立太子の儀 ⅱ
「───静粛に願います!両陛下のご入場!」
世界樹の根元に特別に設置された祭壇。森人族王家における祭祀は、このように毎回組立式の祭壇が用意される。世界樹の根にあまり負担をかけないためだ。
階段を一歩ずつ上へと登り、世界樹に一礼。用意された玉座に着席する国王と妃。
「皆。面を上げよ」
祭壇の前には文武百官。国境警備や魔獣対策。街の警備を行っている者たちは流石にこの場には来ることができない。街からも離れているため、各地の主だった広場には、伝声魔法によって儀式の様子が伝えられる。直接様子を見ることが叶わない者も多いが、後日アルフレッドは国内を回る予定である。
「本日参集してくれた皆に礼を言う。また、この伝声を耳にしている民たちにもだ。ありがとう」
国王が口にする感謝の言葉。その言葉に全ての人が頭を垂れた。国王の言の葉には力が込められていた。全ての人に影響するほどの。
「父上は言霊を使ったな」
「・・・?殿下。何か仰いましたか?」
「いや。父上の言葉には人を感動させるものがあるなと」
「はぁ。あそこまで言霊を露骨に使うと、私としては・・・」
「やっぱり気づいてた?」
「もちろん。さっアルフレッド様。出番ですよ」
進行役の宰相がアルフレッドの入場を促す。祭壇から離れた天幕に控えていた彼は、カレンを伴ってゆっくりと歩き出す。官吏の間に敷かれた50米程の長さの赤い絨毯の上を10分程度の時間をかけ歩く。
「アルフレッド・ディ=アルベロ。ここに」
「うむ。汝アルフレッド・ディ=アルベロ。その身を惜しまず国のために尽くすことを誓うか」
「はい」
「我ら王族。ひいては森人族としての役割を全うすることを誓うか」
「はい。骨身を惜しまず、国そして民のために」
「宜しい。汝を我がアルベロ王国の王太子として正式に認める。今より其方は、次期王として国政に携わることを任じ、王太子領として正式にライラック島及びその周辺群島の開発、徴税、官吏の人事権。そして、余と相談の上、独自通貨の発行も許可する」
「はっ!」
「・・・これで良いかアルよ」
「できれば移民の受け入れ許可も・・・」
「それは、今後の会議でだ。よいな」
「はい」
「うむ。────これによりアルベロ王国はより一層発展することとなるだろう!」
「「「アルベロ王国に栄光あれ!」」」
立太子の儀が終わろうとした時、アルフレッド除いた全ての色が褪せた。いや。時が止まったとも言うべきか。呼吸するものも彼以外には存在しない。まるで何か大きな意思が働いたかのように。
「────。はぁ・・・やっぱりか」
誰も何も反応しない空間で一人ため息をつくアルフレッド。彼の目の前に一筋の光が差した────。




