ライラック島
琥珀海の上に、氷の橋を魔法で築き、その上を疾走するカレン。魔法に関しては全てアルフレッドが行っている。氷の橋を築く事も、渡り終えた部分を崩す事も。快適さを維持するために自身の周囲に風を纏わせることも。アルフレッドにとっては造作も無いことである。
『アルフレッド様』
「んー?なぁに?」
『ミスリルのアミュレットを渡して良かったのですか?』
「あぁー!あれね!大丈夫。はぱっと錬金したらまた創れるから」
『世の中の錬金術師が聞いたら血涙を流すので、軽々しく言うのは止めてください・・・』
「そうなのかぁ・・・でもさ、昔馴染みの面影があったらさ。やっぱり守りたいじゃない?ましてや・・・」
『その気持ちは分かります。私も料理のお礼をしたいと思っていましたので・・・』
「うん。だからこの姿を彼に見せたんでしょ?神獣フェンリル。普通に生きていたら見ることが叶わない。その姿を」
『はい。・・・ところで。エレンの声が聞こえないのですが』
海の上を走り始めて半刻程は、大はしゃぎだったエレンの声がはたと聞こえなくなったことに疑問が湧いたカレン。
「んー・・・寝てるね。気持ちよさそうに丸まって。・・・ポケットを濡らすのだけは勘弁しておくれよ・・・」
『こんの駄精霊!』
おしゃべり好きな精霊は、アルフレッドのポケットの中で気持ちよさそうにスヤスヤと寝ていた。涎をたらしかけながら。
姿は見えないが、アルフレッドから聞いた話から想像して悪態をつくカレン。
着いたらまずお説教。と心に決めながら、氷の橋をひた走る。
「おっ!やっぱり人が住んでいるんだね・・・。一部だけ。だけど、明かりが見える。」
『はい。全景はもう日没も過ぎたので見えません。が、東側に高くそびえるあの山影。ライラック島で間違いは無いでしょう』
「流石に私の目ではぼんやり都市か確認できないのだけれど・・・うん。2刻ほどで着いた。ありがとうカレン」
『いえ。久々にこの姿で走ることができて楽しかったです』
「そう言ってもらえるとこちらも助かるよ。さて・・・問題は上陸方法だけど・・・」
『そう・・・ですね・・・』
「まぁ・・・今日は人里から離れた場所に小屋を建てて、一泊かな」
『畏まりました。では、そのように』
「・・・エレン。起きているなら返事をしてね」
「・・・ビクッ!なぜ起きていると分かったのじゃ・・・」
「呼吸の規則性が一瞬乱れたからね」
「むむむ」
『なにがむむむ。ですか。着いたらまずオハナシですからね!』
「ヒィィ!」
「まぁ・・・お手柔らかにね。っと。小屋も建てなきゃだし。頑張らないと!」
辺りに響くは波の音。消えゆく光は氷粒。
三人は漸く目的地のライラック島に到着した。小屋を建てている間に火を熾すアルフレッド。その横でエレンは正座。カレンは説教。
着いた喜びと疲れで、夕飯を簡単に済ませた三人は、二人と一人の部屋で一夜を過ごすのだった。




