灯台と鳥と岩壁と
「んんー!ここはどうかなぁ・・・」
日が明けて、私はストルネ殿のもとへと赴き、灯台建設と今日の作業には代理を立てる旨を話すと、お任せください!という快い返事とともに送り出してくれた。私はと言うと、港の建設予定地と街を望むことができる岬の丘の上に来ていた。
「ここでいいかな」
『「ソウデスネ タカサモアリマスシ マチニ ヒカリモ アタラナイカト」』
「よし。じゃぁここに決めよう!ただ、地盤はどうだろう・・・」
岬から下をのぞき込んでも、岩礁帯が目に映るだけだったので、飛翔魔法を使って突端から下へと降りていくことにした。
「あぁ・・・大分波に侵食されているけれど・・・」
『「ゴガンコウジ オコナイマスカ」』
「えっ?できるの?」
『「モチロン シザイハ ヒツヨウニナリマスガ」』
「白狼石の粘土で良ければ・・・」
と言って、崖に手を触れると、簡単に岩壁が崩れ落ちてしまった。大きなかけらが落ちたわけではないが、大分風化してしまっているらしい。
「これでは、大きな建物を支えることはできそうにないな・・・ここはやめようか」
『「イエイエ アルフレッドサマノ ゾウセイマホウヲ オツカイニナレバ」』
「ぞうせい・・・あぁ!この島を造るときに使った魔法ね・・・“大地創造”か・・・。あれは周りに被害が出ない状況じゃないと・・・」
『「ドウシテデスカ」』
「人がいない状況だからあの魔法が使えるのであって、今の状況下だと・・・急に造り上げると水嵩が急激に増減するからね・・・っと言うか、よく知ってるね?」
『「イヤァ マァ アルフレッドサマノコトハ ナンデモシッテイルノデスヨ」』
「ふぅん・・・まぁいっか。どうしようかなぁ・・・。普通に硬化の魔法にしようかな。でも、表面だけだと意味ないし・・・」
『「ヤハリ ゴガンシタホウガ」』
「うぅん・・・だってこの岩壁でも植物が育っていたり・・・おっ!?」
そう。岩壁に育つ植物は数は少ないが、あるにはあるのだ。過酷な環境下でも植物はたくましく育つ。それ以上に気になったのが、雛がいる巣・・・渡り鳥の巣であろうか。それがいくつか目に入ったことであった。海面から少しの高さまでの結界が緩いためか、岩壁で暮らす鳥がいるみたいだ。もう役目を終えた巣も確認できたので、何世代もの間、この崩れやすい岩壁で子育てを行っていたのであろう・・・。
「うぅん・・・場所を移すか・・・」
『「イカガイタシマシタ」』
「鳥の巣がね有るんだ。それもいくつも。多分、渡り鳥の一種なんだろうけど・・・自然ってやっぱり凄い。一歩ずつ元に戻ろうとしている。島の中央部はまだまだ動物にとって警戒心が残っているのかもしれないけれど、ここは突端部だからそこまでではないのかもしれないな」
『「ヤセイノ カン トイウモノデスカネ」』
「かもね」
でも困った・・・灯台を建設するのにここまで適した場所はないから・・・どうしようかなぁ。
「────杭を打てば宜しいのではないですか?」
「!」
「突然お声がけして失礼。散歩をしていたところでしたので」
「ピセロさん・・・それにしても杭ですか」
「ええ。地盤が弱い場所には杭を打って、建物を支える工事をしますから」
「そうですね・・・ですが、ここは軟弱地盤ではないので杭が入るかどうか」
「貴方様の持つ魔法の腕があれば可能なのでは?」
「それは・・・どういう」
「あとはご自分でお考えください。それでは私は散歩の続きとまいりますので。失礼」
ピセロさん・・・。まぁ気配には気付いていたけれど、あんな考えを残していくなんて意外だな。杭・・・か。だとしてもこの岩場で杭は───。
「そうかっ!」
『「ドウカシマシタカ」』
「あっ。うん!白狼石で杭を造って・・・杭なんてそんなたいそうなものじゃなくて、棒を造って地面に打ち込みながら、硬質化の魔法を染み渡らせていけば、崩れる心配もなくなる!ただ、心配なのは」
『「シジソウマデハ 50mホドデス」』
「結構深いなぁ」
杭を打つにしても支持層まで届かないと意味が無い。穴を開けつつ白狼石を流し込んで硬質化の魔法を浸透させるしかないかな。
「何箇所くらい開ければ良いかな」
『「20カショホド デダイジョウブカト」』
「りょうかい!」
流石に1人で行うには骨が折れるけど・・・まぁ仕方ない。朝から初めて終わったのは夕方。日が沈み始める17刻頃・・・漸く全ての場所に穴を開けて白狼石の杭を打つことができた。岬の突端からズレはしたけれど、自然を護るためだ。必要経費としておこう。しかし・・・この白狼石の使い勝手、良すぎない?




