エルとエレン④
「なんじゃ」
ノックの主に返事をするエレン。扉越しに一息ついたのがわかる。その位急いできたようだ。
「火急の要件にて。失礼いたしたく」
「来客中であるが・・・」
扉の外に来たのが兵士であるということは、察しがついていたエレンであるが室内には記憶を取り戻したエルリエッタが居る。姿はまだエルのままではあるが、国のことに関わると聞かれるのは少しまずい。そう考えて返答を濁していると、扉の外から意外な言葉が返ってきた。
「エレン様。何方か室内にいらっしゃるのですか?何分、時間に猶予があまり無いとのことですので・・・」
「「―――!」」
息を呑む二人。エレンの頭の中では、なぜ一介の兵士がそれを認知できているのか・・・。疑問符ばかりが浮き、エルリエッタ自身は、青褪めた顔をしてエレンを見つめていたが、外の兵士が焦り始めている。そう感じたので、エレンに対して招き入れるよう目線で合図をした。
「・・・入れ。ん?特務兵・・・か」
中に招かれた兵は、略式の敬礼をしてアルフレッドからの言葉をエレンに伝えた。
「失礼いたします。エレン宮廷魔術師長。アルフレッド王太子殿下よりのお言葉です
「エルを探して欲しい」とのことでございます!」
「―――相わかった」
「それでは。お客人様も失礼いたします。私は持ち場に戻ります」
「少し待て」
「はっ!いかがいたしましたか?」
「他に殿下は何か仰られてはいなかったのか?」
「いえ。特には。あっ!そう言えば、エレン様は探知魔法で殿下をお探しになられるから、発見次第来れるか?と呟いておいででした」
「うむ!わかった。殿下からの伝令しかと承ったのじゃ」
「はっ!それでは失礼いたします!」
兵士は再度略式の敬礼をして、退室していった。
「私を探せ?・・・一体どういうことなのでしょう?」
「さぁのぅ・・・何分、ここは王宮の奥地であり、防音結界もされておるでな。外の情報がまるでわからんからお手上げなのじゃ」
「そう・・・ですね。そういえば、エレン様は彼の兵士を特務兵と呟いていらっしゃいましたが」
「ふむ。この際じゃ教えておくか。特務兵というのは―――」
「はい」
「・・・はっ!特務兵!ワシは確かにそう呟いたよの!?」
「えっ・・・ええ。そうですが。ですから、特務兵というのは・・・」
「説明はあとじゃ!エルリエッタ!一緒に来るのじゃ!」
「あっ!?えっ!?ちょっと!まっ・・・待ってください!自分で歩けますから―――――」
エルリエッタの懇願が届かないほど焦りの表情を浮かべているエレン。彼女は、幼い容姿のエルリエッタの腕を強引に引きながら、探知魔法を使ってアルフレッドのいる場所へと向かう。
「クッ・・・いくらワシが長であっても、王宮内で転移魔法は流石に憚れる・・・済まぬエル!」
「えぇーーーー!」
ひょいとエレンに抱きかかえられたエルリエッタ。あまり身長差のない二人。もちろんエルがもとに戻れば、彼女の方が身長は高いのだが、今は幼児体型なのでエレンでもかんたんに抱きかかえることができた。
所謂、お姫様抱っこという形で――――。
「下を噛むから、下手に口を開くでないぞ?『加速』」
「――――――!!!」
エルリエッタは、後にこの状況を語った。
『加速』の魔法を使うのなら、事前に伝えてほしい。あの時噛んだ舌はとても痛かった。と。




