事の収束へ
「うん。向こうはどうやら成功したみたいだ」
蒼炎は、条件が満たされれば自然と消えるようにしていたからね。やっぱり2人に頼んでおいて正解だよ。世界樹を切ったのは、一種の見世物。精霊を休眠状態にするためのね。意識があるとカメリアもスコットさん…もういいか。スコットもうまく事を運べないからね。
「なんで…なんでよ…。あれは特別製なのに…。世界樹の葉を流してもらって、研究して突き止めた結果から生まれた毒なのに…どうして?どうして!?」
ん?なんだか、ミューリエルの状態がおかしい。なんだか狂乱状態になりかけてる?地面に座り込んで頭を下げ、頭をかきむしり…これは…。
「ねぇ。ミューリエル。キミは、この国に対して憎しみがあるのはわかる。でも、そこまでキミを駆り立てるのはなんだい?」
「―――――――わからない…」
「えっ?ミュー…なんて?」
「わからないの…。最初は確かに世界樹をどうにかしようなんて考えてはいなかったの。アル兄様に少し迷惑をかける程度…。ちょっとだけ悪戯をしようと思ってたの」
「うん。それで?」
「悪戯のために新しい薬を作りたくて、研究都市に行ったの。アル兄様を驚かせるために」
「それは?」
「若返りの薬。幼い姿になって、驚かせようと思ったの。それだけじゃなくて、体内の魔力を変質させて、知己には知られないようにできるそんな薬よ」
「あぁ。それで、幼かったのか」
「うん。はじめは失敗したの。記憶まで一時的に封印してしまう副作用がみられたから。でも、勿体無くて、冷蔵保存庫に閉まって解毒薬用に取っておいたの」
ミューリエルが淡々と事実を語っていると、隣にいるエルリエッタが驚愕の表情を浮かべていた。
「どうしたの?」
「あっいえ…ミュー。それって、桃色の…少し気泡が出ていた…」
「…そうだよ。もしかして…?」
「えっと…その…。喉が渇いていて…。口当たりが良くて、美味しかった…って!なんでそんな危険物が美味しいのよ!」
「なんでって!飲ませたり、自分に使ったりするものが美味しくなかったら嫌じゃない!っていうか、なんで姉様は、私の冷蔵保存庫を漁ったのよ!」
「…自分の部屋に何もなかったから…」
「姉様…」
「エル…。流石にそれは…。だから、記憶まで失っていたのか」
「…自分の魔法が強くかかったのだと思っていたのですが…」
「記憶をなくしていたんだ…。姉様の魔法と薬の親和性が高くて、相乗効果が出たのね…これは…残さないと…」
このまま行くと話がもとに戻りそうもないな…。エルリエッタは、顔を赤くして、ミューリエルは何処からともなく取り出した書付にさらさらと状況を書き出している…。
「んんっ!話を戻そう」
「「――――!」」
「それで、どうしてそこまで強い暗示を…」
そう私が口にすると、ミューリエルは不思議そうな顔をして、私の方を見上げた。
「暗示…?」
「あぁ。ミュール。キミは、とても強い…対魔族の暗示にかかり、心の奥底にある祖父への強い思いを憎しみに変えられ、悪戯したいという私への思いを繋げられ、強く私を憎み…。それとともに、術者が望んだ世界樹の枯死を目標に動いていた…。なにか心当たりはあるかい?」
「…覚えて…。あっ」
「ん?」
「研究都市で、少し食事をしたの。混み合っていたからカウンターで。その時隣に座った感じの良いおじさんが…あれっ…?どんな顔していたっけ…思い…出せない…あれっ?あれっ?」
やっぱりそうか…。これはエレンに任せないとかな…。私ができるのはここまでか。
「わかった。ミュー。その件に関しては、またあとにしよう。それよりも…エル。復活したかい?」
「はっ…はいぃぃ」
「うん…まぁ追々2人で話して。っよし!取り敢えず、父上に報告するためにも、カレンとエレンとプルーナさんと合流しないと。さっ!2人とも行くよ!エレンが父上のところに居るはずだから、そこに行こう」
「「はい!」」
少し気になることが増えたけど…。とりあえず報告しないとね――――。




