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あるエルフの都市作り  作者: 沙河泉
立太子の儀
140/213

立太子の儀 Ⅰ

「───作業は順調ですか」

「ええ。8割方完了しております。あとは・・・」

「時期を見計らうだけ・・・」

「決行は予定通りに・・・」

「はい。これで・・・これでッ───!」


仄暗いある地下室。燭台には蝋燭ではなく、淡い光を放つ光魔法が浮かぶ。相対する2人の顔は、お互いに視認することできない程だ。警戒心が強いのか或いは・・・。

怪しい2人のやり取り。符丁も何もなく静かに話す。これから先を見据えて─────。





「アルフレッド様。完了いたしました」

「・・・ありがとう」

「─────凄い!凄いよッ!アルくん格好良い!」


城内から打ち上がる空砲。今日はアルフレッドの立太子の儀だ。彼は式典用の正装を身にまとっている。白を基調とし、艶やかな金刺繍が施され、胸には大きな勲章が付けられている。朱に染められた外套は、金で作られた国章を留め具にして身につけられている。あまり堅苦しい格好が好みではないアルフレッドではあるが、今日はそんなことを言ってはいられない。


格好良いと言ってくれたプルーナに、にこりと微笑み、儀式が行われる世界樹へと向かう王家の馬車に乗った。国王夫妻は既に向かっている。馬車に同乗するのはカレンとプルーノだ。プルーナとミュールは別の馬車に乗って向かう。流石に一緒には乗れないらしい。

馬車に乗り込む前に、プルーナはふとわいた疑問をカレンに投げかけた。


「そう言えば、エレンちゃんは?」

「エレンは筆頭宮廷魔術師・・・宮廷の魔術師長なので、昨日から世界樹に詰めています」

「ほえええ・・・」

「お2人の安全は、近衛騎士団が受け持ちます。ご安心ください。・・・忘れていました」


カレンは、自身の持つ簡易倉庫から1本の剣をプルーナに渡した。黒塗りの鞘に鈍い銀の光を放つ柄。誰が見ても一級品のその剣をプルーナは受け取った。


「万が一・・・起こることが無いとは言えないので。護身用にお持ちください。懐の銃は不問にしますので」

「・・・気づかれてた?」

「ええ。魔法銃ではなく実弾銃ですよねそれ。硝煙の匂いが微かにしますので」

「たはは・・・。ありがとう。信頼してくれて」

「貴女は既に・・・友人・・・ですから」

「!ありがとう」


耳を赤くしながらボソリと呟き馬車に乗り込むカレン。プルーナの耳に確かに届いたそれは、彼女を笑顔にするには十分であった。


アルフレッドの乗った馬車は、門を抜け街へと出る。城内から街に至るまで華やかに飾り付けが行われている。式典と言っても、一般市民にしてみれば祭りだ。国の各地から人が集まり、大規模な経済活動が行われる。


「うん。活気に満ちあふれてるね」

「ええ」


沿道の民に笑顔で手を振りながら、街の様子を見る。人集りは警邏兵によって整理され、賑やかにしかし整然と歓声が沸いていた。


「王国万歳!」「殿下ーーー!」「おめでとうございます!」


「ほっほっほ。賑やかでございますな」

「うん。願わくは何事もなく・・・とは行かないよね。カレンもアレをプルーナさんに渡していたし」

「はい。アルフレッド様がお作りになられた希白金と希黒鉄を使った剣を」

「彼女なら巧く使えるだろう。それよりも・・・じいがここにいるっていうことは」

「はい。大方の情報は集め終わりましたのじゃ」

「カレンの方も?」

「はい」

「それじゃぁ聞かせてもらえる?」


馬車はゆっくりと街を抜け、世界樹へと延びる街道へと差しかかった。そこで3人は、集まった情報の整理を始めた。


「まず・・・諜報部からの報告となりますの。水面下で動いているのは、魔族復権を目指す一部の過激派のようですじゃ。彼奴らは今回の式典を壊し、魔王国の再建を目指しておるようですじゃ」

「なるほどねぇ・・・でも、彼はそんなこと一つも望んでない。寧ろ、今の生活を楽しんでる」

「そうなのですじゃ。魔王陛下に謁見致しましたところ、ご本人も望まれてはおらず。処分をお願いされましたのですじゃ」

「なるほどね。同族だけど、迷惑はかけない。かけたくないって所かな」

「ええ。ですから、魔王陛下の手の者による手引きによって組織に潜入。式典前に人知れず手を下す予定ですじゃ」

「うん。カレンの方は?」

「私共、公安部の方は国内要人の調査を進めておりました」

「うん」

「何名か候補はおりましたが、先日ミュールが言っていた閣下という言葉をもとに調査対象を絞っております。何名か候補を絞ることはできましたが、具体的な動きは未だ見せず・・・」

「わかった。事を慎重に進めてくれれば良いと思う」

「はい」

「私が思っている事なのだけれど・・・2人とも聞いてもらえるかい」

「「はい」」


馬車内で始まる3人の会議。御者は儀仗兵の正装に身を包んだ公安部の者だ。動く会議室は安全に目的地へと進んでいくのであった。

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