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第19話 深淵からの呼び声

「クソッ! 来ちまった……!」


 イザナギダンジョンに降り立ち、後ろで消えていくワープゲートを睨みつけながら、俺は吐き捨てた。


 イザナギダンジョンは最低推奨レベル150レベル以上の高難易度ダンジョンで、ここで出てくる敵はどいつもこいつも化け物揃い。ちなみに全部で十層ある。


 ――だけど……行動パターンは知っている! ボス仕様の高HPじゃなければ俺にだって!


 俺は腕輪を外し、改めてここで出現する敵を思い返しながらエミリーヌを探していると、どこかから悲鳴が聞こえた。


「クソッ! あの先走り金髪ドリルお嬢様は!」


 悲鳴の聞こえた方に急いで駆けつけると、四本の腕を持つ高位眷属に襲われているエミリーヌを見つけた。


「な、なんで魔法が……! 嫌! 来ないで!」


「チッ! 疾風迅雷・真!」


 エミリーヌに鎌のような腕が振り下ろされる直前、俺はその間に割込み剣で弾き返した。


「鈴木悠馬!?」


「先行しすぎだ! 死ぬつもりか!?」


 俺はエミリーヌを怒鳴りつけると、高位眷属と向かい合った。


「虫型か……」


 虫型の高位眷属。なんかちょっと蟻っぽくて、羽が生えていてそれで浮いている気持ち悪い生物だ。


 俺が剣を構えながら睨みつけていると、高位眷属は歓喜の声を上げ、理解できない音を上げた。


「まさか新鮮な肉が二つも現れるとは! ああia ia 繝上せ繧ソ繝シ!」


「いあ……ハ? ……なんだって?」


「我々本来の発声器官で我が神の名を発音すると、人には聞こえないらしい。まあいい、どうせ新鮮な肉になるだけなのだから!」

 

「舐めるな!」


 ――高位眷属風情に負けてたんじゃ、守りたい人達を守れない!


「それに! お前の行動パターンは知ってるんだよ!」


 鎌で薙ぎ払うような動作で攻撃して来たので、ディメンジョンスラッシュで鎌を根元から断ち切る。

 よろけながら後退する高位眷属は俺に向かって酸のようなものを吐くが、身を捻りながら避けた。


「フッ!」


「繧ョ繝」繧。繧。繧。!?」


 そのまま懐に潜り込むと、腕の付け根の関節部から差し込むように胴体へ剣を刺し、俺は後ろに下がる。

 すると高位眷属は聞くに堪えない叫び声を上げ、体液を振りまきながらのたうち回った。


 ――来るッ!


 そして高位眷属が猛スピードで迫って来るのを俺は待ち構え、すれ違いざまに紫電一閃・真を放った。


 吸血行動。このタイプの高位眷属は瀕死の重傷を負うと、猛スピードで接近しキャラの血を吸って体力を回復しようとする。


 ――だが。


「行動パターンさえ知ってれば、無防備に突っ込んでくるのと変わらないってね」


 細切れになった虫型眷属を後目で見ながら、俺は呟いた。


「あー……立てるか? お嬢様?」


 その後、エミリーヌに手を差し出してそう聞く。


「あの……その……」


「ん?」


 俺がきょとんとした顔をすると、エミリーヌは茫然とした顔をした。


「腰が抜けてしまたみたいですわ……」


 ――えぇ……。




「それにしても、あの噂は本当でしたのね」


「ん? あの噂?」


 俺はエミリーヌを背負いながら、ダンジョン内を歩いていた。


「貴方が堕天の王と邪神教団幹部を撃退したっていう噂ですわ」


「……あぁ」


「わたくしも皆と同じく、馬鹿馬鹿しい噂だと思ってたんですの。だってSランクエンフォーサーの尾野真司さんと学園長が倒したという話の方が、Eクラスの生徒が倒したという話よりも信用できる話ですもの。てっきり、偶々生き残ったEクラスの生徒がホラを吹いているのかと……」


「まぁそりゃそうだな、けどそれも違うぞ」


「ですがこの強さなら……って違うんですの?」


「倒したのは俺一人じゃなくて、皆で力を合わせた結果だ。特にSクラスの龍斗、アイツがいなければ今頃死んでた」


 ちなみに茜が学内に向けて真司と茜が活躍したという話を訂正する為に、俺と龍斗の功績を広めようとしたが龍斗と一緒に慌てて止めた。


 ――だって、そんななんかのコンテストを取った高校生みたいな変な目立ち方なんてご免被る。というか、そもそも目立ちたくないし。学校生活ってのは平穏が一番なんだよ。


「あ、また虫型眷属見つけたから降ろすぞ?」


「お、お気を付けて!」


 ――それにしても、このモンスターとのエンカウント率おかしくないか?


 俺は虫型眷属と戦闘しながら首をかしげる。


 先程から何度もモンスターとエンカウントするが、全て同じ型の虫型眷属なのだ。

 

 本来のイザナギダンジョンには多彩な高レベルモンスターが存在していて、カースドミノタウロスだの高位堕天使等色々なモンスターによる面倒なダンジョンだったのだが……無論今戦っている高位眷属も出てくるが。


「にしたっておかしいだろ!」


 俺は虫型眷属を切り裂きながら、叫んだ。


 ――おいロト、コレおかしくないか? ……おいロトー?


 ――ぐッ……さっきから頭痛が酷くてな。何故かずっと頭で何かが囁いている気が……すまないが寝る。


 ――あぁそう……なんなんだ? このダンジョンは……!


 その後。俺はエミリーヌを拾い、ボスを倒して現れる脱出ポータルを目指して階層主の部屋を目指した。





「着いた……」


「ここがこのダンジョンのボス部屋……ですの?」


 遂に俺達はイザナギダンジョン第一層のボス部屋にたどり着いた。


「それじゃあ戦闘開始と共に俺が突撃するから、自慢の魔法で援護してくれ」


「わかりましたわ」


 そして歩けるようになったエミリーヌと共に、ボス部屋の扉を開ける。


 しかし。


「なんだ……これ……」


「ボスがいませんわね……」


 いざボス戦と身構えた俺達の目の前に現れたのは、空っぽのボス部屋だった。


「しかもなんで脱出用ポータルじゃなくて、最後のイザナギの部屋に繋がるポータルが開いてるんだ……?」


 その上。開いていたのは何故か、青色の脱出ポータルではなく黄色の報酬部屋に繋がるポータル。


「行きますわよ! 鈴木悠馬!」


「あっちょっと待て!」


 そう言うと、エミリーヌはポータル目指して駆け出してしまう。


 ――まあ良いか。どうせこの先神威と武器貰って脱出するだけだし……。


 そうして、俺はエミリーヌを追いかけてポータルに向かった。


 その先でどんな事が待ち構えているかも知らずに。

 この先、悠馬達に待ち構えているものとは!? 察しの良い人ならもう分かるかも。

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