は少しだけ回復するぞ。


 ――オートリカバリー付かよ、スゲェな。


 あれだけ強いのに自動回復機能もついてるなんて……ぶっ壊れすぎないか? 俺がそんな事を考えていると、エミリーヌが泣き出した。


「良かったですわ……本当に……もしわたくしのせいで貴方が死んだらわたくし……わたくし!」


「あー、もう泣くなよ。言ったろ、見捨てないって。だから、お前を置いて死んだりなんかしねぇよ。それにまだやることもあるし、何よりも俺が死んだら悲しむ人たちが居るからな」


 俺はエミリーヌの頭を撫で、その後起き上がろうとしたが……。


「……体に力が入らん」




 エミリーヌに支えられながら、出口のポータルから学園ダンジョンの入り口まで戻り、校舎に向かっていた。


「なぁエミリーヌ」


「なんですの?」


 俺は、ゲーム内で語られたエミリーヌの家庭環境を思い浮かべながら言う。


「お前の心の中で抱えてる葛藤はお前にしかわからない。けどさ、それでお前が暗い顔をするってんなら、俺に助けてって言えよ。そしたら必ず俺が、お前の顔を曇らせる奴をぶっ飛ばしてやる」


 ――人の家庭の事を勝手にとやかく言う権利なんてないからな、俺に出来るのはそれくらいだ。


「本当に、頼っても良いんですの?」


「あぁ」


「絶対、迷惑になりますわよ?」


「んな事気にしねーよ」


「本当に?」


「本当だって」


「感謝……しますわ」


 そう言うと、エミリーヌは俯く。


「泣くなってば。俺はお前を泣かせたくて、こんな事言ってるわけじゃないんだからな? 俺はお前のちょっと上から目線で、高笑いを浮かべてるいつもの姿が見たいんだ。だからさ、笑えよ。エミリーヌ」


「はい……はいですわ!」


 エミリーヌは顔を上げると、満面の笑みで言った。


「お前、泣き笑いとか器用なことするな。初めて見たぞ」


 ――だけど、やっぱりお前には笑顔が一番似合ってるよ。





「そういえば、龍装? とかいうの、してた方が良いんじゃないですの? 回復できるのなら、そうしてた方がいいと思いますわよ」


「それもそうだな」


 俺は、龍装を発動させた。


「それにしても不思議な鎧ですわね」


「まあな」


 そうして暫く歩いて校舎に着くと、茜が姉さんに薙刀を突きつけられながら慌てていた。


「ま、待て。落ち着くんだ円華! 悠馬達は今人員をフルに使って捜索してる! だからその薙刀をしまえ!?」


「そもそも、学園ダンジョン如きで悠馬が行方不明になる訳がありません。誘拐か、犯罪に巻き込まれたか……最近、警備が緩すぎませんか? ねぇ、学園長?」


「邪神教団の幹部相手に守り切れるレベルの警備なんて、学校の警備じゃない気が……申し訳ありませんでした! 口答えはしません! ……俺にとっても悠馬は大事な身内だし、エミリーヌも大事な生徒だ。必ず……」


「あのーすいません」


「一体何処に行って……誰だ君は!」


「え、ちょ! 姉さん!?」


 俺が声を掛けた瞬間、姉さんは薙刀を突き付けてきた。


「鈴木悠馬、今は龍装を解除した方が良いと思いましてよ……」


「あ、そっかそっか。ごめん姉さん、茜さん。心配掛けた」


 そして俺が龍装を解除すると、茜と姉さんは目を丸くした。





 傷は塞がってたので、保健室で休んだ後。放課後、駆け付けた冬香とソフィアの二人と話をしていた。


「それにしても、トラブルに巻き込まれやすい体質だよね。悠馬」


「ホント、この入学してからの短い期間で巻き込まれすぎよ」


「巻き込まれたくて巻き込まれてんじゃないんだけど……」


「円華さんなんて、ずーっと右往左往してたよ? 私達も凄く心配したんだから」


 ソフィアはむすっとした顔でそう言う。


「いきなり、学園ダンジョンで悠馬とAクラスの生徒が行方不明って話が飛び込んできて、滅茶苦茶心臓に悪かったわよ」

 

「ゴメンゴメン。けど、学園ダンジョンの脱出ポータルが別のダンジョンに出るポータルと入れ替わってるなんて、誰も予測なんてできなかっただろ?」


 ――イザナギダンジョンの事は知ってたけどな……。


「まぁそれもそうね。傷が塞がってるとはいえ、あんまり激しく動くんじゃないわよ。そういえば、この後直ぐに帰れるの?」


「ん? もうちょい事情聴取されてから帰れるらしい」


「……そっか。それじゃあ、先に帰ってるからね! 今日の洗濯当番私が代わっておくから!」


「サンキューな」


 俺とソフィアがそんな会話をしていると、冬香がさび付いたような動作でこちらを見てくる。


「洗濯当番? ……え? ……は?」


 ――……あ。

 ぬあー……結局、課題して小説書いてバイトしたら休日が終わってる。


 エミリーヌ視点の幕間を挟んで次々回、鈴木家に波乱の予感!?

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