エレンのお遣い
ふぅ…だいぶ探したが、陛下は宮廷内に居ったのか。流石に宮廷魔術師長であっても、王族の魔力を追うことはできんからの。さて…と。アルからの頼まれごとを済ますとするか。
「失礼。火急の要件にて、陛下にお目通りを賜りたく」
「はっ!エレン宮廷魔術師長殿!今暫くのお待ちを」
中々にこの官服は着慣れんのじゃが…致し方あるまい。まったく…アルと別れて大急ぎで自分の部屋からこの官服を引っ張り出して、勲章を付けて、長章まで付けて…陛下を探し渡って…はぁ…。
「―――殿?エレン殿!」
「はっ!すまぬ」
「いえ。こちらこそ大声を失礼致しました。陛下がお会いになるとのことです」
「あい分かった」
近衛兵に守られた小さな会議室の扉が開かれる。ここは二重扉か。王族が緊急的に入る会議室だったかの。扉と扉の間にある小部屋に入る。背後の扉が閉じられ、鍵がかかる。そうすることで、目の前の扉の鍵が開き、中から扉が開かれるのじゃ。まっこの構造に一役買っておるからの!こじ開けると、この空間の床が抜け、奈落に真っ逆さまという寸法なのじゃ。おっと、扉が開いたのじゃ。
「エレン魔術師長。お入りください」
「うむ」
中に入ると、5人の人物が円卓に向かい話している。1人は近衛兵団長。もう1人は宰相か。真ん中に陛下…。あとの2人は…。
「エレン。何やら火急の要件があると」
おっと…陛下から話しかけられてしまったのじゃ。あとの2人は誰だったかのぅ…。まぁ、今はアルの頼まれ事をすませるのじゃ。
「はっ。アルフレッド王太子殿下よりご伝言を賜りましたので、お伝えに参りました」
「ふむ。聞こう」
「はっ!『下手人はすでに手の中に。世界樹は安静を取り戻し、回復は容易。エレンが到着し、この言葉を伝達後、直ぐに参りますので、しばしお待ち下さい』以上です」
「うむ。あいわかった。皆々、しばし解散。余がアルフレッドから話を聞いた後、声をかける」
「「「「はっ!」」」」「畏まりました」
そう言って、部屋の中から陛下以外の人物が退室していく。この部屋は、出る分には何も起きないのじゃ。だから、扉は開け放たれ速やかに皆が出ていける。ただ…これも改良が必要じゃな。この状態で、刺客に紛れ込まれたら防ぎようがない。事が落ち着いたら、アルに打診してみるかの。4人の退室が済み、扉が閉じられると、陛下は深い溜め息をついて、ワシと向き合った。
「すまぬなエレン殿」
「なんのなんの!アルのお遣いなどなんてことはないのじゃ」
「ありがたい。して、アルは…」
「大凡、この部屋の気配を探ってから転移してくるのじゃろう。何やら複雑な様子じゃったしな…」
「そうか…。まぁ、余も大凡の検討はついておるのだが」
「お?そうなのか?それはなぜなのじゃ?」
「ん?エレン殿は見なかったか?先程の参加者の中に…」
「ふ…む?」
んんん?どうやら、先程の参加者の中に関係者がいたようなのじゃが…はて…。
「む?」「お!」
室内に転移魔法の輝きが。光が外に漏れぬよう調整する辺り、流石はアルなのじゃ。
「遅くなりました陛下」
「うむ。大儀であった。して、そちらの2人が」
「はい。こちらが―――――――」
アルフレッドは、父である国王に二人の紹介と事の顛末を話すのであった―――――。




