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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
144/213

立太子の儀 Ⅴ

「うぅ・・・兄様にお恥ずかしいところを・・・」

「そんなことはないさ。これで・・・もう大丈夫。サクラは笑顔が似合う子だから。私としては笑顔でいてほしいな」


泣き止んだサクラを胸元から一度離すアルフレッド。少し名残惜しそうな様子のサクラを見て、もう一度抱きしめて解放する。頬を朱色に染めてはにかむサクラ。その顔に笑顔で応えたアルフレッドは、女神クレシオンに向き直り改めて話かけた。


「それで、クレシオン様はなぜサクラに過酷な旅を?」

「ふむ?吾はただ瑞穂の巫女をこの場に呼んだだけであるが?」

「途中の嵐・・・」

「あれか?あれは吾とは何ら関わりの無いこと。それにだ神子アルフレッド。天候を操作できるのであれば、南北の寒冷化に中緯度の天候異常は全て吾の仕業となるのではないか?疑われると流石に哀しいぞ」

「はぁ・・・疑ってすみませんでした」


無表情ではあるものの、心外だと顔に書いてあるとわかるくらいには圧を強めたクレシオン。そんな様子を見てアルフレッドは、呆れた様子で応えたのであった。


「うむ!謝罪は確かに受け取った」

「あのっ!クレシオン様!」

「ん?如何した瑞穂の巫女」

「この場に呼んでいただいた目的を兄様にお話ししても宜しいでしょうか」

「赦す」


ぱっと花が咲いたようにクレシオンから圧が消えた。相変わらず無表情であるが・・・。そんな話しかけ辛い状況を脱したことを好機として、サクラが口を開き、アルフレッドと話す時間を手に入れられた。

どうも女神クレシオンは、アルフレッドを他の者よりも重視している節がある。いくら巫女といえども、親しい間柄であったとしても、クレシオンの前でアルフレッドと話すことは慎重にならざるを得ないのである。


「アル兄様」

「ん?」


そんなやりとりを静かに見守っていたアルフレッド。キョウカは、クレシオンとサクラのやりとりに少し緊張していた様子だが、無事に会話の許可を得られたので、ほっと胸をなで下ろしていた。


「我が国瑞穂の状況はご存じでしょうか」

「うん。大体はね。長雨の時期がずれていたり、颱風の襲来が不規則であったり・・・。曇りがちの一年があれば、日照りの一年もある。それでも成り立っているのは、時折襲来する颱風と山に降る雪による水の確保。だけどれも、颱風の力が極端に強くなったり、山に雪が降らない若しくは大雪になり、近年では街に人に甚大な被害を被っていると言うことくらいならね」

「─────その通りです・・・。私には国の継承権がありません。上の兄や姉が継ぐでしょう。幸いにして、巫女の適性があったので、神社にてお努めさせていただいておりますが」

「そうだね・・・。彼ら彼女らは元気なのかい?」

「はい。おばぁ様から様々な手解きを受けておりますので」

「大叔母上は壮健かい?」

「はい!毎日元気に過ごしております!」

「それは良かった」

「・・・話を戻しますが・・・」


そう言ってサクラはアルフレッドの前に膝をつき、祈るような姿で彼に願い出た。


「つきましては、王太子アルフレッド様の御領地に我が国の民の一部を移民という形で受け入れていただけることをお願いしたく・・・」


サクラがアルフレッドに対して願い出たもの。それは、瑞穂の国民の一部を入植させる事であった。話の内容を耳にして、キョウカも慌てて一歩下がった場所に膝をつき頭を垂れる。


「うぅん・・・移民か・・・」

「神子アルフレッド。其の方の領地では人手不足であったと報告が来ているが 

「では!是非にでもっ!」

「・・・今ここでその情報を出しますか?」

「はっはっは」


少し悩むそぶりをしていると、クレシオンから情報が開示されてしまった。その情報を聞き、明るい笑顔でアルフレッドの言葉を待つサクラがいる。こうまで良い笑顔をされてしまうと、色よい返事を返すしかなくなるアルフレッドは、小声で「恨みますよ」と女神に伝える。対する女神は、「おお、怖い怖い」と小声で呟き、どこ吹く風だ。


「───。この件は、父上とサクラの父上に諮らないと・・・」

「私の父上なら問題ありません!既に話を通しております。あの人にとっても、国の人口が安全に減少することは願ってもない様子なので・・・」


何やら愁いを帯びた表情で話すサクラ。これ以上深く聞くとまた彼女の気分が落ちてしまうと察したアルフレッドは、とりあえず自身の父に諮ると明言した。


「わかった。父上には話を通すよ。色よい返事が出来ると思う」

「ありがとうございます!アル兄様!」

「それで?移民の規模は?」

「段階的にとはなりますが、最終的には5000人程度の入植を・・・」

「おぉ・・・」

「ですが、先触れは、私たちを含めて250人を・・・」

「───へ?今なんて!?」

「?先触れの人数が多いでしょうか?でしたら・・・」

「ちょちょちょ・・・そこじゃない!私が聞きたいのはそこじゃぁない!」

「?」

「今“私たち”って言った?」

「はい!私もキョウカもアル兄様の下で働きたいと・・・若しかして・・・お邪魔ですか・・・」


途端に目を潤わせ、涙目の状態でアルフレッドを見上げるサクラ・・・。流石に断る訳にもいかず、思わず首肯してしまった。ふとクレシオンの方を見ると、したり顔でアルフレッドを見つめていた。絶対何かした。後で聞き出す!と心に決めたアルフレッド。


「───わかった。父上の許可が出たら・・・ね?」

「はい!(やったわ!アル兄様と一緒に過ごせるわ!)」

「(良かったですね!姫様!)」


2人の小声でのやり取りは、意識他に向けていたアルフレッドには届かなかった。


「時に神子アルフレッド」

「───はい」

「我はもう戻るのだが、2つの害悪が迫っている。1つは、時を動かすと同じく汝を襲うであろう」

「・・・やはり神樹の・・・」

「はて。どうなるか・・・。まぁ其の方の備えによって・・・おっと」

「そこまで教えてくだされば後は何とか」

「ふむ。それを機として、別の害意が襲ってくる。2つは別にして、思いも違う。あくまで偶然。乗り越えよ」

「はい」

「それと、巫女サクラ。護衛士キョウカ」

「はい」「はっ」

「汝らにも害意の刃は迫る。神子アルフレッドのそばを離れず、周りの者と諮り考え行動するように。汝らもこの難局を乗り越えよ」

「御神託承りましてございます」

「うむ。それでは皆達者でな。神子アルフレッド。落ち着いたら吾の所まで来るように」

「・・・はぁ・・・。わかりました」

「・・・返事が少々気に障るが、吾は寛大な心の持ち主だからな。赦そう。それではな」


そう言ってクレシオンは、一瞬にして姿を消した。


「サクラ。キョウカ。2人にも護りの魔法を掛けておく。あと少しで時が動くから、あそこに居るカレンの所に行ってほしい」

「「はい!」」

「うん。さぁ・・・鬼が出るか蛇が出るか・・・いずれにしても、謀を潰さないとね」


クレシオンが帰ってきっかり1分。時は動き出し、割れんばかりの拍手と歓喜。アルフレッドと国を讃える歓声。











───その華やかな声が一瞬にして悲鳴に変わった───

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