姉と妹
「なっ…なんで!?どうして!?確かに息の根を…」
驚いて目を見開き、息を吹き返した人物の方を向くミューリエル。
「君と話している間に、エルリエッタに治療をお願いした。ただ、君の妨害があると思って、治療終了まで、私に意識を向けさせていたんだ。大事な証人だ。君と彼から確りと話しを聞かなければならないからね」
私も息を吹き返した彼の方を向きながら、ミューリエルに話しかける。倒れている人物は、意識はないまでも呼吸が安定しているようだ。流石はエルリエッタ。魔族の中でもトップクラスの治療者…癒者だ。
「なんで!?どうして!?私が調合した毒なのよ!?なんで…」
「ミュー。私があなたの…妹のことを知らないとでも思っていたのですか?それは随分と寂しいことです…。姉として、治癒者として。ミューが調合する毒の知識を知らないふりをふるほど落ちぶれてはいません。それに、毒は薬にもなりますからね。貴女のお陰で、様々な中毒者や魔物から受けた毒などの解毒薬や、流行病の特効薬が生まれたのですよ」
「だとしても!だとしても…よ。其奴に使ったのは、今回特別に調合した…」
「そこで、私の出番になるのさ。ミューリエル。この国はどこだい?」
「そんなこと聞かれなくても。アルベロ王国よ」
「うん。そんなアルベロ王国の象徴は…」
「…世界樹よ。憎くて憎くて堪らない…この国の象徴。全世界の支えとなるもの。だから…だからその象徴を毀そうとしたのよ!それがなによッ!」
「…その世界樹の樹液や葉から精製されるのは?」
「万能薬…。でもあれは…――――ッ!」
「気づいたかい?」
「そんな…だって…短時間で…」
「ミュー…。先程も言いましたが、妹のことを蔑ろにする姉など居りません。私は、常に貴女が創り上げる毒を研究し、解析し、私の技術と知識の糧にしました。まぁ…こう言ってしまうと、妹の功績を横取りする小賢しくて、憎たらしい姉になってしまうのですが…。貴女のお陰で、我らの王国で流行っていたいくつかの疫病を終息させ、特殊個体の魔物の毒を解毒するための薬の開発に成功しています。すべて、ミューの功績として。貴女は、てんで自分のことに興味を持ちませんし、なんなら国民への挨拶のときも殆ど顔を出しませんから、国民に顔すら覚えられていない…なんだか話していて悲しくなってきますが…」
「…私、褒められてるの?貶まされてるの?」
「あはは…。兎にも角にも、研究してきた中で、ミューの生成する毒に共通点がありましたので、そこを中心に、アルト様の知識と万能薬、そしてエレン様の技術、私の研究結果を併せて当たりをつけてこの場で調合して投薬しました」
「それが…成功した…」
「そういうことです――――――」
エルリエッタに告げられて、その場にへたり込むミューリエル。これで、彼女にも話が…。
「―――ッ!ゲッホゴッホ!ここは…」
「目が覚めたようだね」
「あっあっ!貴方様は…!」
「うん。目が覚めたところで申し訳ないけど、もう少し寝ててもらえるかな…」
「あっ!?へっ!?…」
姉妹の会話を遮りそうだったため、目が覚めた彼に睡眠の魔術をかけ、王宮の相応の場所に転移させた。まぁ…私が行くまで目は覚めないし、場所も場所だから大丈夫だろう…多分…。
「姉様…。私はどうすればいいの?ねぇ!やろうとしたことは中途半端。憎しみだけが募っていく…この状態をどうしたらいいの?ねぇ!」
「ミュー。貴女への処遇を決めるのは、私ではないわ。決めるのは、アルト様なの。どうなるのかはわからない。ただ、一つ言えることは…」
「殺人は犯していないということかな。それに…」
私が世界樹に目を向けると、二人もそれに倣って目を向ける。今まで、蒼々と燃え盛っていた炎の勢いが収まってきた。ふむ。大方どうにかなったようだ。
「えっ…どうして?なんで?」
収まりつつある炎の中から現れたのは、碧々とした葉を茂らせた世界樹であった。
「ミュー…。これが、アルト様のお力です。この方に喧嘩を売るということは、どういうことなのかを今一度、よく考えなさい」
「ねぇ!ねぇ!どうして!?なんで世界樹は無事…というより、前より元気なの!?」
「それは――――――」
街づくりーーーー




