最終工区②
「すぅ・・・はぁ・・・」
「なんじゃカレン。今から緊張しておるのか?」
「昨日あれだけの啖呵を切りましたが、不安なものは不安です。周囲を気にせずに魔物を屠るとは異なるので」
「そうさな・・・ワシも北の海でクラーケンを・・・」
「私も貴女のように後先考えずに魔法を行使するべきでしょうか」
「むぅ・・・結果的に多くの命を助けたが、ワシが向こう見ずなのは当を得ているから反論ができん・・・」
「ふふ」
「ははは」
「貴女といれば何とかできそうです」
「何とかではない。必ず成し遂げるのじゃ」
「ええ!宜しくお願いしますね」
「任せておくのじゃ!────」
私は2人より一足早く、最終工区の現場に来ていた。水門に登ると思ったよりも高さを感じ、水深が深くなっていることを実感した。水門下に見える泥の壁が、水門と同程度の高さがあり、相対的にも高く感じられた。
「アルフレッド殿!」
「ストルネ殿!今日で最後となりますが、皆さんの様子は?」
「これまでにないほどやる気に満ちておりますぞ!」
「それは良かった。船渠の進捗はいかがです?」
「ええ。滞りなく進んでおりますよ!彼方はカンネが張り切って仕事をしておりますので」
ストルネ殿の後ろには、約100名の士官たちが揃っていた。目は輝き士気は高い様子が見て取れる。ここを切り開けば、砂浜に座礁してしまっている艦を曳航して修復できる。そう。自分たちの国に帰る目途が立つのだ。否応なしに士気は上がるものだ。ただ・・・艦を自走させるわけにはいかないから、何か方法を考えなければならないのだけれど・・・。
「それで・・・アルフレッド殿。本日はどのような方法でこの泥の堤防を崩していくので?」
「もう少ししたら・・・あっ!きたきた!」
「提督ー!アルくん!カレンちゃんとエレンちゃんが来たよー!」
「お待たせ致しました」「待たせたのじゃ」
「大丈夫!あと少しで潮が引ききるって時間だから問題ないよ。カレン。エレン。いけそうかい?」
「はい」「任せておくのじゃ!」
「アルフレッド殿?お2人が今回の?」
「ええ。今回の作戦は2人が協力し合って行います。まぁ見ていてください」
「わかりました・・・」
「ねーねー!2人とも!何をするの?」
「それは・・・」「見てからのお楽しみ!なのじゃ」
「むぅ・・・そこまで言うなら、確りと驚かせてよねっ!」
「度肝を抜いてやるのじゃ!のうカレン」
「ええ。あっと驚かせて見せますよ」
そう・・・あっと言わせる。こう言う行為には印章が大切。我々にはこのようなことができますという。一種の娯楽でもあり、とりようによっては示威的行為にもなる。まぁここにいる皆さんは、娯楽に捉えてくれるだろうから安心して行うのだけれど・・・。
「さぁ!カレン、エレン!やっちゃって!」
「はい!」「心得た」
そう言って2人は手を繋ぎ────エレンは波の動きや大きさ。風の流れに至るまで、全てに神経を注ぎ、それをカレンに伝える。カレンは自身の感じ取っていた感覚をその情報を元に修正し、魔術を構築───。2人の共同での魔術行使は今回が初めてかもしれない。それでも、一緒に過ごしてきた時間が長いためか、寸分の狂いもない。これなら安心・・・。
「提督!船が・・・船が近づいてきます!」
「何!船籍は!」
「・・・プレズモのものです!旗を掲げていますっ!」
「なんと・・・間が悪い・・・。アルフレッド殿」
「───何とかします。2人の集中を切らすわけにはいきませんので。この場はお預けしても宜しいですか?」
「構いませんが・・・でも・・・どうやって」
「なに。転移で行ってきますのでご安心を。それでは任せました!」
「あえっ・・・はぁ・・・預かると言っても・・・」
「提督?アルくんは?」
「あの豆粒大の船の所に行ってしまわれた。止めるために」
「おおぉ・・・アタシでも小さくて見えないのに・・・やっぱり凄いねアルくんは」
「そう・・・だな」




