エレンの疑問
さんちゃんと一緒に農地の拡張を行い、温室建設予定地を設定していると、エレンが話しかけてきた。
「のぅアル」
「ん?どうしたのエレン」
「いくつか疑問が有るのじゃが、質問してもよいかのぅ」
「────?別に・・・良いけど」
「まず、温室の柱なのじゃが。あの細さの棒鋼で事足りるのか?木々に囲まれたとは言え、嵐で破壊されてしまうのではないか?硝子の重さもあるじゃろうし・・・」
「棒鋼に関しては、1本を中心に据えて、その周りを8本の棒鋼で囲んで1つに錬成し直すよ。それに、長さも足りないから・・・いくつか同じものを作ったら、長くするためにまた錬成するよ。そうすると精錬と鍛接両方を兼ねるから、強度も増すしね」
「精錬所と錬成釜が泣いて別れを告げてきそうな話じゃが・・・そこなのじゃ。疑問におもぉたところは」
「んん?どういうこと?」
「精錬が可能ならば、一から純度の高い硝子が創れるのに何故しないのかと・・・」
「あぁ!それはね・・・技術って言うのはさ、伝えていかないと残らないじゃない?私もエレンから精霊魔法を教わったし、それを自分の使いやすいように工夫しているしさ」
「精霊が直々に教えた物をいとも簡単に習得し、剰え自分の使いやすいように改造しているからのぅ。妬いてしまうのじゃ・・・アルの才能に」
「たはは・・・でもさ、私とエレンの間で確かに魔法の伝達が成されたじゃない?」
「うむ」
「それと同じさ。色々な人が様々な技術を身につける。そうすることで、世の中は豊かな暮らしができるようになる。富は1つのところに集まってはいけない。かと言って、全てを分配すると人は働かなくなってしまう・・・1人1人が技術を持つことで、物自体に価値が生まれて、物の交換が始まり、そこに貨幣が絡むことで経済が回る。身につけた技術ほど価値のあるモノになるからね」
「ふむ・・・なにやら小難しいことを言うておるが・・・即ち、己1人で何でも可能ではあるが、この島にいるものに技術を身につけさせたいと言うことかのぅ」
「うん!プルーナさん達には農業を。ストルネ殿には土木と、今後発展させていく予定の船舶修復技術。カンネさんには硝子の製造をそれぞれ覚えてもらいたい。もちろん、他の方にもそれぞれ自分に合った技術を身につけてもらうつもりさ。やっぱり、肉体的に衰えが来たときに無為を感じてほしくはないから・・・」
「じゃが・・・農業や硝子はわかるが・・・船舶修理は思い切り身体を使うのではないか?」
「・・・模型制作って言う立派な趣味が有るじゃないか」
「あぁ・・・最近王都で流行りだした・・・」
「構造を知っていれば、作ることも工夫することもできるでしょう?立派な趣味の1つだよ。ただまぁ・・・お金になるかは別として」
「ふむ・・・そこは・・・身につけた技術量に依るのではないかのぅ・・・」
「確かに・・・凝れば凝るほどお金はかかるけど・・・賞賛を受ける確率も上がるしね」
「うむ。まぁ・・・技術を身につけられるかどうかは」
「本人次第」
「じゃな。すまぬ。この様な話で手を止めてしまって」
「大丈夫!あらかた作業は終わったから」
『「ハイ ユウチカンリョウシマシタ アトハガイドニソッテ タテルダケデス」』
「ね?」
「はぁ・・・アルのそのいくつもの処理を可能とする頭脳・・・ワシにも欲しいのぅ」
「ん?何か言った?」
「いやっ・・・アルは優秀じゃのぅと」
「・・・何時も皆が支えてくるからだよ。ありがとう。エレン」
「・・・くっ・・・狡いなぁもぅ」
「ん?」
「なんでもないのじゃ!」
そう言ってエレンは皆のところへと戻っていった。若干顔と耳を朱に染めながら・・・




